1947年創業、2015年上場。西日本の豊富な解体需要を取り込むため、2024年1月期に倉敷事務所を新設した 1947年創業、2015年上場。西日本の豊富な解体需要を取り込むため、2024年1月期に倉敷事務所を新設した

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
工場の解体
(ベステラ)

九州や北海道に半導体工場が続々と建設されている。なら、建設会社が狙い目か? いやいや、所長の答えはひと味違う。今こそ世にも珍しい、工場を解体する上場企業に注目すべし!

助手 九州や北海道で人手不足が加速してるって話を聞いたんですけど。

坂本 半導体工場新設の影響で人手が足りなくなってるんだろうね。熊本県では、半導体受託製造の世界最大手・TSMCが最先端の半導体工場を建設中。北海道千歳市でも、国産半導体メーカーのラピダスが半導体工場を建設している。

助手 半導体の工場を造るのに、そんなに人手が必要なんですか?

坂本 半導体は裾野が広い製品だから、周辺に関連産業の工場なんかも建設されるんですよ。その建設にも人手がいるからね。

助手 これからどんどん工場ができるってわけですね。なら、工場建設に関わる企業を検討したいです!

坂本 とはいっても、工場を「建てる」会社は複数上場しているし、各社に得意分野があるから、今回の工場新設ラッシュの恩恵を最大限に受けられる企業を絞り込むのは難しいよ。今回は工場を「壊す」企業に注目してみましょう。

助手 解体ってことですよね。工場新設の話をしてたのに解体ですか?

坂本 先の半導体工場は新しい敷地に造るケースだったけど、普通の工場は既存の工場用地内で建て替えることが多い。だから解体作業が発生するんです。例えば、製品原料や燃料の搬入が必要な製鉄所や石油プラント、発電所なんかは湾岸の限られた敷地に建てるほかないでしょ。

助手 確かにそうですね。でも、いまさら製鉄所や発電所の建て替え需要なんかあるんですか?

坂本 大アリだよ。脱炭素化に絡んで、国は2030年までに石炭火力発電所の9割を削減する必要があると試算している。同様に石炭を大量に使う製鉄所の高炉も、設備の改修が喫緊の課題になってるんです。実際、日本製鉄はすでに呉や和歌山などの高炉を4基、停止しています。電力や製鉄以外でも、高度経済成長期に建設された工場施設が急速に老朽化しているから、解体の需要が増加するのは間違いない。

助手 意外でした。ただ、工場の解体って建設とセットなんですよね。解体専門の会社よりも、やっぱり建設会社に投資したほうが儲かりそうですけど。

坂本 いやいや。建設会社は造るのが本業で解体工事は専門外。受注するにしても赤字覚悟です。それに最近は法規制が強化されて解体工事の難度が上がっています。だから、解体は専門の企業に任せることが増えているんです。

助手 餅は餅屋ってわけですか。解体専門の企業に投資するとしたら?

坂本 上場企業は2社しかないんですが、注目はベステラです。同社は「リンゴ皮むき工法」など特許工法をいくつも持っていて技術力に定評があります。施工自体は外注で、マネジメントに徹しているのも面白い。

助手 リンゴ皮むき?

坂本 ガスタンクなど、球形の貯槽を解体する工法です。リンゴの皮をむくように上部の鉄板を切断し、重力を利用して下に落としていくんです。足場を組まなくて済むから安全性が高い上に、従来の工法よりも工期が3分の1に短縮される。

助手 いいことずくめですね。やっぱり今後の業績に期待できますか?

坂本 ええ。解体市場が伸びてるからね。課題は人材採用かな。工事監督者ひとり当たりで対応できる工事に限度があるから、採用が順調じゃないと需要を取り切れない。ただ、今期は順調に採用できているのは安心材料です。投資できるでしょう。

今週の実験結果 
製鉄所や発電所の建て替え需要が急増中。今後の業績にも期待できる会社です

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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