J2に昇格を果たした2チームについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第96回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、今年J2に昇格を果たしたFC琉球と鹿児島ユナイテッドFCについて。開幕ダッシュに成功したものの失速気味のFC琉球と、開幕から降格圏に低迷している鹿児島ユナイテッドのここまでを宮澤ミシェルが分析する。

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昨年はホームゲームで12勝4分けと年間無敗でシーズンを終えて、J3リーグで優勝。今年からJ2に昇格してきたFC琉球が、最初の正念場を迎えているね。

今季は初めてのJ2リーグで、開幕ダッシュは成功したんだ。開幕戦は福岡に3対1、2戦目は大宮との打ち合いを制して4対3、続く愛媛に2対0、徳島に2対1で勝利して4連勝。一時はJ2の首位に立った。だけど、その後は5分け3敗と苦しくなってきたよね。

勝てなかった8試合のうち4試合は先制点を奪っているんだ。追加点を奪っていたり、守り切っていれば、勝ち点3を手にできた試合もあっただけに、決して完全な力負けという感じでもないんだ。

守備がというのは簡単なんだけど、守りっていうのはDFだけでやるわけじゃないからね。攻撃的なポジションの選手が前線から追い込んだり、パスコースを限定することも重要。そうしたチーム全員の意識が、守りのときに一体感として現れれば、状況はまた改善されるんじゃないかな。

ただ、ここまでのFC琉球の戦いを振り返れば、本当によくやっている。クラブが発足したのが2003年。フィリップ・トルシエが率いたりして話題になったこともあったよね。そのクラブが2013年にJリーグ加盟が認められて、2014年からJ3を戦って、今年からJ2っていうんだから、すごいことだよ。

FC琉球のトレーニング環境は決して恵まれているわけじゃないからね。専用練習場を持っていないから、沖縄県内のグラウンドを日替わりで移動してトレーニング。

私が現役だった頃もそういうクラブはあったけれど、そうしたクラブと彼らの大きな違いは、移動距離だよな。九州でやるにしろ、本州でやるにしろ、常に飛行機での移動。飛行機での移動はけっこう疲れるからね。それを思うとFC琉球の選手たちのタフさには、頭が下がるよ。

指揮官は今年から樋口靖洋監督。2012年から2シーズンは横浜F.マリノスで指揮をとり、2015年はヴァンフォーレ甲府も率いた経験豊富な人だよ。その監督が真っ黒に日焼けしながら先頭に立って選手たちを引っ張っている。

いまは苦しい時期だけれど、ここを踏ん張って乗り越えてもらいたいね。夏場になればハンパない沖縄の暑さが味方してくれると思うんだ。あの暑さはホーム、アウェイともに苦しめられるものだけれど、日頃から暑い沖縄でトレーニングしているFC琉球の選手たちに味方するはず。そうした理由も、昨年のホームゲーム無敗にはあったと思うんだ。

そのFC琉球を昨年まで3シーズン率いたキム・ジョンソン(金鍾成)監督は、今年から鹿児島ユナイテッドを率いている。

2016年からJ3を戦って、4年目の今季からJ2に昇格。さすがサッカーどころ鹿児島だよね。前園真聖や城彰二、大迫勇也などの数々の日本代表選手を輩出してきた土地柄の後押しも大きかったと思うよ。

ただ、成績の方はFC琉球とは一転して、開幕からJ3への降格圏に低迷している。昨年までチームを支えた選手たちが移籍したことも影響しているんだよな。だけど、今年は新たに八反田康平(前名古屋)、酒本憲幸と米澤令衣(ともに前C大阪)などを獲得した。その八反田をはじめ鹿児島出身の選手たちが集結しているからね。

地元クラブに地元出身の選手が戻る。これだよね。千葉出身のボクも現役最後は地元のジェフに戻ったから気持ちはよくわかるんだ。こういう光景が日本中で見られるようになってきたってのは、Jリーグ百年構想が一歩ずつ前進してきたおかげでもあるんだよな。

J2リーグもまだまだ先は長いからね。ここから両クラブがどんな戦いを見せてくれるのか、みなさんにも注目してもらいたいな!