麻生財務大臣は巨額の予備費への批判に対し「積んだら大きいとか、別の額を出したら小さいとか、何を基準に決めるんだね」と不満あらわ

5月27日に閣議決定された第2次補正予算の内訳は、驚きをもって受け止められた。全国紙官邸担当記者が解説する。

「予算総額約31.9兆円のうち、新型コロナ対策の名目で10兆円もの『予備費』が盛り込まれていたんです。例年なら予備費の相場は3500億円前後。つまり、安倍政権は今回、通常の30倍を積んだということです」

もちろん、経済面も含めた新型コロナ対策に巨額の予算が必要であることは間違いないし、こうした緊急時には平時よりも多めの予備費を積むべきだ。しかし、それにしても規模の大きさが桁外れ。

例えば2009年のリーマン・ショック対応時の予備費が1兆円、11年の東日本大震災時が8000億円、16年の熊本地震時が7000億円だったことと比べてみれば、その異様さがわかるだろう。

「憲法83条には、国の予算執行は国会の議決に基づいて行なわれると定められており、内閣が独自の裁量で使い道を決められる予備費の計上には自制が求められます。

そのため、歴代内閣は国会のチェックが働かない予備費の計上を必要最小限にとどめ、3500億円水準に維持してきました。コロナ禍に機動的に対処するためとはいえ、10兆円もの予備費計上は国会軽視、財政民主主義の否定との批判もあります」(官邸担当記者)

なぜ、安倍政権はそうした批判を承知で巨額の予備費計上に踏み切ったのか?

「これは秋にも解散・総選挙があるとのシグナル」とささやくのは自民党関係者だ。

「コロナ禍と検察庁法改正問題で、政権支持率が急落しています。こういうときはさっさと国会を閉めて野党の追及を封じ、あちこちに予算をバラまいて支持率回復に努めるというのがセオリー。その軍資金として、『コロナ支援』の名目で自民党支持層に手厚く配れる10兆円の予備費はうってつけなんです」

そうはいっても、安倍政権が解散・総選挙を打てるタイミングはそう多くはない。

「秋が深まれば、コロナ感染拡大の第2波が来る可能性もあり、選挙運動が難しい。かといって、もうひと冬越えた後の来年春以降では、安倍首相の総裁任期である9月、衆議院議員の任期である10月が目前に迫り、解散の政治的効果は薄れてしまう。

そう考えると、10兆円バラマキの効果が出てくる今年10月くらいが最初で最後のチャンスでしょう。自民党内では10月25日投開票説が流れています」(自民党関係者)

政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏も、やはり秋解散の可能性が日増しに高まっていると指摘する。

「10月末には安倍政権がレームダック(死に体)になりかねないふたつのリスク要素があります。来年に延期された東京五輪の中止決定、そして米大統領選挙でのトランプ敗退です。

そのため、政権としてはそれまでに解散・総選挙をやりたい。まず夏に10兆円をバラまいて支持率を回復させ、それでも総選挙に勝つには不十分と感じれば、巨額の第3次補正予算、そして消費税減税といったさらなるバラマキ策を官邸が繰り出すかもしれません」

こうした流れを察知してか、6月2日には無所属の馬淵澄夫衆院議員が国民民主党入りを表明するなど、野党サイドも水面下で動きを早めている。秋解散のシナリオを軸に、永田町では与野党入り乱れてのドタバタがしばらく続きそうだ。