大学投手のドラフトの目玉、法政大の篠木。最速157キロのストレートと多彩な変化球でチームを8季ぶりの優勝に導けるか 大学投手のドラフトの目玉、法政大の篠木。最速157キロのストレートと多彩な変化球でチームを8季ぶりの優勝に導けるか

東京六大学野球の春季リーグ戦が4月13日に開幕。第1週は東京大を下した昨秋覇者の慶応大と、立教大を振り切った早稲田大がそれぞれ勝ち点を挙げた。

今春のリーグ戦では、今年2月に右肩甲骨を骨折したものの、秋のプロ野球ドラフト会議で複数球団からの1位指名が濃厚とみられている宗山 塁(明治大)や、清原和博氏の長男で、東京大との2試合では4番を務めた清原正吾(慶応大)といった野手たちに大きな注目が集まっている。

しかし一方で、彼らと対戦する各大学の投手たちも負けじと闘志を燃やしている。今回は、リーグ優勝を目指すとともに、ドラフトに向けて勝負のシーズンを迎えた東京六大学の4年生投手6人を紹介したい。

最注目は、今年1月に大島公一新監督が就任した法政大の右腕。「8季ぶりのリーグ優勝」と「複数球団からのドラフト1位」という大きな目標を掲げる篠木健太郎だ。

最速157キロのストレートと、スライダーをはじめとする多彩な変化球を武器に、2年の春からエースナンバーの18を背負う。昨春は最優秀防御率(0.68)のタイトルを獲得したが、昨秋のリーグ戦では右肩疲労の影響で戦線離脱を強いられ、チームも4位に沈んだ。

昨年末まで投げ込みを封印し、フォームの見直しやトレーニングに力を注いだという篠木は、新たにチームに加わった髙村祐助監督に教わったという「シュート気味に落ちるフォーク」も習得。最高球速160キロへの到達と、三振を奪いながら勝てる投手への進化を目指し、大学ラストイヤーに挑む。

その篠木と木更津総合高時代からチームメイトで、ソフトバンクの吉鶴憲治コーチを父に持つ左腕・吉鶴翔瑛は、篠木と共に法政大の2大エースとしての活躍が期待されている。

最速151キロ、内角を突くストレートを操りながら、スライダーやツーシーム、チェンジアップなどの変化球を軸に投球を組み立てていく。しばらくはリリーフとしての登板が中心だったが、昨秋のリーグ戦では先発として起用されて防御率3位(1.87)と、篠木不在の投手陣を支えた。

新たな可能性を感じさせた吉鶴は、平均球速の向上を課題に掲げるほか、新たにスプリットの習得を目指している。個人としてはドラフト1位指名も見据え、学生生活の最終年に悲願のリーグ優勝をつかみ取りたいところ。篠木&吉鶴のパフォーマンスがチーム浮沈のカギとなる。

昨年の侍ジャパン大学日本代表の紅白戦でも2回無失点と、存在感を示した明治大の浅利。今リーグでさらに評価を高めたい 昨年の侍ジャパン大学日本代表の紅白戦でも2回無失点と、存在感を示した明治大の浅利。今リーグでさらに評価を高めたい

続いて、昨年のドラフトで3人が指名された明治大も、左右のふたりの投手が注目を集めている。そのひとりが、昨秋に侍ジャパン大学代表候補に選出された右腕、浅利太門だ。

大阪の興国高から明治大に進み、満を持して昨春のリーグ戦で公式戦デビューを果たした。186㎝の長身から繰り出される最速154キロの速球と、落差のあるチェンジアップやカットボールで三振を量産し、リリーフとして存在感を示している。

まだ粗削りな部分はあるものの、投手としてのスケールの大きさは申し分ない。3月4日のセガサミーとのオープン戦では先発として起用され、3回を投げて4安打1失点。ドラフト上位指名に向けて意気込む浅利は、長いイニングを投げるためのモデルチェンジに試行錯誤を重ねている。

もうひとりの注目投手は、柳 裕也(中日)、森下暢仁(広島)ら歴代エースがつけた背番号11を託された藤江星河。膝を高く上げる個性的な2段モーションで最速147キロの速球を投げ、チェンジアップなどの変化球、高い制球力をも持ち合わせる左腕だ。期待度は高いが、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。

高校3年の春には大阪桐蔭高のエースとして2020年のセンバツ出場をつかみ取ったものの、コロナ禍の影響で大会は中止に。大学進学後は、1年春からベンチ入りを果たして初勝利も挙げたが、2年春は肘痛の影響で登板ゼロ。

優勝に貢献した昨春のリーグでも、チーム唯一の黒星(4月24日・対慶応大戦)を喫するなど、悔しさを味わった。さまざまな試練を乗り越えて最終学年を迎えた藤江は、エースにふさわしい投球で大輪の花を咲かせることができるか。

王 貞治氏を大叔父に持つ早稲田大の鹿田。身長187㎝と恵まれた体、ポテンシャルを最大限に発揮してプロへの道を開きたい 王 貞治氏を大叔父に持つ早稲田大の鹿田。身長187㎝と恵まれた体、ポテンシャルを最大限に発揮してプロへの道を開きたい

そのほか、チームのエースナンバー11を3年生の伊藤 樹に託した早稲田大では、ソフトバンクの王 貞治球団会長を大叔父に持つ鹿田泰生が4年目の春を迎えた。

身長187㎝から投げ下ろす最速149キロの速球と、縦のスライダーをはじめとする4種類の変化球を武器にリリーフとして起用されてきたが、昨年4月17日の東京大戦では先発として初勝利を挙げた。

今リーグの立教大戦ではベンチ入りを果たせなかったものの、ポテンシャルは十分。王 貞治氏に憧れ、同じ早稲田実業出身の右腕は、学生生活をどのような形で締めくくるのか。

立教大は、大越 基氏(元ダイエー)を父に持つ3年の大越怜の初勝利が話題だが、昨秋まで33試合に登板した4年のリリーフ右腕、沖 政宗がその数字を伸ばしている。

福島県の磐城高では「21世紀枠」で46年ぶりのセンバツ出場に貢献。立教大では、球速こそ140キロ台ながら、高い制球力と2種類のスライダーを中心とした変化球、巧みな投球術でチームの投手陣を支えてきた。

寮で同部屋だった先輩の荘司康誠(楽天)から「長期的な視野を持つことの大切さを学んだ」という沖。4月15日の早稲田大戦では、決勝点につながる2失点を喫して負け投手となったが、17年春以来のリーグ優勝に向け、今春もフル回転の投球が期待される。

4月20日には、第1週に試合がなかった明治大と法政大も登場。4年生たちの、学生最後の年にかける思いがこもったプレー、ドラフト戦線の行方から目が離せない。