モルックブームの火付け役であるさらば青春の光、森田哲矢。右手に持っているのがモルック、左手に持っているのがスキットル モルックブームの火付け役であるさらば青春の光、森田哲矢。右手に持っているのがモルック、左手に持っているのがスキットル

北欧フィンランド発祥のスポーツ、モルックがいま密かなブームを巻き起こしているのをご存知だろうか。モルックというのは、点数の書かれたスキットルという棒を、モルックという棒を投げて倒して点数を競うチームスポーツ。このブームの火付け役は、お笑いコンビ・さらば青春の光の森田哲矢。競技を始めたばかりの彼が芸人仲間とチーム「キングオブモルック」を結成すると、すぐに東京大会で4位になり、そのまま日本代表となり世界大会へ出場した。

そんな森田が主催した「モルック森田カップ2024」が3月10日に行われると、大会参加選手約800人(240チーム)、観客総動員数は約2200人を記録。なぜここまでブームが過熱しているのか、森田本人を直撃した。(※モルックの正式ルールについてはhttps://molkky.jp/molkky/を参照)

***

◆きっかけはサンド富澤のすすめ

――「モルック森田カップ」の第2回が4年ぶりに開催されました。4年ぶりになったのはなぜでしょう?

森田 今年8月に函館でモルックの世界大会があるんですよ。自分たちは日本代表を名乗ってはいるんですけど、まだどの大会でも優勝したことがない無冠のチームで、優勝するために自分で大会を立ち上げました。だから「初心者大歓迎!」って言ってたんですけど、モルックガチ勢も来るんですもん(笑)。1回戦でいきなり引き分けました。

でも今、本当にモルック熱がすごくて、今日もこれだけの人が集まってくれるぐらい、みなさんがモルックをやってくれるようになったので。俺らがやり始めた5年前ぐらいは、たぶん世界で競技人口が1000人ぐらいだったと思うんですけど、今は日本だけで165万人以上やってるみたいですからね。


この日は出場者、観客合わせて約3000人が集結。大会の参加権は募集開始1分で即完売した この日は出場者、観客合わせて約3000人が集結。大会の参加権は募集開始1分で即完売した


――それはやっぱり森田さんの影響力?

森田 まあ、それもあるでしょうね(笑)。俺がテレビでやってるのを見て、やってくれるようになった人たちは多いと思います。今モルックの競技人口って、フィンランドを超えて日本が世界で1位なんじゃないかな、っていうくらいですね。全競技人口の5割くらいいってるんじゃないかな?

――そもそも、モルックという競技はサンドウィッチマンの富澤さんから紹介されたんですよね。

森田 そうです。番組で「趣味がないんです」っていう話をしたら、富澤さんに「じゃあモルックやれよ。前にロケでモルックっていうスポーツをやって面白かったから。お前それを趣味にしてみろよ」って言われて(笑)。いきなり「なんすかそれ?」ですよね。「木で木を倒すんだよ」みたいな(笑)。

で、今チームメイトでもあるカナイ(元タイーク)に調べてもらったら、日本モルック協会っていうのがあって、「なんか練習会やってますよ」って言われ。協会に連絡したらすぐに返信が来て、「練習会があるんで来てください」って言われて行ったんですよ。次、富澤さんに会う時のために行ってみるかって。おもんなかったらそれはそれで話のネタになるし。

ところがやってみたら、「え、ちょっと待って。これおもろない?」ってなって。その日は8人くらいしかいなかったんですけど、「じゃあ東京大会出ます!」とか言って、大会に出ることになり、そしたらそこで4位になっちゃったんですよね。

――すごい!

森田 で、「これって日本代表とかあるんですか?」って聞いたら、「ありますよ。今年は世界大会がフランスであります」と。「日本代表になる条件って何なんですか?」って聞いたら、「フランスまでの旅費がある人です」って言われたから、「じゃあ、旅費なんとかするんで日本代表にしてもらっていいですか?」って聞いたら、「いいですよ」って(笑)。あっという間に日本代表になりました(笑)。それで今、日本代表としてこうやって面白さを広めているんです。

「木で木を倒すだけ」とはいえ独特の点の数え方もあり戦略や技術も必要。この日、森田はバックスピンをかけるテクニックを見せていた 「木で木を倒すだけ」とはいえ独特の点の数え方もあり戦略や技術も必要。この日、森田はバックスピンをかけるテクニックを見せていた

しかし、始めたばかりのチームにキングオブモルックが1ゲーム取られる一幕も。誰でも楽しめて勝てるのがモルックの一番の醍醐味 しかし、始めたばかりのチームにキングオブモルックが1ゲーム取られる一幕も。誰でも楽しめて勝てるのがモルックの一番の醍醐味

◆老若男女が楽しめるスポーツ。吞みながらプレイも

――今日初めてゲームを見たんですけど、ただ棒を倒していくだけではなくて意外と戦略があるんですね。

森田 そう、結構奥が深いんです。どんどん戦況が変わっていくのが面白いというか。50点ちょうどになると上がれるので、例えば自分たちが40点までいってて、あと10点で上がれるっていう時、「10のピンを倒そうか?」「いや、10のピンは邪魔されてるから6と4を倒して上がろう」「今度は6を邪魔された。じゃあ3と7を倒そうか?」みたいな。邪魔をしたりされたりっていう駆け引きが楽しいんです。

――ちょっとカーリングみたいですね。勝つためのセオリーは?

