業界初の上場企業。ソニーなどと連携しタクシー配車アプリ『S.RIDE』を展開。21年、新たな収益源として車窓広告を車両に導入 業界初の上場企業。ソニーなどと連携しタクシー配車アプリ『S.RIDE』を展開。21年、新たな収益源として車窓広告を車両に導入

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
ライドシェア解禁
(大和自動車交通)

タクシードライバーの不足をきっかけに、ライドシェアの解禁が4月から部分的に始まる。業界の構造が大きく変わりうる今、投資できそうな会社はある?

助手 最近はタクシーに乗るのもひと苦労なんですね。この前、打ち合わせに遅れそうになって会社の前から流しのタクシーに乗ろうとしたら、空車が全然来なくて参りました。結局、配車アプリで呼んだタクシーに乗ったんですけど。運転手さんに聞いたら、高齢のドライバーはコロナ中に仕事を辞めた人も多くて、コロナが明けても復帰してないんだそうです。それで稼働台数が減ってるとか。

坂本 確かにタクシーの人手不足は深刻です。ある調査によると、1社当たりの従業員は、この10年で平均2割以上減っています。従業員が半分以下になってしまった企業も1割超ある。一方で、コロナ明けの制限解除で移動ニーズが復活したからね。そりゃタクシーに乗りづらくなってるわけだよ。でも4月からライドシェアが解禁されるから、タクシー会社の人手不足はたぶん改善するよ。

助手 ライドシェアっていうと、海外のUberみたいに普通の人の自家用車に相乗りするわけですよね。利用者としてはありがたいですけど、タクシー会社の人手不足解消にはならないんじゃないですか?

坂本 いや。日本で解禁されるライドシェアはタクシー会社が運行を管理する方式なんです。タクシー不足の地域や時間単位限定で、運賃はタクシーと同じ。ドライバーはタクシー会社と雇用契約を結び、歩合給や時間給で働きます。ちなみにタクシーに乗務するのに従来必要だった二種免許は不要となり、普通の運転免許があれば問題ない。勤務時間の管理やドライバー教育はタクシー会社が担当します。車はタクシー会社の車両を使うケースもある。

助手 タクシー会社がパートのドライバーを雇いやすいようにしました、っていうのと何が違うんです?

坂本 鋭いね。推測だけど、国土交通省はタクシー会社をできるだけ維持したいんでしょうね。

助手 どういうことです?

坂本 高齢化が進むとタクシーは欠かせないインフラになっていくはずだから。高齢で運転ができなくなっても通院や買い物では当然必要です。とはいえ地方では、既存の公共交通機関は採算が取れず壊滅的な地域も多い。今後その傾向が強まるだろうから、地元密着型のタクシー会社だけは維持させたい。そこで、ライドシェアをタクシー会社の人材採用や利益確保に役立つよう設計したんじゃないでしょうか。

助手 実際に人は集まるんですかね。

坂本 「隙間時間に稼げる」といった打ち出し方で募集をかけているタクシー会社には、問い合わせが多数集まっているみたいですよ。

助手 幸先は良さそう。ある種の国策だしタクシー会社に投資もアリ?

坂本 上場タクシー会社は少ないんです。都内四大タクシーの一角、大和自動車交通くらいかな、投資対象にしやすいのは。東京地盤で、グループと提携先を合わせて2200台のタクシーを運用しています。

助手 業績はどうなんですか?

坂本 通期予想は赤字です。人件費増や採用活動目的の宣伝広告費増が響いた。一方、一昨年には東京23区内などで運賃値上げを実施したから、ライドシェアでドライバー採用が順調に進めば稼働率も向上して一気に利益が出るはずです。ただ、他業種への開放も含めたライドシェア全面解禁の議論は政府内で続いていて、6月に改めて結論が出る。全面解禁の可能性は少なそうだけど、結論を待って投資しても遅くないよ。

今週の実験結果 
赤字の会社が黒字に転換するとき株価はグッと上がりやすい。今度の動向を注視しましょう!

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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