『週刊プレイボーイ』で、政界のタブーと既得権益に斬り込む「政界斬鉄剣!!!」を連載中の元・大臣秘書官の池田和隆(いけだ・かずたか)氏が、日本の防衛力低下の根本的な原因について語る。

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池田「今年は元号も変わり、新たな時代に突入する特別な年になります。日本はどうなるのでしょうか? まず今週は、安全保障問題に触れたいと思います。日本の防衛費は上昇の一途ですが、実質的な防衛力は衰退していると思います」

え!? なんで?

池田「日本政府は世界屈指の最新鋭兵器を"大人買い"する計画で、確かに装備面では大幅な戦力アップになります。しかし国全体の戦力で最も重要な要素は"人"です。ここでいう人とは、自衛官と政府首脳を指します。そのどちらも問題だらけです。

まず、自衛隊の人材不足が深刻化している。防衛省によると、陸海空の各自衛官になる人がまず属する『自衛官候補生』のなり手が、14年度の3万1361人から17年度には2万7510人へと激減しました。特に深刻なのが海上自衛隊です」

なんでだろう?

池田「海自の性質上、隊員は演習や作戦で長ければ数ヵ月間も海に出ます。その間はたいていメールやSNSが禁止です。防衛省と海自の幹部はこれが不人気の理由だと考えたようです。

そこで海自は、隊員個人の携帯メールをいったん自衛艦内のサーバーに保存して、定期的に外部へ送信できる制度に変更しました。しかしこれでは、サイバーセキュリティ面で大きな穴が開くことになってしまう」

ダメじゃん!

池田「永田町の議員会館のパソコンも日常的にサイバー攻撃を受けています。その大半は中国からと思われるものです。考えてもみてください。中国からと思われるサイバー攻撃が議員会館に行なわれていると私に知られるようでは、日本の中枢のセキュリティはボロボロなのです。

それなのに与党や政府でこの問題が深刻に議論された形跡はない。自衛隊のみならず、政府中枢の情報防衛力も世界最低クラスです。豪華な装備を整備するだけでは通用しないのです」 

先進国とは思えないよな。

池田「2年前のアメリカ大統領選挙では、ヒラリー・クリントン氏が個人用メールで、さほど重要ではない仕事の内容をやりとりしただけで叩かれまくりました。セキュリティ意識の低い人は国の指導者に向いていないわけです。しかし安倍政権にセキュリティ意識があるとはとうてい思えない。

若手海上自衛官たちも、自分の日常会話的な内容のメールが他国から分析されてしまい、日本の安全や自分の乗る艦が危険に晒(さら)される可能性があることを十分に認識しているとは思えない。

それでも政府と海自は目先の人材不足を補うために、情報統制レベルを大幅に緩める判断をしてしまった。いくら装備を充実させても、人の意識と情報セキュリティがスカスカでは意味がないのです」

不安になってきた......。

池田「日米安全保障条約では、日本が他国から攻撃を受けた場合、アメリカは日本と共同反撃する約束にはなっています。しかし攻撃のタイミングと方法はアメリカ任せなのです。つまり、もし日本が核攻撃を受けてもアメリカは核戦争のリスクを冒してまで核攻撃をする義務はなく、まずはその国との交渉から入るのが現実的です。

そうなれば日本はしばらく放置され、その間、最前線に晒されるのは自衛官です。安倍首相や自衛隊幹部は高額な兵器をそろえて国防力強化をアピールしていますが、そもそも日本を攻撃する気にさせないための戦略が欠如しているのです」

確かに!

池田「若者の自衛隊離れはメールやSNSの不自由さが原因じゃないと思います。『中国や北朝鮮は核ミサイルがあるけど、俺たちはどう戦うの? アメリカが来る前に死ぬんじゃね?』という、入隊を検討する若者の素朴な疑問に対して明確な答えを用意できていないことが、日本の防衛力低下の根本的な原因なのではないでしょうか」

●池田和隆(いけだ・かずたか)
元農林水産大臣秘書官。1967年生まれ、熊本県出身。「農林族議員のドン」と呼ばれた故松岡利勝元農水大臣の秘書を16年間務め、国家権力や利権、国の意思決定の実態を内側から目撃し続けてきた知られざる重要人物。第1次安倍政権の崩壊も、実はこの男が震源地だったのだ! 池田氏公式ホームページ【http://ikedakazutaka.com/】