第1~3四半期累計の純利益は前年比28%増と好調。業績予想を出していないためPERはナシだが、『四季報』独自予想では16.1倍 第1~3四半期累計の純利益は前年比28%増と好調。業績予想を出していないためPERはナシだが、『四季報』独自予想では16.1倍

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
日経平均4万円突破
(野村ホールディングス)

日経平均株価が4万円を突破し、さらなる上昇をうかがっている。コロナ禍のときもそうだったが、株価が上昇している局面では証券株が高騰する傾向にある。では今回、二匹目のどじょうはいる?

助手 最近、身近でも「NISA口座を開いた」って話を耳にします。

坂本 株価が絶好調だから新規開設した人も多いんでしょう。

助手 やっぱり株が上がると口座開設数も増えますよね。そして株取引の回数も増えて証券会社の手数料も増える、というわけで投資先として証券会社ってどうですか?

坂本 確かに、昔は日経平均が好調だと証券会社が儲かっていました。でも今後は業績と国内株価は、それほど連動しなくなると思います。

助手 どうしてですか?

坂本 証券会社が、国内株取引の手数料に依存する収益構造を変えようとしてるから。例えばSBI証券や楽天証券が23年に国内株の取引手数料を無料化したのはその表れです。

助手 代わりにどう稼ぐんです?

坂本 ネット証券系は海外株や投資信託、FXの手数料、それに信用取引の金利で稼ぐ方向です。国内株の取引手数料無料化で口座数を増やして、周辺商品の手数料で稼ぐというわけ。

助手 うまくいってるんですか?

坂本 ネット証券の口座獲得競争は、いかに広告費をかけるか、おトクな施策を打てるか、という面があるから過酷です。各社が利益を削り合う体力勝負の様相ですね。

助手 なんだぁ。じゃあ現状で証券会社に投資するのはナシですか。

坂本 いや。口座数や手数料率の勝負を諦めた対面証券会社は面白いよ。

助手 対面証券って?

坂本 実店舗に担当者がいる、昔からある証券会社だと思えばいい。

助手 そういう証券会社は手数料が高い上に、営業マンに短期の売買を勧められて手数料を搾り取られるみたいなイメージですけど。

坂本 古いね。こうした会社は店舗と人員があるから付加価値の高いサービスを提供しやすいんです。規模の大きさを生かして事業の多角化に成功した企業もある。イメージと実態に乖離があるから、投資するうまみがあるんですよ。

助手 具体的にどの企業に注目を?

坂本 国内最大の証券会社・野村證券を中核企業とする野村ホールディングスに注目です。顧客層を生かして資産管理型ビジネスに取り組み、ストック収入の割合を増やしているのがポイントです。

助手 どういうことですか?

坂本 従来の手数料収入は、一定の料率でしか発生しない。だから取引回数を増やそうと無理な売買を勧めて批判されていたわけ。一方、野村が取り組むのは預かり資産額に応じた手数料体系の導入です。顧客に勧めた商品で資産が増えれば次の手数料は増える。そうして信頼を勝ち取れば、ほかのビジネスにつなげることも可能です。

助手 ほかのビジネスって?

坂本 事業承継や相続の相談とか。対面証券の利用者には富裕層や高齢者も多いから、自身の経営する会社の後継ぎ問題や相続税対策に悩んでいたりするんですよ。そういう人たちには資産の悩みをワンストップで相談したいというニーズがある。それを証券会社が全部カバーすれば効率よく稼げます。しかも相続や事業承継は株価と関係ないから安定的な収入源にもなる。

助手 なるほど。運用以外の相談も受けるなら、人材面や体制面で最大手の野村が有利そうですね。

坂本 そう。すでに同社の営業部門の収益のうちストック収入は6割弱。その伸びを確認しつつ、投資機会を探るといいでしょう。

今週の実験結果 
対面証券会社は事業承継や相続のサポートなど、事業を多角化させています

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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