「新潟県知事選に敗北した今こそ、野党は自民との違いがわかる経済政策こそをしっかりと語るべき」と語る古賀茂明氏

新潟県知事選で自公両党が支持した花角英世(はなずみ・ひでよ)候補が勝利した。

この結果に、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、今年12月に予定されている沖縄県知事選も新潟と同じ構図となるのではと危惧する。

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6月10日投開票の、新潟県知事選は、自公が推す花角英世候補の勝利で終わった。

野党にとって、この知事選での敗北は衝撃だ。なぜなら、今回の選挙では、野党有利の条件がそろっていたからだ。

新潟は昨秋の衆院選で野党が6小選挙区で4勝という全国でも珍しい野党優勢県だ。前回の知事選では、連合と民進党が野党候補の米山隆一氏を推さなかったが勝利した。

今回は野党6党が共闘し、さらに、保守層に大人気の小泉純一郎元首相も新潟入りし、野党候補の池田千賀子(ちかこ)氏を応援した。一方、森友・加計(かけ)スキャンダルで自民党は不人気。新潟入りした幹部は街宣もできなかった。投票率も予想に反して前回を5%も上回った。

安倍政権はスキャンダルに苦しんでいる。この知事選に勝てば、来年の統一地方選や参院選を控え、自民党内では、「安倍政権では選挙を戦えない」と、安倍降ろしが始まる。これが打倒安倍政権の第一歩だ、と野党の夢は広がった。

しかし、野党はこの"恵まれた"新潟ですら勝てなかった。

私も池田候補を応援するために新潟駅前で応援演説もしたのだが、そこで感じたことがある。

それは敵失に乗じた安倍批判だけでは、野党は自公に勝てないということだ。池田陣営の応援弁士のほとんどが森友・加計問題への自公の対応を面白おかしく批判した。ただ、その演説は、太鼓を叩いて気勢を上げる「市民連合」には内輪受けしても、その様子を遠巻きに眺める一般市民には響かなかった。

自民候補が強いのには訳がある。彼らの多くは、アベノミクスで経済が良くなったと信じ、野党の政治では、経済が悪くなると思っているからだ。

野党が勝った前回知事選では、地元経済界には「隠れ米山派」がかなりいた。米山氏が過去に自民党やみんなの党に属していたことがあるからだろう。ところが、今回、経済界は割れなかった。スキャンダル追及や理念だけでは保守層はもちろん中間層も動きにくい。スキャンダル追及と地域経済振興の合わせ技一本のような公約でなければ支持は伸びないのだ。

一方の花角候補は「日本海縦貫新幹線の整備」など、古びた感はあるが経済面で夢を見させるような公約を派手に打ち出していた。その差が3万7000票の差となったのではないか?

新潟県知事選を終えて心配していることがある。それは今年12月に予定されている沖縄県知事選も新潟と同じ構図となり、与党候補が勝利を収めるのではないかということだ。

反基地を掲げて前回選挙で自公候補に勝利した翁長雄志(おなが・たけし)現沖縄県知事だが、実は知事を支える連合体の「オール沖縄」から経済人が次々と離脱している。

その象徴が「かりゆし」グループと「金秀」グループの脱会だ。県内のホテル、建設大手のツートップがこぞって「基地のない沖縄のほうが経済発展できる」と主張したからこそ、県民は反基地と経済発展が両立できると安心し、翁長知事や反基地候補に票を投じてきた。

経済界が「オール沖縄」から離れれば、沖縄県知事選は新潟県知事選と同じ構図だ。結果も同じになる可能性は極めて高い。

新潟県知事選に敗北した今こそ、野党は、敵失批判とただのバラマキではなく、自民との違いがわかる経済政策こそをしっかりと語るべきなのだと思う。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『国家の共謀』(角川新書)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中