固形燃料でトップシェアを誇るニイタカは昨冬に株価が急騰した。*写真はイメージです固形燃料でトップシェアを誇るニイタカは昨冬に株価が急騰した。*写真はイメージです

途端に冷え込んできた今日この頃。気象庁によると、今年の冬は例年より寒さが厳しくなるそうだ。ううっ、ツラい! だが、こうした変化は時としてチャンスにもなる。冷え込めば人々の行動が変わり、それによって株価が上がる会社はあるはずだ!

■暖房器具は×。本命はコンドームの会社!?

今年は夏が過ぎても一向に涼しくならないと思ったら、一気に冬を感じる気温になった。気象庁によると、世界的な異常気象の原因であり、南米沖太平洋の海面水温が低くなる「ラニーニャ現象」が継続していることなどから、関東から九州にかけて、12月から2月は40%の確率で例年より寒くなるという。

なお、例年どおりの気温となる確率も40%というから、8割方いつもどおり寒い冬が来るというわけだ。

ところで、株式投資において異常気象は大きなテーマである。複眼経済塾塾長で、『会社四季報』を100冊通読した渡部清二(わたなべ・せいじ)氏はこう語る。

「気候が原因で株価が急激に上がる実例はいくつかあります。例えば、昨年12月にはショベルの浅香(あさか)工業が1日で株価を11%上げる局面がありました。また、旅館や外食向けに固形燃料を製造・販売するニイタカも今年1月から株価が上がり始め、3月には年初来高値をつけています」

なるほど! であれば、ここからは今年は厳冬が来ると仮定して、大幅な値上がりが見込める銘柄を株のプロたちに聞いていこう。

「まずは、寒くなると消費が増えそうなものから想像してみましょう。先ほどニイタカの例がありましたが、例えば鍋料理。鍋にはキノコが多く使われますから、マイタケやエリンギ、シメジを軸にキノコを栽培・販売する雪国まいたけが有力候補になるでしょう。

また、鍋用スープの国内大手メーカーであるダイショーも上場しています。焼き肉のタレや塩こしょうといった調味料も手がけていますが、事業に占めるスープ類の売上比率は24%とそこそこ大きく、鍋需要が高まれば業績に跳ね返ってくるインパクトは一定程度見込めるでしょう」(渡部氏)

一方、『週刊プレイボーイ』本誌で『街歩き投資ラボ』を連載する株式評論家の坂本慎太郎氏はオカモトを推す。

「同社はコンドームで有名ですが、実は使い捨てカイロ『快温くん』も手がけていますので、株価が反応する可能性は十分あります。なお、コンドーム事業は中国での認知度が上がり、需要が拡大中。インバウンド客にもコンドームは人気でしたから、そういった面でも今後の業績には期待できそうです」

一見、暖房器具なども売れそうに思えるが、こちらは?

「上場企業だと石油ファンヒーターのダイニチ工業などがありますが、白物家電はサプライチェーンの都合上、急に出荷量を増やすことはできません。真っ先に連想しやすい企業ではありますが、厳冬で売り上げが劇的に増えることは考えにくいでしょう」(坂本氏)

■豪雪になったら上がる銘柄は?

ここからはさらに発想を飛躍させ、豪雪になったら上がる銘柄を見ていこう。

「冒頭で、スコップやショベルを手がける浅香工業に言及しましたが、雪かきグッズを売るホームセンターにも注目したい。中でも、豪雪地帯である新潟が地盤の『ホームセンタームサシ』を中核に据えるアークランズには期待できます」

同様に、タイヤチェーンの需要が増すことを想定すると、カー用品ショップもいいだろう。渡部氏、坂本氏の両氏からはオートバックスセブンの名が挙がった。

アークランズが運営する「ホームセンタームサシ」は東北、関東甲信越、北陸、関西に展開。生鮮食品を扱う売り場「ムサシ食品館」が特徴的アークランズが運営する「ホームセンタームサシ」は東北、関東甲信越、北陸、関西に展開。生鮮食品を扱う売り場「ムサシ食品館」が特徴的

続いてはレジャー。スキーなどのスノースポーツに関連する銘柄もある。

「スポーツ用品店『アルペン』『スポーツデポ』などを全国展開するアルペン。同社は子会社がスキー板を製造しているほか、スキーウエアのプライベートブランドも持っています」(渡部氏)

また、スキー場を運営する上場企業もある。

「白馬や菅平(すがだいら)など、人気地区でスキー場を運営している日本スキー場開発。降雪量が多ければ雪の質が良くなりますし、寒い時期が続けば施設の稼働日数が増えるので、シンプルに売り上げに跳ね返ってくるでしょう」(坂本氏)

渡部氏からは、一見、雪とは無縁そうな銘柄が上がった。

「福井が拠点のドラッグストアを運営するGenky Drug tores(ゲンキー・ドラッグ・ストアズ)も面白い。というのも、豪雪でスーパーなどが閉まっているときでも店を開け、買い物需要を取り込んだ前例があるんです。創業社長がまだ60歳で、岐阜や愛知にも店舗を展開するなど積極的な経営なのも評価できます」

最後に、こうした銘柄の投資法について聞いた。

「基本的には長期目線ではなく、本格的に寒くなる前に仕込んで、短期で売り抜けるのがいいと思います。逆に言えば、今から来年の猛暑を見込んで夏銘柄を仕込んでもいいくらいです」(坂本氏)

例えば、今年の猛暑で動いたのはアイス会社のセイヒョーだ。4月から株価は急上昇し、7月までに3倍になっている。では、坂本氏が来夏での伸びに注目する銘柄は?

「昨年12月に上場したライフドリンク カンパニーです。水やお茶などのドリンク製造を企業から請け負う会社で、具体的にはイオンや西友のプライベートブランドドリンクなどを手がけています。暑い夏になれば注文は増えるでしょうし、そもそも足元の業績も順調ですからよい投資先だと思いますよ」

ひと足先に備えをしておけば、猛暑も厳冬も怖くない!