工事の遅れが心配されていた江陵アイスアリーナだが、ここにきて急ピッチで進んでいる

2011年に開催が決定した、18年の韓国・平昌(ピョンチャン)五輪まであと1年を切った。2回の落選を乗り越え、韓国初の冬季五輪招致に成功したわけだが、これまでは多くの問題が指摘されてきた。

資金難、雪不足、アクセス不良、大会組織委員長や開会式・閉会式の演出家の相次ぐ辞任……。さらに、韓国経済の悪化で競技場の工事も遅れ、「本当に開催できるのか?」という声が絶えなかった。

しかし、実際に現地に足を運んでみると、ここへきて急ピッチに準備が進んでいることが見て取れた。開催が近づき、昨年11月から立て続けに行なわれている五輪のテスト大会も、軒並み順調に進行されているのだ。

スキーやソリ競技が行なわれる平昌地区は、昨年夏に合宿に訪れた日本のジャンプ関係者が「ボブスレー・リュージュコースは途中で工事が止まったままで、ジャンプ台横のクロスカントリーコースもまったく手つかずだった」と話すような状況だった。しかしこの2月には、ボブスレー・リュージュ、クロスカントリーのW杯を開催できるまでになり、スキージャンプのW杯では会場に吹く強風を防風ネットをうまく機能させて競技を続ける対応も見せた。

また、スピードスケートの世界距離別選手権と、フィギュアスケートの四大陸選手権が行なわれた江陵(カンヌン)アイスアリーナの氷の状態は、選手からも「理想的」と太鼓判。カナダの技術者を招いて、コンディションのいい氷を作るなどの努力が実っている。

それに併せ、国民の関心を高める動きも熱を帯び始めている。開催までちょうどあと1年となる2月9日に、江陵の五輪パーク内にあるアイスホッケーセンターで行なわれたイベントには、キム・ヨナが聖火リレーで使うトーチを持って登場した。また、同パークでは世界各地の物産展や、名物料理が出されるフードコートも出展され、各競技のプチ体験ができるテントなどもあり、多くの市民が来場して楽しんでいた。

アクセスに関しても、高速鉄道(KTX)が開通すれば五輪パークまで歩いても20分程度。平昌地区にもバスで1時間もかからず行けるようになり、これまでにないコンパクトな大会になりそうだ。

ただ、ソフト関係はまだまだこれからというところ。スケートやスキーのテスト大会では、観客のセキュリティチェックはあくまで形式的なもので、メディア関係者は完全にノーチェック。ジャンプ会場も本番を想定して車両チェック用の大きなテントを立てたが、実際はメディア車両を素通りさせるなど完全な張りぼて状態だ。

競技施設周辺も整備が進んでいないところはあるが、前回のロシア・ソチ五輪プレシーズン(12年12月)に、フィギュアスケートGPファイナルの取材に訪れた際にはもっとひどい状況だった。競技場の周囲にはホテルが1軒完成しているだけで、選手村も工事途中。工事現場は土がむき出しで、野良犬も数多くいたことを考えれば、平昌五輪は“意外にも”準備が進んでいると言っていい。

一気呵成(いっきかせい)に造られただけに、これから細部の手直しも必要になるだろう。韓国の国民の中にはまだ開催を不安視する人も多いというが、“ケンチャナヨ(大丈夫だ)”という雰囲気があるのは確かだ。

(取材・文/折山淑美)