安倍首相は12月9日の会見で「解散を断行することにちゅうちょはない」と発言。その真意は?

「安倍総理はうまく逃げ切った。これで災害対策として10兆円規模の補正予算を仕上げれば、年明けには『桜を見る会』問題も沈静化するはずです」

12月9日に臨時国会が閉会したことを受け、自民党の某議員秘書はこうささやいた。

「桜を見る会」疑惑をめぐり、臨時国会で見せた安倍晋三首相の立ち回りは終始一貫していた。疑惑について釈明したのは、参議院本会議や官邸ロビーでのぶら下がり会見など、自分が一方的に話せる場だけ。

一問一答形式で野党議員との攻防が予想される予算委員会での集中審議の開催はかたくなに拒み、ついに答弁席に立つことはなかった。

その一方で、内閣提出の法案成立率は93%(15本中14本)と上々。野党が準備していた内閣不信任案も出されることなく、すんなりと臨時国会を閉じることに成功したのだ。

「桜を見る会」だけでなく、2閣僚の辞任や萩生田(はぎうだ)光一文部科学大臣の「身の丈」発言でも国会が紛糾したことを思えば、"げるは恥だが役に立つ"を貫き通したという見方もできる。

しかし、政界の一寸先は闇。この"逃げ恥"作戦の影響で、安倍首相は自ら悲願とする憲法改正に関して「少なくないダメージを負った」と指摘するのは、国民投票広報機構の南部義典代表だ。

「『桜を見る会』関連の攻防に追われ、与党は今臨時国会で改憲の手続きを定めるための国民投票法改正案を成立させることができなかった。これで首相が掲げてきた『2020年憲法改正』の実現は事実上、ほぼ不可能となりました」

前出の自民党某議員秘書もこう続ける。

「国民投票法改正案が成立せず、継続審議となるのは安倍政権になってから5回目です。あまりの体たらくに、自民党内からも『首相の言う"改憲の決意"は単なるスローガンにすぎない』と怒る声が出るほど。

首相の任期は残り2年を切っており、麻生太郎副総理や二階俊博幹事長からは自民党総裁4選論も出ていますが、安倍首相の求心力の陰りは否めません」

そんななか、永田町でくすぶり続けているのが「年明け解散・総選挙説」。ジャーナリストの川村晃司氏が言う。

「与野党は国会閉会中の年末年始に内閣委員会を開き、『桜を見る会』疑惑について議論することで合意しています。ただ、自民は参加者名簿など、野党の要求する資料を出すことはないでしょう。

そうなれば、国民は説明不十分と評価し、内閣支持率がさらに下がりかねない。その流れに焦る安倍首相が、大型補正予算を仕上げて有権者に仕事ぶりをアピールした上で、1月に始まる通常国会の冒頭で解散・総選挙に打って出てもおかしくありません」

立憲民主党と国民民主党が水面下で進める年内合併の動きが不調に終われば、解散の確率はさらに高まるとの声も。

「合流話が流れて野党がバラバラなら、与党は断然有利です。選挙資金になる政党交付金も個々の野党ではまとまった額にならず、候補者の一本化も簡単ではない。自公勝利の道が見えてくれば、首相が多少議席を減らしてでも解散・総選挙を決断するひとつの材料になると思います」

じりじりと支持率を落とし、レームダックと化すのか。それとも局面打開のために、"逃げ恥"の総仕上げとして年明け早々にも「桜散らし解散」を仕掛けるのか。年末年始は波乱含みの政局となりそうだ。