唯一無二のスター性で野球ファンを魅了し続けてきた球界のエンターテイナー、新庄剛志(しんじょう・つよし)。過去の言動を自ら解説し、"新庄劇場"の舞台裏を種明かしする新連載「新庄剛志の開運ポジ語録」が週刊プレイボーイでスタート!

記念すべき第1回は、11年ぶりに夏の甲子園出場を果たした母校ナインに贈ったメッセージ、日本ハムの後輩・大谷翔平への激など、本音が満載です。

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■ポジティブオーラが縁のあるチームに福をもたらす!?

――東京五輪で野球日本代表「侍ジャパン」が悲願の金メダルを獲とりましたが、実は新庄さんと縁のある方がチームにたくさんいたんですよね。稲葉篤紀監督、金子 誠ヘッドコーチ兼打撃コーチ、建山義紀投手コーチとは北海道日本ハムファイターズ時代のチームメイトでした。

新庄 だって、それ篤(あっ)ちゃん(稲葉篤紀)がかわいがってたメンバーやもん。そこに俺を入れたら面白かったのにね。メンタルトレーニングコーチで(笑)。

――それが実現していたら、さらに盛り上がりましたね。

新庄 あと俺が特に頑張ってほしかったのがソフトボールだったの。

――ソフトボール日本代表も激闘を制して金メダルを獲得しましたよね。

新庄 実はピッチャーの上野(由岐子)さんと3月23日放送の『中居正広の3番勝負! レジェンド大集合SP』(日本テレビ)で対戦してるの。けっこういい勝負ができたのよ。今までのプロ野球選手はだいたい3、4球で抑えられてたんだけど、俺はファウルで11球ぐらい粘ったから。

――ソフトボールはマウンドからホームベースまでの距離が短く、体感では170キロぐらいに感じるともいわれています。

新庄 極端に言うと、アンダースローの渡辺俊介君が投げてくる感じで、しかも球速はもっと速く感じる。さらにチェンジアップやらスライダーやら、いろんな球を投げてくるからね。最後は三振に取られたけど、「何年かぶりにマウンドで楽しい勝負ができた」って上野さんが言ってくれたの。それぐらい粘れたのよ、俺。

――おめでたいことといえば、新庄さんの母校・西日本短期大学附属高等学校が11年ぶりに夏の甲子園出場を果たしました。インスタグラムでも投稿されていましたが、メッセージを込めたオリジナルTシャツをナインにプレゼントされたんですよね。

新庄 ギリギリ間に合って届いたよ。「勝ち負けよりも甲子園での野球をちかっぱ楽しんで暴れてきんしゃい!!」ってメッセージを入れて。「新庄先輩はここでプレーしてたんだ」って思いを持って、笑顔でボールを追いかけてくれたらうれしいなと思って。

■困難をクリアした人間だけが楽しめる

――新庄さんを語る上で欠かせない言葉が「楽しんじょう」。宮迫博之さんのYouTubeチャンネルで対談したとき(今年4月)に「ファンを楽しませようって思ったことは1回もない。俺が楽しんでただけなの」と語っていたのが印象的でした。そもそも、「楽しむ」というレベルに行くことが難しいと思うのですが?

新庄 そこなのよ。「楽しむ」って、いろんな困難をクリアした人間にしかできないんだよね。

――新庄さんでも最初は楽しめなかったですか?

新庄 そら、そうでしょう。いきなり楽しんだら、ただのバカやん(笑)。それだとお調子者にしか見えない。苦労や困難をクリアしてクリアして、やっと楽しめるの。

俺の場合は10年ぐらいグラウンドで苦労してきたから。それをクリアして徐々に楽しくなってきて、最後の日ハムのときはめちゃくちゃ楽しくなって、ただただ楽しんでた。それをみんなが見て楽しんでくれたという話。

――新庄さんでも楽しめたのは最後の最後だけだったんですね。

新庄 そうだよ。楽しむことを手にできるのは1、2年では無理。「目標に向かって突っ走りたい」という気持ちはみんなあると思うのよ。ただ、すぐにはつかめないから。

やりたいことをやるためには、やりたくないことをやらないとダメ。俺はもちろん練習とかやりたくなかったよ。しんどいし、疲労も出てくるし。でも、それを超えると楽しくなってくる。

――新庄さんはインスタで「苦労が楽しさに変わるまで苦労するんだ」という言葉を投稿していましたよね。これは新庄さんと共に昨年のプロ野球合同トライアウトに挑み、夢破れてボートレースの世界へ新たに飛び込んだ元埼玉西武ライオンズの野田昇吾さんに向けて、新庄さんが送ったエールの言葉です。

新庄 楽しみに変わるまでは時間がかかるの。例えばダイエットもそう。始めて3週間は体に変化がないし、苦労しかないから面白くない。仕事終わりも食事面に気を使ったり、めっちゃしんどいわけやん。

ただ3週間を越えて、ウエートトレーニングした後に鏡を見て体に変化が出てきたら、ちょっとずつ楽しくなってくる。そこまで辛抱しないと。それを乗り越えたときに楽しさを感じて、楽しさしかなくなってくるから。「苦労してるんだけど、苦労とは思わなくなる時期まで苦労しなさい」ということやね。

■「大谷君はスターじゃないよ。彼は......」

今後の連載では「下半身を鍛えるとジーパンが似合わなくなる」など、世間をザワつかせた新庄語録をピックアップ。新庄さん自ら超真剣に解説します!

――野球界のスターとして輝きを放ってきた新庄さんですが、子供の頃に憧れたスターはいましたか?

