中心性頚髄損傷の大ケガから6月23日、477日ぶりに奇跡的な復活を果たす新日本プロレスの本間朋晃前編では生々しい事故の瞬間から、心を削るような入院生活、妻・千恵さんの献身的な支えを語ってくれた。

不屈の闘志で復帰を決めるも、本間選手の口から出てきたのは思いもよらぬ「怖い」という言葉。その不安の裏にあるのは? そして、それでもリングに向かう理由とはーー?

-コーナー最上段から「こけし」で飛んでいたプロレスラーが、体力が底辺まで落ちて...。そんな中でも復帰へのモチベーションとなったものは?

本間 他の選手が試合でこけしを使ってくれていたのは嬉しかったですね。棚橋さんとかライガーさんとか、選手のみんながムービーでメッセージを送ってくれたり。中でも真壁さんが試合後のコメントで「あいつが頑張っているから、俺はあいつの居場所を作る」とか、事あるごとに僕に触れてくれてたんです。ケガをした当日、救急車に乗せられた時も聞こえたのは「おい、頑張ってこいよ! 待ってるからな」っていう真壁さんの声で。

こういう人がいるから僕はリングに帰りたいなと思いました。プロレスは基本的には"個人商店"で、自分のことだけをやるところはあるんですけど、温かい仲間って嬉しいなと思いましたね。ずっと一緒だとわからなかったことが、離れてみるとすごくわかりました。

-その思いをモチベーションに復帰まで歩いてきたと。しかし体を起こすだけで立ちくらみ状態だったところから、どうやったんですか!?

本間 ホント、どうやったんでしょうね(笑)。損傷具合が酷かったので、寝たきりも十分にありうるレベルだったんですけど...。「絶対に戻りたいという諦めない心があった!」とカッコよく言いたいところですが、100%、運がよかったからです。神のみぞ知るじゃないですけど、ホントに運しかないです。動くようになったのは、リハビリを手伝ってくれた先生や奥さんがいたからこそだと思いますし、人のありがたみがわかりましたね。

僕はケガをする前、バラエティ番組にも出させてもらっていて、彼女が言うには「調子に乗ってたんだよ!」って(笑)。実家のお母さんにも「謙虚に生きなさい」とよく言われてましたし、僕はそんなつもりはなくても、きっと調子に乗ってたんでしょうね...(苦笑)。

-いやいや。でもそのバラエティ番組出演に加え、2015年にはプロレス大賞の技能賞を受賞し、プロレスラーとしてブレイクしましたが、22年目というキャリアの長さを思えば最近の出来事ですよね。

本間 そう、キャリアだけは長いんですよ(笑)。

-TVでは「何を言っているかわからない」と話題で、字幕をつけられたりしてますが、あれはぶっちゃけどう感じてるんですか?

本間 幸せですね~。

-幸せ!?

本間 試合の時の控室のまんまなんですよ。タッグを組ませてもらってる真壁さんに話しかけるんですけど「え!? わかんねえよ(笑)」っていう調子だったんで、そのまんまです。イジってもらえると本当に光栄ですね。

-そうだったんですか。そういえば、本間選手は試合でも楽しさを重視していますね。

本間 僕の中でそういうのをごちゃまぜにしたいというのがあるんです。激しさもありつつ、こけしが当たるか当たらないかというおかしさもあって、楽しんでもらった上で勝負論的なものができればと思っていて。

今はもう知らない人も多いと思いますけど、元々、僕はデスマッチをやっていたんです。でも、血で血を洗う抗争みたいなのは実はイヤでした。もっとスポーツライクなデスマッチをしたくて「みんなをハッピーにさせる」と言ってました。今は「幸せになろうぜ!」っていうのを合言葉にやってますけど、昔から考えは変わってないですね。

-本間選手のハッピーな試合が477日ぶりに見られるということで、注目の的ですね!

本間 自分で言うのもなんですけど、絶対に今回は超ベビーフェイスですね(笑)。もう、プレッシャーに押しつぶされちゃいそうですし、正直なところ、試合は怖いです。練習はバンバンやって受け身も取ってますけど、頭から刺さるような大技はさすがにないですから。

試合だとアドレナリンも出るし、お客さんの応援もあって大技を受けることもありますよね。そこの部分は、正直なところ怖いです。まだ復帰は早いんじゃないかっていうのも、周りやSNSなんかでも言われますし。

-でも復帰すると決めたのはなぜ?

本間 この怖さって、やらないことにはいつまでもなくならないと思うので。一歩踏み出す勇気がないと、きっと始まらないんですよね。だから踏み出してみるしかないなって。

-そこまで復帰したいプロレスとは、本間さんにとって何ですか?

本間 天職かな...。いや、天"職"じゃないな。

-えっ?

本間 僕、プロレスを仕事とは思ってないんですよ。好きすぎちゃってもはや趣味なので、それでお金を貰えるなんて一番の道楽ですよ。TVにも出させてもらって、こんな奇跡はないです。最高の人生だと思いますよ。ケガをして間は空いたけど、新日本プロレスのリングにまた上がれる。

-諦めなかったからこそ、今回の奇跡的な復帰に繋がりました。

本間 はい。僕がケガをして初めて知ったのは、普通に生活をしている人でも頚椎を損傷する人は多いっていうこと。中には麻痺が残っている人もいらっしゃると思うんですけど、そういう人ってなかなか希望は持てないものじゃないですか。でも誰にだって奇跡は起こるし、僕が頑張ることで、もしかしたら自分にも奇跡が起こるかもって思ってもらえるかもしれない。

全身麻痺状態だった僕がプロレスラーとして復帰できるのは、やっぱり奇跡だと思います。その僕が健康で頑張ることは自身だけのためじゃなくて、そういうケガをされた人たちのためになるって勝手に思ってます。僕は6月23日に地元の山形で第二の人生のスタートラインに立ちます。不真面目な人生はもう終わりです(笑)、これからは気を引き締めてケガなく続けたいですね。僕らプロレスラーは"超人"ですから!