Jリーグの「常勝軍団」鹿島、復活のキーマン、鈴木優磨選手。日本代表でのプレーも見たいぞ......

「日本代表で見たい選手」。『週刊プレイボーイ』連載でもおなじみの辛口評論家・セルジオ越後氏が、事あるごとに期待を口にするストライカーの登場だ! そのいかつい風貌に似合わぬ(?)献身的なプレーで、2年半ぶりに復帰した古巣・鹿島を牽引する鈴木優磨選手(26歳)。その素顔と本音に迫った。

■「この風貌だからいいイメージは......」

〈2016年度の天皇杯を最後に国内タイトルから遠ざかっている鹿島だが、今季は開幕から好調をキープ。シーズンの約3分の1に当たる13試合を終えて9勝3敗1分けで暫定首位に立っている〉

――ここまでの戦いをどう感じていますか。

鈴木 若いチームで課題があるなか、うまくいっている部分とそうじゃない部分があって試行錯誤しながらやっているところです。いい雰囲気でやれていますけど、優勝を経験している選手が少ないので、経験不足は否めません。今後、大事な試合で勝ち切れるかどうかがチームの浮き沈みのカギになると思います。

――鈴木選手はリーグ戦全試合に先発出場して6得点4アシスト。自身のプレーについては?

鈴木 評価は自分ではわからないですね。若手の頃はただ突っ走ればよかった。今は年齢的に上のほうになってきてチーム内での立場も変わりましたし、ギラギラする部分を出しながらも、考えながらやれたらという感じです。FWとしては得点やアシストの数字はおろそかにできないし、それプラスでチームを勝たせるために何ができるかなって。 

〈金髪の外見はもちろん、ピッチで闘争心を前面に出すスタイルゆえにエゴイスティックな選手だと誤解されがち。だが、そのプレーはひと言でいえば献身的だ〉

――いかつい風貌に似合わず......と言ったら失礼ですが、チームを助けるようなプレーが目立ちます。

鈴木 この風貌でなかなかいいイメージは持たれないですけど、そこはチームメイトや見てくれている人がわかってくれればいい。自分は鹿島を優勝させるためだけに(欧州から)帰ってきた。そのために鹿島が拾ってくれたと思っているし、とにかくチームが勝つためのプレーを心がけていますね。

――2トップを組む後輩の上田綺世(あやせ)選手がプレーしやすいように、自分が前に行きたい気持ちを抑えてプレーしているようにも見えます。

鈴木 綺世の点を取る能力、パワーや決定力は日本人離れしていますし、チームとして生かさない手はない。だから、自分はなるべく綺世がゴール前の仕事に専念できるように考えています。

ただ、それって我慢じゃなくて、綺世に相手DFがつられて俺がフリーになることもあるし、お互いにどっちがどうではなく、いいバランスでできているかなって。チームが勝つためには陰で活躍したり、気が利く選手も必要で、鹿島はそれが全員でできているということだと思います。

――これまで鹿島は常にJリーグをリードしてきましたが、近年は主役の座を川崎に持っていかれています。そのことについて「面白くない」とのコメントもありました。

鈴木 そうっすね。17年に川崎が初めてリーグ優勝したときも、最後にウチがまくられたわけです。その悔しさは忘れていないし、俺たちがきっかけをつくった以上、俺たちで止めないと。(2節に0-2で敗れているし)現状の力は川崎が上かもしれないですけど、重要なのは最後にどっちが上にいるかです。

〈2020-21シーズンにはベルギーのシント=トロイデンで17得点を挙げ、昨夏には欧州でのステップアップが濃厚とみられていたが、今年1月、鹿島に電撃復帰した〉

――鹿島復帰に当たっての心境は?

鈴木 ベルギーで17点取って、自分自身いいタイミングで移籍できると思っていたし、行きたいリーグもありました。ただ、納得いくオファーがまとまらずに、この結果を出して移籍できないなら厳しいって自分の中でひと区切りついたというか。そこからは鹿島一択でした。俺自身、鹿島をまた優勝させたいという思いが強かったですから。

――ベルギーに残る選択もあったなか、すぐに気持ちは切り替えられました?

