レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏

記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。さて、12月1日は「着信メロディの日」だったそうです。着信メロディとは、携帯電話に電話がかかってきたときに演奏される着信音のことで、後にCDなどの録音物の一部がそのまま流れる「着うた」や1曲全部を聴ける「着うたフル」などに進化しました。

今回は、そんな着メロ文化を掘り返していきます。

スマートフォンが普及した現代では、端末標準の着信音を使い続ける人が増えています。一方、機能の制限されたガラケーでは、個性を出すために〝人と違う着信音〟を選ぶことが重要でした。

しかし、初期のガラケーでオリジナル着信音を利用するには、自分で音源を入力するしかありません。その入力方法を書いた〝着メロ本〟が多数出版されていたのです。

大量に販売された着メロ本大量に販売された着メロ本

着メロ本の中身は、パソコン雑誌『マイコンBASICマガジン』の投稿プログラムのコーナーのように数字が羅列されているだけ。この数字どおりに端末のボタンを押すことで、曲が再生できるという仕組みです。しかも機種やメーカーごとに入力方法が異なり、数パターンを並列して掲載されていました。

そんなプログラマーのような作業をしなくてはならないほど、ガラケーで個性を出すことは大変だったんですね。

8㎝シングルの着メロCDも販売されていました8㎝シングルの着メロCDも販売されていました

プレイステーション用ソフト『着信メロディだもん』は、テレビ画面に出てくる指示に従って、着メロを入力できるという画期的なグッズプレイステーション用ソフト『着信メロディだもん』は、テレビ画面に出てくる指示に従って、着メロを入力できるという画期的なグッズ

ほかにはCDシングルに、その曲の着メロ入力方法が特典としてついたり、着メロの完成例を聴きながら入力できる着メロCDも発売されたりしました。さらにプレステには『着信メロディだもん』という入力支援ソフトが登場し、続編まで出たほどです。

ガラケーの充電端子に装着して、着メロデータをインストールできる「着メロの素」ガラケーの充電端子に装着して、着メロデータをインストールできる「着メロの素」

最初は単音だった着メロも「4和音」「16和音」と同時発音数が増え、それがケータイのステータスになる時代がありました。そうなると入力するのは大変で、iモードからは着メロをダウンロードする時代になったのです。

また、ネットを使わずとも、携帯電話に差し込むだけで本体にデータが入る「着メロの素」という商品までありました。

年末年始の帰省では実家に眠るガラケーを掘り起こし、懐かしの着メロを一聴することをオススメします。

「着メロ音がキレイでリアルに変わる♪」と書かれたパワーストーン付属のストラップ。これは平成ならではのオーバーテクノロジー!?「着メロ音がキレイでリアルに変わる♪」と書かれたパワーストーン付属のストラップ。これは平成ならではのオーバーテクノロジー!?

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山下メロ

山下メロやました・めろ

1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。

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