「味方のいいところを引き出していた現役時代のプレーと同じように、選手のいいところを伸ばす指導者になってほしい。今後の活躍に大いに期待したいね」 「味方のいいところを引き出していた現役時代のプレーと同じように、選手のいいところを伸ばす指導者になってほしい。今後の活躍に大いに期待したいね」

初めて彼のプレーを見たのは彼が高校生の時。僕は全国各地の高校を指導に訪れていて、鹿児島実業高校もその中の一校だった。

当時の鹿実は週に12回程度、体育館での練習を取り入れていたんだけど、スペースの限られる体育館ではボール扱いのうまいへたがもろにプレーに表れる。レベルの高い選手がたくさんいる鹿実にあっても、彼の技術の高さはずばぬけていたね。

日本代表のレジェンド、磐田のMF遠藤保仁(43歳)が現役を引退した。長く日本サッカーに貢献してくれて、まずは心からお疲れさまと言いたい。

JリーグではJ1歴代最多の672試合に出場。2005年にG大阪のJ1初優勝、08年のアジアチャンピオンズリーグ優勝、14年の国内3冠などに貢献。昨年はサポーターが選ぶJリーグ30周年のMVPにも選ばれた。

日本代表でも歴代最多の152試合出場。特に10年南アフリカWのデンマーク戦での直接FKは今も記憶に新しい。

個人的には、G大阪時代の08年に出場したクラブW杯準決勝、マンチェスター・ユナイテッド戦でファン・デル・サール相手に決めたPKも印象深い。いわゆる「コロコロPK」はちょっとしたブームになったよね。熱心なファン以外にも、技術ひとつでサッカーの魅力を伝えてくれた。なかなかできることじゃないよ。

26年も現役を続けられたのは、やっぱり高い技術、優れた判断力、そして大きなケガをしなかったことが大きいと思う。

運動量は決して少なくない。でも、むやみやたらと走り回るのではなく、ボールを動かし、味方を動かす効率的なスタイル。正確なキックを武器に、ボランチながらアシストにゴールと攻撃的な役割を果たした。もしJリーグにアシストのタイトルがあったら何度も獲得していたはずだ。

また、攻撃面のイメージが強いけど、現代サッカーのボランチらしく、守備時のボディコンタクトを怖がらず、激しい当たりも見せた。

遠藤といえば、マイペースでおっとりとした性格という印象も強いかもしれない。でも、それは彼の一面に過ぎない。

思い出すのは、G大阪がJ2に降格して迎えた13年の開幕前キャンプのこと。僕は当時のフロントに頼まれて選手たちの前で話をする機会があったんだけど、遠藤と今野(泰幸)というチーム内で一番実績のある日本代表のふたりが、最前列の真ん中に座って熱心に耳を傾けていた。話の内容どうこうよりも、若手に自分の姿勢を見せようとしたのだと思う。そういう熱さも持ち合わせているんだ。

彼の輝かしいキャリアの中で唯一残念なのは、海外クラブでのプレーを見られなかったことかな。ただ、僕が言うまでもなく、海外でも絶対通用したと思うし、むしろJリーグでプレーしていても日本代表の中心選手としてこれだけ活躍できるんだというのを見せてくれたのは素晴らしいよ。

すでに古巣のG大阪に戻って指導者の道を歩みはじめたわけだけど(トップチームのコーチに就任)、偉大な選手が偉大な指導者になるとは限らないし、選手時代とは違った難しさもあるだろう。

それでも、味方のいいところを引き出していた現役時代のプレーと同じように、選手のいいところを伸ばす指導者になってくれるといい。今後の活躍にも大いに期待したいね。

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