鈴木 新しい挑戦をしたかったので、ベルギーに残る選択はなかったですね。だから、けっこう割り切れました。もともと俺は何がなんでも欧州でプレーしたいというわけではなかったですし。

ただ、去年夏の移籍期間の1ヵ月はシビれたというか、二度とできない経験をしました。最後は、いつ(オファーの)電話が来るかとソワソワと待っていて......(苦笑)。

――欧州サッカー好きで有名、いつかチャンピオンズリーグ(以下CL)や英プレミアリーグでプレーしたいと口にしていたこともありました。

鈴木 プレミアに行きたいと思っていましたけど、ベルギーでもFWはフィジカルで勝負するのが大変なのに、それよりはるかに強いプレミアは無理だなって。そこでストライカーとして欧州で生き残るにはどこかと考え、現実的にはドイツかイタリアかなって思っていました。特にセリエAは好きだったし、イタリアを中心に移籍先を探してはいたんですけどね。

――ベルギーでの生活面はどうでした?

鈴木 苦でした(苦笑)。ご飯は合わないし、日本と違って不規則なことがいっぱい起きるんで。

――鹿島で結果を出せば、また欧州挑戦のチャンスがあるかもしれません。

鈴木 それはないっす。俺は一回無理だと思ったら無理だし。帰ってくるタイミングで欧州での夢はすべて捨ててきたので、今後は鹿島のために全身全霊を尽くすだけです。

鹿島は過去3シーズン無冠、国内に限れば5年間もタイトルから遠ざかる。下部組織出身とあり、チームの復権にかける思いは人一倍強い

■「小中学生時代はケンカばっかり(苦笑)」

〈ベルギーで結果を出す以前にも、18年には鹿島のアジアチャンピオンズリーグ優勝に貢献し、大会MVPを獲得。22年カタールW杯を約半年後に控えた今、メディアやファンの間では日本代表の決定力不足解消のため、鈴木の招集を期待する声も多い〉

――代表待望論もありますが、どう受け止めていますか。

鈴木 メディアはいい記事を書きたいだけでしょ。俺が踊らされることはないです(笑)。俺が今興味あるのは、鹿島が優勝するかしないかだけですから。

――それにしても、世代別代表を含め一度も日の丸をつけたことがないのは意外です(*18年11月に日本代表に招集されるもケガで辞退)。

鈴木 縁がないですね。

――欧州サッカーが好きで、CLなどに憧れていたというなら、その延長線上にはW杯もあるのでは。26歳と年齢的にもいい時期ですし、カタールW杯出たくないですか。

鈴木 いや、(ここからは)もうないでしょ(笑)。

――鈴木選手を表現するときに「やんちゃ」という言葉がよく使われますが、小さい頃はどんな子供でしたか?

鈴木 見たまんまです。小中学生時代はケンカばっかりして、しょっちゅう学校に親が呼ばれていました(苦笑)。

――(笑)。今だから明かせるやんちゃエピソードなどありますか?

鈴木 なんだろうな。いっぱいありすぎて......。まあ、負けず嫌いではありましたけど、学校で勝負する必要はなかったですね(苦笑)。

〈ピッチでは時に鬼の形相でチームメイトを鼓舞する熱い姿はおなじみ。勝利へのこだわりは人一倍強く、勝つためには周囲の雑音など気にせず突き進むのがスタイルだ〉

鈴木 フェアプレーはもちろん、子供たちのお手本にならないといけないとか、夢を与えなければいけないってことはわかっています。

でも、俺ら選手はまずは勝つことが大事で、負けたら何を言ってもただの戯(ざ)れ言になってしまうじゃないですか。勝ってこそ伝えられることがあるし、ピッチではダマし合いじゃないけど、いろんな駆け引きがある。

だから、俺は内容ではなく勝ちにこだわっているし、勝つことこそが正義だと思っている。そこに対しては、いろんな意見があるのはわかりますけど、何を言われてもブレることはないですね。

――今季は鹿島のレジェンドで、最も影響を受けた選手だという小笠原満男さんが背負った「40番」を着てプレーしています。プレッシャーにはなっていないですか。

鈴木 逆に意気に感じているというか。満男さんからも「おまえらしく頑張れ」と声をかけてもらいました。07年に満男さんがイタリア(のメッシーナ)から復帰して、そのまま鹿島をリーグ優勝させたことは俺の中に鮮明な記憶として残っています。やるしかないです。

――ここまでは優勝に向けて順調ですね。

鈴木 それは、まだ気が早い。道のりは長いし、もっともっとチームとして成長する必要はあります。ただ、最終的にそこに行けたらいいかなって思っています。

●鈴木優磨(すずき・ゆうま)
1996年生まれ、千葉県出身。鹿島ユースから2015年にトップチーム昇格。18年に鹿島が制したアジアチャンピオンズリーグでは大会MVPに。翌19年夏に加入したベルギーのシント=トロイデンで2年半過ごした後、今年1月に鹿島に復帰。182㎝、75㎏