森田 とりあえずミスをしないっていうのは大前提なんですけど、やっぱり空気感に飲まれないっていうのが大事で。やっぱり大会って独特の空気で、今日も幸か不幸かギャラリーがあれだけ見てくれて、意外とその空気に飲まれちゃうんですよ。今日も1試合目で結構飲まれてミス連発したので。

――本場のフィンランドだと結構ゆるい感じでやると聞いたんですけど、試合は真剣なんですね。

森田 そう、フィンランドだと皆さんビール飲みながら、普通に酔っ払いながらやるみたいな感じですね。僕らも練習では缶ビール飲みながらやったりもするんですけど、大会になると真剣になりますね。

でも、誰でもゆるくできるのがモルックの一番の魅力で。男女にハンデもないし、おじいさんおばあさんでも子供でもできるし、車いすの人もできる。計算さえできれば遊べるし、計算できない子供でも計算を覚えるのが知育になると思いますよ。

ある時、公園でやってたら、老人ホームで働いてるっていう職員の人が来て、「これボケ防止になりますね。買ってみます」とか言ってくれたりとか。モルック界のスーパースターはフィンランドのヤケっていう選手で、もうおじいちゃんだけどめちゃくちゃうまいんですよ。

――モルックのマナーとかってあるんですか?

森田 一応、倒れた棒をみんなで立てたり、何でも率先してやるやつが好かれるっていうのはあります。あんまやらんかったら、「あいつ全然動かへんな」って言われるだけですけど(笑)。ちょっと社会に似てますよね、ゴミを拾うとか、そういう基本的なことだけです。

――試合を見ていたら、モルックの投げ方がいろいろあったことに驚きました。

森田 最初の試合でやったのは「裏投げ」で、バックスピンをかけてるんですよ。連続して立ってるピンの手前だけを狙う時に、奥に倒れないようにスピンをかけて止めてました。

――次の試合では対戦相手の女の子に「縦で投げるといい」ってアドバイスしてましたよね。

森田 例えば横に3本並んでる時に真ん中の1本だけ抜く時とかに使いますね。でもね、全然難しい技術とかは要らなくて、練習すれば誰でも結構できるようになります。

難しい長距離ショットを決めたのはラブレターズの溜口佑太朗。歓声が沸き起こった 難しい長距離ショットを決めたのはラブレターズの溜口佑太朗。歓声が沸き起こった

――これからモルックを始めたい人はどうすればいいですか?

森田 Amazonに正規品のセットが売ってるので、まずはそれを買ってください。で、公園で試しにやってみてください。7000円くらいのセットで一生遊べますからね(笑)。

公園には意外とモルックをやってる人がいて、興味を持ってくれる人にはみんなウェルカムだと思うから、そこに混ぜてもらうのもいいし。俺らも公園でやってたら子供が「これ知ってる!」って言って一緒にやったりするんですよ。

今日の大会は人工芝のところでやったんですけど、本当は下が土の方がいい。世界大会も土の上でやってて、結構手前から転がしても当たるんです。

――強くなるために必要なことは?

森田 こないだ公園で会った学生で、まだ始めて2週間だという子に負けて。聞いたら2週間毎日練習してるらしくて、やっぱり時間があるヤツは強い! だからおじいさんが強いんですよ!(笑)

――「森田スペシャル」みたいな技はないんですか?

森田 まだないですけど(笑)、でもモルックってそういうオリジナルの技が作れるくらい研究の余白がめちゃくちゃあるスポーツだと思いますよ。だからもう研究してるやつはたくさんいると思います。

――最後に、森田さんがモルックで目指すところは?

森田 まあ、日本代表である以上は世界一を取りたいなと(笑)。今年、函館にフィンランドを始め各国からたくさんチームが来るんで、そこで世界一を目指したいなと思います。
でも旅費さえあれば誰でも日本代表を名乗れますからね! 誰でも日の丸を背負える。モルックのそういうところが、人を引き付けてどんどん広まっていく一番の魅力だと思います。

***

●森田哲矢(TETSUYA MORITA) 
お笑いコンビ・さらば青春の光のツッコミ担当。TV番組への出演や、チャンネル登録者数116万人のYouTubeなど、活躍は多岐にわたる。みなみかわ、カナイとチーム「キングオブモルック」を結成し、モルック日本代表(世界大会ベスト8)となる。現在は溜口佑太朗(ラブレターズ)を加えた4名で活動。日本モルック協会公認モルックアンバサダー。 

酒井優考

酒井優考さかい・まさたか

週刊少年ジャンプのライター、音楽ナタリーの記者、タワーレコード「bounce」「TOWER PLUS」「Mikiki」の編集者などを経て、現在はフリーのライター・編集者。

酒井優考の記事一覧