川から遠くても、高台でも、局所的な危険はある

熊本県を中心に九州や中部地方など全国各地で豪雨災害が発生。昨年9月の台風19号の際には東京の多摩川も氾濫。首都圏の被害も懸念される。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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長く居座る梅雨前線の影響で、各地で甚大な被害が出ています。天を恨む毎日だけどまだまだ前線はしつこくて、今後の各地での被害が心配です。

首都東京も例外ではありません。去年の台風19号のときには、あと少し台風が東寄りを通っていたら、荒川が氾濫(はんらん)していたかもしれなかったそうです。そうです、っていうのは、私、国土交通省の荒川下流河川事務所に電話して聞いてみたんです。

荒川下流河川事務所が作ったフィクションドキュメンタリー動画(なんか不思議な言葉だけど)『荒川氾濫』、ぜひ見てみてください。荒川下流河川事務所のサイトから見ることができます。

以前にこれを見ていたので、豪雨のたびに荒川氾濫が心配でならない私。荒川沿いに住む友人には動画を見るよう勧め、避難プランを作っているか尋ねたりして、気をもんでいます。

なぜって、もしも荒川が氾濫したら、東京の東部が甚大な被害を受けるだけでなく、首都機能が停止しかねないから。動画によると、あふれた水が地下鉄に入り込み、銀座や大手町も水浸しに。こうなると東京だけの問題ではなくなります。

台風19号が去った後に荒川下流河川事務所に電話して実際どんな状況だったのかを尋ねたところ「いつ氾濫してもおかしくない極めて緊迫した状態だったが、台風のコースがわずかに西寄りであったことと、上流の調整池や水門などが機能したおかげでなんとか氾濫せずに済んだ。今後また同じような規模の台風が来た際にはどうなるかわからない」という見解でした。

埼玉県春日部市にある通称地下神殿と呼ばれる巨大な治水施設「首都圏外郭放水路」に水を逃したり、調整池などであふれた水をためたり、複数ある水門で氾濫を防ぐようですが、気候危機で予想を上回る水害が増えている今、そのキャパシティを超えてしまうような豪雨が降らないとも限りません。明日その日が来るかもしれないと思って生活しなくては。

と思って自分が住んでいる区が配布した浸水ハザードマップや土砂災害ハザードマップをじっくり見てみたら、普段は水害なんて全然関係なさそうでも案外危険度の高い場所ってあるんですね。

例えば坂の途中。横道に向かってわずかに土地が下がっている場所なんかは浸水危険度が高いんです。これは意外でした。水は全部坂の下に流れると思ったら、そんな単純な話ではないんですね。

そしてビルの谷間のちょっとした斜面で土砂崩れの危険度が高かったりする。まさかコンクリートで覆われた場所でそんなリスクがあるとは想像もしていませんでした。川から遠くても、高台でも、局所的な危険はある。どこかに仕舞い込んだハザードマップ、よく見て避難路をイメージしておくといいかもです。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。『曼荼羅家族「もしかしてVERY失格!?」完結編』(光文社)が好評発売中

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