アメリカのTPP復帰なんてありえない!?全世界が固唾(かたず)をのんで見守った米朝首脳会談が終了し、その成果を強調するアメリカのトランプ大統領。

秋に控える米中間選挙に向けて、国内の支持拡大を訴えるトランプ大統領の「次の一手」が、7月にも始まるといわれる日米の通商協議だ。

日本は、アメリカ抜きの11ヵ国で進めてきたTPP(環太平洋パートナーシップ)協定、通称「TPP11」にアメリカを復帰させる腹づもりだが、トランプ大統領が乗っかる可能性は低い。それどころか日本に、TPPをしのぐ条件を突きつけてくる!?

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大 統領就任直後にTPPからの離脱を発表。その後も、カナダとメキシコが参加するNAFTA(北米自由貿易協定)や米韓FTA(アメリカと韓国による二国間 の貿易協定)の見直しを進めるなど、貿易・通商で徹底した「アメリカ・ファースト」の保護主義政策を繰り広げるトランプ政権。

6月8、9日に行なわれたG7サミットでも、「自由貿易尊重」を求める各国との深刻な対立が表面化。共同宣言への承認を取り下げるなど、やりたい放題だ。

日本は中国と並んでトランプ政権が名指しで問題視する「貿易赤字国」のひとつ。7月からスタートする予定の日米通商協議でも、アメリカ側が「無理難題」を押しつけてくることは間違いない。

果たして、そんなトランプ流"オレ様貿易"に日本は抵抗できるのだろうか?

「残念ながら、見通しは非常に暗いとしか言えません」と語るのは、TPPをはじめ自由貿易協定が抱える問題を検証してきたNPO「PARC(アジア太平洋資料センター)」の内田聖子氏だ。

「トランプ政権がTPPを離脱した後も、日本政府はアメリカ抜きのTPP11を積極的に推し進め、それを早期に発効させることで将来的に『アメリカに復帰を働きかける』と主張してきました。

日本政府はアメリカの復帰が実現すれば、『TPP合意』を超える要求をアメリカから求められることはないとしていますが、これはまったくの見当違いでしょう。現実的に考えて、トランプ政権がTPPに復帰することなどありえないことは誰の目にも明らかです。

なぜなら、アメリカは複雑な多国間の自由貿易協定よりも、一対一で相手国に自分たちの要求を突きつけられる二国間の協定(FTA)を望んでいるからです。当然、その目的は『TPP以上の条件』を実現することにあります」(内田氏)

では、これから始まる日米FTA交渉でアメリカは具体的に日本市場の「何」をターゲットにしてくるのだろうか?

「アメリカの最大の狙いは、やはり『自動車』と『農産物』でしょう。トランプ政権は5月末に、輸入車に対して最大25%の関税をかけることを検討中だと明らかにし、アメリカ向けの自動車輸出が多い日本やドイツに対して圧力をかけ始めています。

少しさかのぼって3月に発動した『鉄鋼・アルミニウム製品』への最大25%関税導入と同様、トランプ政権はこれを『安全保障上の理由』だとしていますが、日本はアメリカの同盟国であるにもかかわらず、この対象国リストから除外されていません。

このままなら自動車の分野でも、同じような扱いを受けるでしょう」(内田氏)

◆米韓FTA再交渉で韓国が譲歩したもの――この続きは『週刊プレイボーイ』27号(6月18日発売)「トランプ流"ジャイアン貿易"が日本を食い尽くす!!」にてお読みいただきたい。