感染拡大→初訪米もワクチン契約に至らず→3度目の緊急事態宣言へ。解散・総選挙が近いといわれるが、この状況でホントに大丈夫なの?

「結局、なんの保証もない。ワクチン接種を待ち望む国民をぬか喜びさせただけですよ」(厚労省の内情に詳しい都内の医療従事者)

菅首相が就任後初の訪米を終え、"最大の手土産"とばかりに胸を張っていたあの話は、やはり幻に終わってしまうのかもしれない。

訪米中、菅首相は現地で米ファイザー社のブーラCEOと電話会談を行なった。帰国後の菅首相の説明によれば、そこで5000万人分(1億回分)のワクチンが9月までに追加供給されるめどが立った、という話だった。政府がすでに契約で確保済みだった7720万人分と合わせれば、ファイザーのワクチンだけで国民全員分が入手できる計算になる。

しかし、早くも暗雲が立ち込めたのは4月20日。参議院の厚生労働委員会で、田村憲久厚労大臣が「ファイザー社と合意書を交わしたわけではない」と答弁したのだ。

これははっきり言えば、5000万人分のワクチン確保という話が菅首相側の"希望的観測"にすぎない―と認めたも同然。実際、ファイザーの日本法人の広報も「日本政府との協議は継続中」とコメントし、9月までのワクチン供給が確定したという風潮をやんわり否定している。

内閣府関係者がこう明かす。

「ファイザー社との協議が契約段階に至っていないのに、首相が先走る形でワクチン確保をアナウンスして大丈夫なのかという心配は政府内でもありました。解散・総選挙が目前に迫っているだけに、ワクチン確保をアピール材料として支持率を上げたいという官邸サイドの意向が優先されたのでしょう」

政治評論家の鈴木哲夫氏はこう首をひねる。

「田村厚労相はなぜすんなりと『契約の事実はない』と白状してしまったのか。契約上の守秘義務を盾に、のらりくらりとはぐらかすこともできたはずです。官邸と厚労省の間でワクチン戦略のすり合わせができていないとすれば、9月までにワクチンを全量入手できるのか、いよいよ疑問符がつきます」

さらに、悪いことは重なる。ここに来て、各国のワクチン争奪戦がさらに激化する要因が出てきたのだ。

「ワクチンを製造するファイザー、モデルナの両社が、免疫効果維持のためには2回目の接種の後、6~12ヵ月後に"3回目の接種"が必要だと言い始めたんです。2度目の接種が進み、ひと息ついていた欧米諸国が、これによりどっと3回目用のワクチン確保に乗り出してきた。全人口の2回接種分以上に当たる6億回分のワクチンを確保しているアメリカでさえ、この秋から3回目分の調達に動くと明言しているほどです。

しかも、欧米諸国は製薬会社と、追加ワクチンの優先供給を受ける契約を結んでいるケースが少なくない。そうなると、口約束にすぎない日本へのワクチンはもっと後回しにされる恐れがあります」(前出・内閣府関係者)

あたかも「これで日本のワクチンはもう大丈夫」とばかりに説明した菅首相。だが、実際は3回目分の確保にひた走る先行契約国の"おこぼれ"に頼るしかないピンチを迎えつつあるようだ。

ちなみに、日米首脳会談の合意事項には、菅官邸が切望する東京五輪開会式へのバイデン大統領参加の確約もなかった。

「ワクチンも五輪も、なんの約束もなし。大成功と喧伝(けんでん)された日米首脳会談の印象が急速に色あせつつあります」(前出・鈴木氏)

初訪米、ホントに"成功"だったのか?