4月27日、南北軍事境界線近くを韓国・文在寅大統領と北朝鮮・金正恩委員長がふたりきりで歩く映像は世界の注目を集めた。

4月27日の南北首脳会談を経て、ついに動きだした「統一コリア」。

もちろん、まだ不確定要素が多く情勢は予断を許さないが、日本は隣国として、この新たな“大国”の出現をどう受け止めればいいのか?

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韓国・板門店で文在寅(ムン・ジェイン)、金正恩(キム・ジョンウン)の南北ツートップが手をつなぎ、軍事境界線をまたいで往復してみせた歴史的な首脳会談以来、南北コリア統一の機運がにわかに高まっている。

両首脳は南北の「自主統一の未来を早める」との文言が入った「板門店宣言」に署名。5月5日には北朝鮮が「統一への取り組みを加速させる初の実行措置」として標準時間を30分早め、韓国との時差を解消するなど、早くも具体的な動きが出始めている。米朝首脳会談が無事に終われば、この流れはさらに加速していくはずだ。

南北が融合した「統一コリア」とは、一体どんな国なのか? それは日本にとってメリットのある存在なのか、それとも危険なのか? コリア国際研究所の朴斗鎮(パク・トゥジン)所長が説明する。

「統一コリアといっても、いきなり政治制度を同じにしたり、軍隊を統合したりするわけではありません。それは何十年も先の話になるでしょう。最初は南北が独立を維持したまま、国家連合のような形で緩やかな経済共同体をつくることになるはずです」

ちなみに、面積約12万km2の北朝鮮と約10万km2の韓国を合わせると、イギリス(約24万km2)ほどの広さになる。また、人口も韓国5127万人(2016年)、北朝鮮2515万人(15年)を足せば、ドイツ(8267万人)に迫る規模。GDPも1.5兆ドル近く、世界トップ10をうかがうレベルだ。

「統一コリアは強国になる」と予測するのは、東アジア総合研究所の姜英之(カン・ヨンジ)理事長だ。

「資金、技術のある韓国と良質な資源、労働力を持つ北朝鮮が有機的に結びつけば、ポテンシャルはさらに高まる。統一コリアは欧州の主要国並みのパワーを持つ国家になってもおかしくありません」

また、当面は南北それぞれが独立した軍を持ち続けることになるだろうが、「統一コリア」は隠れた軍事大国でもある。日本の自衛隊が総勢22万人なのに対し、韓国軍は63万人、北朝鮮軍は119万人。合計180万人以上だ。

そんな国が、日本海を挟んで隣にいきなり出現したらどうなるのか?

「もちろん、統一後の姿によっては日本のライバルどころか、脅威になる可能性があります。最悪のシナリオは、北朝鮮が核を完全に放棄せず、軍備が強大なままの統一コリアが中国寄りの国として立ち現れることでしょう。そうなれば日本は安全保障を含め、東アジアでの立ち位置について根本的な再検討を迫られることになる。日本でも核保有すべきとの論議が高まることになるかもしれません。

ただ、現実にはその可能性は高くない。なぜなら、南北統一は非核化と軍縮が大前提だからです。朝鮮半島の完全非核化や兵力の削減なしには、米中日露の周辺大国が統一コリアに賛同することはありえません」(前出・朴氏)

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(写真/時事通信社)