北朝鮮問題で成果を出さないわけにいかず、かといって経済面の譲歩が大きければ「安全保障と引き換えに国を売った」と批判されかねない。綱渡りの交渉だ。

4月17、18日の2日間にわたり、米フロリダのトランプ大統領の別荘で行なわれる日米首脳会談。

過去に例のないほど厳しく、そして先の読めない“地雷だらけの一発勝負”が安倍首相を待っている。

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昨年2月の米ワシントン&フロリダ、同11月の東京。過去2度の安倍・トランプ会談は、いうなれば儀式的な色合いの強いものだった。

しかし、今回の日米首脳会談はまったく違う。テーブルにいくつもの緊急課題が並べられた初の真剣勝負だ。

例えば、5月末か6月に行なわれる予定のトランプ大統領と北朝鮮・金正恩(キム・ジョンウン)委員長との首脳会談に、どこまで日本の要求をねじ込めるか。あるいは、3月にトランプ大統領が発表した鉄鋼・アルミニウムの追加関税措置から、日本が除外対象となれるか。アメリカが離脱したTPPの代わりとなる、日米2国間のFTA(自由貿易協定)をどのような内容で求めてくるか…。

ただでさえこうしたハードな交渉が予想される上、今回の会談は別の意味でも過去に例のない、異常なものになるという。かつて経済産業省米州課長として、日米通商交渉を担当した中部大学特任教授の細川昌彦氏が解説する。

「首脳会談というのは普通、事前に事務方や担当大臣同士が水面下で交渉を行ない、着地点を決めた上で本番に臨むのが定石です。ところが、トランプ大統領にはそれが通用しない。自分で交渉を行ない、自分で決めないと気が済まない人ですし、まともに話ができる実務家はほぼ全員辞めており、イエスマンしか残っていないからです。

もちろん、今回も外務官僚や経産官僚は事前に何度もワシントンに行って米側の事務方と接触しています。また、世耕弘成(せこう・ひろしげ)経産大臣や河野太郎外務大臣も米通商代表のライトハイザー氏ら米政権幹部とすでに会っています。しかし結局、彼らには交渉を着地させる権限がなく、トランプ大統領が会談本番で何を言うかもハンドリングできない。つまり、あらゆる議題がどう転ぶかは安倍首相とトランプ大統領との会話で決まるのです」

まさに掟(おきて)破りの一発勝負。ゴルフの最中にトランプ大統領が突然、予想外のパンチを繰り出してくる可能性もある。

「しかもトランプ大統領は、安全保障と引き換えに経済の譲歩を迫るような筋違いのディールを仕掛けてくる。以前にも、日本はアメリカに安全保障を依存していることから、通商問題で譲歩せざるをえない局面はありましたが、それはあくまでも阿吽(あうん)の呼吸、それこそ“忖度(そんたく)”で行なわれていたものです。そんな品のない要求を露骨に行なう米大統領は初めてでしょう。

例えば鉄鋼関税問題でいえば、本来は毅然(きぜん)と日本の立場を伝えればいいはずです。しかしトランプ大統領に対しては、それを面と向かって言うことが本当にプラスかどうか、現場の空気で安倍首相が判断するしかない。気分屋のトランプ大統領は、いったん悪いほうに転がると何を言いだすかわかりませんから」(細川氏)

一時も気が抜けない、とてつもないプレッシャーがかかる会談なのだ。

◆今回、どんな“地雷”が埋まっているのか? この続きは『週刊プレイボーイ』18号(4月16日発売)「安倍首相を待ち受ける恐怖のトランプ会談」にてお読みください。

(写真/時事通信社)