これだけ大金を投資して、肝心の結果がついてこない現状には危機感を覚えると語るセルジオ越後氏

神戸と鳥栖、チームのスペイン化を進めて注目を集める両チームが不振に陥っている。

昨季途中にイニエスタ、リージョ監督を迎え、さらに今季、ビジャ、セルジ・サンペールを加えた神戸はまずまずのスタートを切った。ところが4月に今季初の連敗を喫すると、リージョ監督を契約解除。後任に吉田前監督が就任したが、その後も黒星を重ねるなど泥沼状態だ。

イニエスタ、ビジャ、ポドルスキの大物トリオは、3人がそろえば見事なプレーを見せる。特にイニエスタとビジャのふたりの連係は素晴らしい。ただ、彼らはすでに30代半ばでケガも多い。第6節から3人同時にピッチに立つことがなくなり、5連敗を喫してしまった(第10節終了時点)。

ただ、3人のフル稼働が難しいのは、事前にある程度予想できたこと。うまく休ませながら長いシーズンを乗り切るしかない。

それよりも問題なのは、チームの戦い方に一貫性を欠くことだ。「バルセロナ化」を掲げているとおりに細かくパスをつなごうとしたかと思えば、次の試合ではウェリントン頼みのロングボール戦術にしたり、出る選手が変わると、まるで違うサッカーになってしまう。本気でバルサ化を目指すならもう少し我慢が必要だと思う。

また、イライラを隠せなくなったポドルスキが中盤まで下がってくる場面が目立ち、チームのバランスを崩している。これも影響は大きいね。

こうした状況にあるチームを仕切っているのは誰なのか。イニエスタなのか、吉田監督なのか、三浦スポーツダイレクターなのか、それとも三木谷オーナーなのか。ボスの顔がまったく見えてこない。これでは日本人選手もやりづらいよ。

一方の鳥栖はもっと深刻だ。開幕から10試合で1勝1分け8敗で最下位。得点はわずか1。今季から就任したスペイン人のカレーラス監督は早くも退任。これでシーズン途中の監督交代は2年連続となる。

鳥栖は補強のバランスが悪かった。日本代表GKの権田を筆頭に、昨夏から今オフにかけて守備陣の主力クラスがごっそりと流出。その一方で、前線にはフェルナンド・トーレス以外に金崎、イバルボ、豊田、趙東建(チョ・ドンゴン)と選手がダブつき気味。そして、エースのトーレスをどう生かすかという昨季からの課題は、今季もまったく解消されていない。

新加入のクエンカも、カレーラス監督もどういうルートで連れてきたのかわからないけど、それぞれ「元バルサ」「トーレスの元同僚」という"ブランド"だけ見て決めたのではないかと勘繰りたくもなるよ。

これだけ結果が出なければ、監督がクビになるのは当然だけど、そもそもなぜカレーラスという監督を選んだのか、そこに大きな疑問が残る。いずれにしても、フロントに問題があるのは明白だ。

神戸も鳥栖もお客さんはたくさん入っているし、特に神戸はビジネス的には成功と言えるのかもしれない。Jリーグ本部も対戦相手も喜んでいるだろう。でも、これだけ大金を投資して、肝心の結果がついてこない現状には危機感を覚えるよ。

大型補強をすることに対して、ほかのチームが今まで以上に「リスクが高い」と二の足を踏みかねないからだ。期待が大きかっただけに、今の両チームの状況は心配だね。

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