ワールドカップ決勝について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第256回。
現役時代、Ｊリーグ創設期にジェフ市原（現在のジェフ千葉）でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、カタールワールドカップの決勝。いよいよ目前に迫ったアルゼンチン対フランスのＷ杯決勝。宮澤ミシェルが有利と考えるのは？
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もう決勝戦だよ。早いもんだよなぁ。もっとワールドカップを楽しみたい気持ちはあるんだけれど、今大会はグループリーグから波乱が立て続けに起きたから十分に楽しませてもらったよな。
あとはアルゼンチン代表とフランス代表のファイナルがどういう結末を迎えるか。ファイナルは福井県でのパブリックビューイングで観るんだけど、みんな固唾をのんじゃって押し黙っちゃうかもしれないよ（笑）。
フランス代表は下馬評通りの強さを見せたよな。中盤の核のポグバとカンテがいなくて、開幕前にベンゼマも故障で欠いてさ。大会が始まってからもDFのリュカ・エルナンデスが故障で離脱し、体調不良などで選手が揃わないなかでも決勝進出だからな。
グループリーグ最終戦でチュニジアに０-１で負けて不覚を取ったけれど、決勝トーナメントの勝ち上がりを見ると、あの負けさえも選手のコンディションを整えるためだったように感じさせるよな。
フランス代表では、５ゴールを決めているエムバペはさすがの存在感を発揮しているけれど、グリーズマンが抜群に効いているのも見逃せないよ。クロアチア代表のモドリッチのように、攻守で「ここ！」という場面で顔を出して仕事をしている。グリーズマンのほうがモドリッチよりも攻撃の比重が大きいけれど、チームの屋台骨を支えているんだよ。
まあ、普通に考えたらフランス代表が有利ってなるよな。エムバペは凄すぎるし、ベンゼマの代役のジルーもイングランド戦で見せたような勝負強さがあるし、なによりチームのどこからでも得点できる力強さがあるからね。
たださ、ボクは親父がフランス人だから、フランス代表の２連覇には期待していたんだけど、決勝の相手がアルゼンチン代表となると、心情的には変わってくるよ。だって、メッシだぜ。
この十数年間、世界のサッカーシーンを牽引してきたのは、メッシで間違いない。彼にとって今大会がきっと最後のワールドカップになるだろうから、メッシが手にしていない最後のタイトルを掲げさせたいって思っちゃうんだよな。
フランス代表は前回優勝しているから、今回はメッシに譲ってくれよ、と。最後の最後でメッシがジュール・リメ杯を掲げたら、世界中が感動するだろうし。でもまあ、そう簡単にはいかないよな（笑）。
アルゼンチン代表が勝機を見出すには、やっぱり自分たちらしさを決勝の舞台でも発揮できるかだよな。グループリーグのポーランド戦や、準々決勝のオランダ戦で見せたような危険なプレーだったり、したたかさだったり、あの手この手を使ってフランス代表にペースを握らせないようにしたいよな。
メッシは全盛期ほどのスピードはなくなったけれど、過去のW杯と比べると、今大会は味方を上手に使っているよな。ここぞという勝負どころでは自分でタテに持ち運ぶけれど、それだけじゃない。メッシ以外の選手たちで得点機をつくれているからね。そこがアルゼンチン代表の怖さだよな。
とはいえ、サッカー解説者として結果を予想するなら、３-２の殴り合いになるかもしれないし、１-０の手堅い展開になる可能性も高いんだけど、どうしてもフランス代表が勝つ展開になる気がしちゃうんだよ。そこは選手個々の能力を比較しちゃうからさ。
たださ、今大会はそれだけでサッカーの勝敗が決まるわけじゃないことを何度も見せられたからね。それに過去のデータだって、あてにならないのが今大会の特徴でもあるしさ。
グループステージの初戦で負けたチームは決勝トーナメントに勝ち進めないと言われてきたけれど、今大会のアルゼンチン代表は初戦のサウジアラビア戦に負けてるからね。スペイン代表だって2010年南アフリカ大会で優勝したときは、グループステージの初戦で負けてる。そう考えたらアルゼンチン代表は優勝する目はあるんだよな。
つまるところ、このレベルは想像を超えた戦いだから、予想は不可能ってことだよ（笑）。ひとつ願いがあるとすれば、PK合戦での決着なんて見たくはないよな。メッシとエムバペの新旧のサッカー界のスーパースターの対決が、しっかり決着がつくことを願っているんだ。
波乱が数多く起きた大会だったけれど、最後の最後も眠気が吹っ飛ぶくらいにエキサイティングな試合になってくれることを期待しているよ！
