『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

8月27日より全国公開予定の映画『鳩の撃退法』に出演する女優の土屋太鳳(つちや・たお)さんが、思い出の映画をハイテンションで語ります!

■「侍系」が好きなのは土屋家が武家の家だから?

――子供の頃に見て記憶に残っている作品はありますか?

土屋 『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(2000年)が大好きでした。

――1996~97年に放送されたテレビドラマの劇場版作品ですね。

土屋 V6の長野博さんが主人公のウルトラマンです。ティガ、ガイア、コスモスあたりの世代なんですけど、そのなかでも特にティガが好きだったんですよね。当時はまだ幼稚園くらいだったかな。

――では、小学校の頃に見て思い出深い作品は?

土屋 『シザーハンズ』(1991年)が大好きです。

――僕も大好きです!

土屋 小学校2年生のときに見て衝撃を受けて。「好きな人を切るってどういうこと!?」って。あのハサミを最後は氷の彫刻作品を作るのに使うのもすてきですよね。

ほかには『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2002年)もすごく好きです。草彅剛さん主演で実写化されていますけど、「はあ......私も出たかった!」って思ってました。

――それぐらい好きだったんですね。では、今のお仕事をされていくなかで、大きかった作品は?

土屋 どの作品も影響を受けていますけど、『鈴木先生』(2011年)はやっぱり大きかったのかなあ。あとは『龍馬伝』(2010年)も。どちらの作品もオーディションだったので、思い入れも深いですね。

そういう悩んだ時期に、視聴者としてよく見ていたのは『キサラギ』(2007年)。「自分もこんな映画、舞台に出たい!」って思ってました。そうしたら、『累-かさね-』(2018年)が同じ佐藤祐市監督だったんです。お会いしたときに思わず、「グッズ持ってます! ファンです!」って言っちゃいました(笑)。

――太鳳さんは「作りたい」より「出たい」と思うタイプなんですね。

土屋 そうですね。そういう意味では、『るろうに剣心』(2012年)も衝撃を受けました。当時まだ高校生だったんですけど、「なんで自分はこの作品に出られないんだ!」「この運動神経はなんのためにあるんだ!」って思ってました(笑)。

――その思いが実り、シリーズ第2作『るろうに剣心 京都大火編』(2014年)から出演されていますよね。『るろうに剣心』の最新作では華麗なアクションも話題です。

土屋 でも、自分の体の機敏さみたいなものを生かせるのは30代......いや、28歳くらいがギリギリかなって気持ちもあるんですよ。

――そんなことないんじゃないですか!? 個人的には『キル・ビル』(2003年)みたいなアクション大作を太鳳さんにやってほしいです!

土屋 アクションでいうと、『今際の国のアリス』(2020年)では受け身を取るシーンがすごく多くて。受け身の基礎をこれまで勉強していなかったので、首を痛めたりもしたんです。シーズン2の撮影でしっかりと克服して、この先につなげられたらいいなと思います。

――話を少し変えて、洋画で好きな作品はありますか?

土屋 『ラストサムライ』(2003年)ですね。本当に大好きで......。もう私も出たかったです(笑)。トム・クルーズは「日本人だったんじゃないか!?」と思うくらい侍になりきっていて素敵でしたし、渡辺謙さんの「パーフェクト」の言い方も本当にカッコいいんですよね。

――『クレしん』といい、『るろうに剣心』といい、武士系の作品が多いですね。

土屋 あ、全然意識してなかったです。でも、そうかもしれないですね。武家の家だからかな? 絶対その影響があると思うんですよね。

■藤原竜也演じる小説家への母性

――最新出演作の『鳩の撃退法』は、直木賞を受賞した天才作家・津田伸一(藤原竜也)がある出来事をもとに新作小説を書き上げ、土屋さん演じる担当編集者の鳥飼なほみが、本当にフィクションなのか検証していくなかで物語が進んでいく作品。

個人的な感想としては、一度見ただけではわからない部分もあるからこそ面白い作品だと思いました! 何を聞いてもネタバレになると思うんですけど、出演されていかがでしたか?

土屋 時系列や内容がいろんなところに飛ぶので、私自身、演じていて「?」が頭に浮かぶシーンが多かったんですけど、そこが魅力的な作品だと思います。見終わった後に自分の中だけで完結しないで、ほかの人と話したいなって思えるところが、今、コロナ禍の時代だからこそ、とても大事なことだなと思います。

――太鳳さんが演じた編集者・鳥飼は観客目線のキャラクターで、作品のガイドになっていますよね。

土屋 そうですね。鳥飼はそのためにいるキャラクターだと思いますし、映画を見た人がそう思ってくれたらうれしいです。

――藤原竜也さん演じる小説家・津田のことを、鳥飼はどう思っていたと思います?

土屋 彼女は津田のことが好きすぎる、いきすぎたファンですね。そこは作中でも微妙に描かれていて。私はそういう要素も入れたいなと思って演じていました。「人としては好きなんですよ」みたいな。末っ子感のある津田に対して、鳥飼がちょっとした母性みたいなものを抱いている姿を表現できたらいいなって。

――ちなみにタカハタ秀太監督はバラエティ出身で、『ASAYAN』など名番組をたくさん手がけられていますが、どうでしたか? 

土屋 タカハタ監督とは今回初めてご一緒させていただいたんですけど、最初は「どういうこと?」みたいなことが多くて。

――ちょっと独特な演出方法だったんですね。

土屋 そうなんです。でも、一緒にやればやるほど、わかるようになっていきました。噛(か)めば噛むほど味が出てくるというか、自分の中で役が生きていくのを感じられて。もう少し長くご一緒したかったなって思います。

――最後に、『鳩の撃退法』をどんな方に見てもらいたいですか?

土屋 仕事柄、編集者の方にもよく会うので、そういう方々に「編集者の鳥飼がよかった」「すごく楽しい作品だった」って思ってもらえたら本望ですね。見終わった後にいろいろと話したくなる作品なので、ぜひそこを楽しんでもらえたらうれしいです!

●土屋太鳳(つちや・たお)
1995年生まれ、東京都出身。2008年、映画『トウキョウソナタ』で女優デビュー。2015年、NHK連続テレビ小説『まれ』でヒロインを務める。以降、映画『orange』『青空エール』『兄に愛されすぎて困ってます』『となりの怪物くん』『累~かさね~』『春待つ僕ら』などに主演

■『鳩の撃退法』8月27日(金)より全国公開予定
©2021「鳩の撃退法」製作委員会 ©佐藤正午/小学館

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