新庄 マラソンの瀬古(利彦)さんみたいになりたかったの。俺はマラソンが大好きだったのよ。だから小学校の卒業文集には「瀬古選手みたいになりたい。それがダメだったらプロ野球選手でいい」みたいなことを書いてた。

――プロ野球は第2候補だったんですね。

新庄 そう。でもお父さんに「マラソン選手とプロ野球選手、どっちがお金儲けできるの?」って聞いたの。そしたら、「そら、野球選手たい」って言うからマラソンはやめようと思った。

――野球選手で理想のスターはいましたか?

新庄 プロ野球界に入ってからも、「この人みたいになりたい」という人はいなかった。それより俺がスターになって、子供たちに「新庄みたいになりたい」と思わせたいという気持ちが強かった。

――今の野球界のスター選手といえば、大谷翔平選手ですよね。

新庄 彼はスターではないよ。

――スターじゃない?

新庄 はい。彼はスーパースター(笑)。でも、大谷君がもうひと皮むけてさらに上に行くためには、すごい車に乗って、みんなが憧れるようなファッションで髪型もオシャレ系でチャラチャラしないと。髪型を変えたからって彼の実力は衰えないし、野球以外で気分転換をしてくれたら、さらに上に行くんじゃないかなと思うね。

あとは日本のテレビに出まくって、「こいつ大丈夫?」と思わせてアンチを増やす。それでアメリカに帰ってさらに活躍したら、超スーパースターになる。まあ、大谷君はそういうのを求めてないタイプだろうけどね。

――新庄さんも現役時代にテレビに出ることが多かったですが、アンチは増えたんですか?

新庄 俺はシーズンの成績が悪かった年ほどテレビに出ようと思ってたから。それでファンに「テレビに出るぐらいやったら、バットでも振っとけや!」と思われたかった。

――なぜ、そう思われたかったんですか?

新庄 アンチにボロクソ言われることで、「見返してやる」という気持ちを持ちたかったから。

――バッシングに対して落ち込む人もいると思うのですが。

新庄 それは言われ慣れてないから。俺はタイガース時代から言われ慣れてるから。アンチに耐えるポイントは慣れだね。

だって、俺がメジャーに行ったら、「おまえ、バカか。日本で打率2割6分ぐらいしか打ってない選手がなんでアメリカに行って通用するの? 日本の恥でしょ」って言われたから。それを聞いて、「まぁ見とけ」って感じ。俺の場合、98%がアンチだからまあ慣れるよね。

――1997年のオールスターはすさまじかったですよね。前半戦は成績不振だったものの、ファン投票で選出。すると、試合中にファンが鳴り物応援をボイコットし、ペットボトルが投げ込まれ、「新庄帰れ」コールも起こりました。

新庄 あのときはまだ慣れてない時期だったから、「すぐ代えてください。お願いします」と思ってた。1打席目にペットボトルを何百本も投げられて。バッターボックスの手前で20分ぐらい待たされたんだけど、もう2時間ぐらいに感じたよ。

でも、そういうのを経験してるから、今は慣れて多少のアンチが来ても全然平気。「おまえの存在はいらんわ。死ね」って言われても「生きる!」って感じ(笑)。

――それ、FUJIWARAの原西孝幸さんのギャグです(笑)。慣れるとメンタルが強くなるんですね。

新庄 そう。大谷君は慣れてないから、もしアンチのコメントがきたら、めっちゃへこむんじゃないかな。野球選手ってそういったひとつのメッセージから、ドーンとスランプになることもあると思うよ。

■ブロックしたアンチには理由を説明してあげる

阪神タイガース時代に知り合い、親交の深いインタビューマン山下(右)。「つーやん」「しげちゃん」と呼び合う旧知の仲

――新庄さんは最近、インスタグラムをよく更新されていますが、炎上したりしないですか?

新庄 炎上? わかんない。でも、アンチのコメントはものすごくくる。ファンから、「新庄さん、バッティングを教えてください」って、俺の過去の映像を貼りつけたDMがたくさんくるんだけど、さすがにひとつずつ返してたらハンパない量になるから、バッティングを教えるためにその映像にコメントをつけて投稿したりするのよ。そしたら、「過去の栄光ばっかり出さなくていいよ。おまえの今の現状をアップしてくれ」ってアンチのコメントがくるわけ。それが一番腹立つね。

――バッティングを教えるための教材として出してるだけですもんね。

新庄 過去の栄光がひとつもないようなやつに「過去の栄光にとらわれるな」って言われることが腹立つの。だから、すぐにブロック。そしたら、また新しいアカウントを作って、「僕、ブロックされたんですけど」ってコメントがくるんだけど、ちゃんとブロックした理由を説明してあげてるよ。俺、けっこうマメに返してるから。

――アンチにも丁寧にコメントを返すんですね。

新庄 まあ俺は慣れてるから。人生でいろんな経験して、いろんな行動を起こして、少しずつクリアしていけば、アンチの言葉も気にならなくなってくると思うけどね。

●新庄剛志(しんじょう・つよし) 
1972年1月28日生まれ、長崎県出身。1990年西日本短期大学附属高等学校からドラフト5位で阪神タイガースに入団。2000年、日本人初の野手FA選手としてMLBに挑戦。2001年から2003年までの3シーズン、ニューヨーク・メッツ、サンフランシスコ・ジャイアンツで活躍。日本人初のメジャー4番、日本人初の満塁本塁打、日本人初のワールドシリーズ出場など、記憶に残るプレーでファンを沸かせる。2004年、北海道日本ハムファイターズに入団。今や伝説となった数々のパフォーマンス、コメント、プレーで常に話題を提供。かねての夢であった「札幌ドームを満員にする」という目標を達成し、日本ハムが44年ぶりの日本一に輝いた2006年に引退。その後、インドネシア・バリ島で暮らし、2020年に15年ぶりの現役復帰を目指してプロ野球12球団合同トライアウトに参加。