トヨタ bZ4X bZ4Xの試作モデルの試乗会は、千葉県袖ケ浦市にあるレース場「袖ヶ浦フォレストレースウェイ」で開催された

今年半ばに発売予定のトヨタとスバルが共同開発したEVの試乗会が行なわれた。両兄弟車の違いは? 開発段階から取材を続ける自動車研究家の山本シンヤ氏が解説する。

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■兄弟車なのに味が全然違う!

トヨタ初となるEV専用モデルがbZ4Xだ。今年半ばに発売予定で、トヨタが大放出するEVの先陣を切る!

山本 トヨタとスバルが共同開発したEVに試乗しました。

――率直な感想は?

山本 トヨタは千葉県のサーキットで試乗会が行なわれました。ズバリ、内燃機関から乗り換えても違和感のない乗り味だと感じました。

EVは鋭い加速が自慢だったりしますが、bZ4Xはあくまでもドライバーのペダル操作に合わせて加速、つまり必要なだけ力強さが増していく印象でしたね。もちろん、遅いわけではなくスペック以上の速さは備えられています。

ボンネットの中には制御機器がギッチリと搭載されている。日本仕様の走行可能距離は、前輪駆動で500km前後

インパネの中央には、最新のインフォテインメントシステムを搭載する。メーターはフードがなく、独特な仕上がりに

――つまり、内燃機関のようなフィーリングだったと?

山本 そうですね。正直、今回はサーキットでの試乗だったので、乗り心地の断定はできませんが、まるで背の高いトヨタのプレミアムセダンに乗っているような印象を受けました。

つけ加えると、ヨソのEVはインバーターの音が気になったりして意外とにぎやかなのですが、bZ4Xはしっかり音が抑え込まれているので静粛性はかなり高いレベルでした。

――一部専門家からは、「EVにしては見た目がフツーすぎる」と指摘されています。

山本 トヨタが、「EVの普及を目指す!」と言い切って開発したモデルがbZ4Xです。私は今どきのユーザーが求める絶妙なラインを狙ってきたなと。先進的すぎず、だからといって決して保守的ではない。まさに世界的な売れ線だと思いますけどね。

スバル ソルテラ 2月の群馬県はご覧のような大雪だったが、電動AWDのおかげで、「不安になる場面は一切なかったね」と山本氏

――一方、スバルのソルテラですが、トヨタのbZ4Xとの違いは?

山本 基本的に兄弟車ですが、違いはもちろんあります。一番違うのは走りの味つけ。トヨタが背の高いプレミアムセダンなら、スバルは目線の高いスポーツカー的な感じでした。

実はソルテラのみに設定されるドライブモードの中から「スポーツ」を選ぶと、レスポンスおよび加速度が変化し、力強い加速力を味わうことができるんです。

ボディーサイズは全長4690mm×全幅1860mm×全高1650mm。ソルテラのリアのコンビランプのデザインはC字形

――ちなみにソルテラの試乗はどこで?

山本 群馬県利根郡みなかみ町にある「群馬サイクルスポーツセンター」という場所で、いきなり豪雪地帯での試乗という実にスバルらしい選択でしたね。

ステアリングには、回生ブレーキの強弱をコントロールできるシフトパドルがついている。この装備はソルテラのみ

――どういうこと?

山本 長年、スバルはAWDの技術を磨き続けてきました。ただ、いきなり雪道で新型の試乗をするのは前代未聞。相当自信があるなと。

――なるほど。

山本 実際、これまで積み重ねてきた知見が、ソルテラに搭載された前後のモーターを独立制御する電動AWDでも生かされていました。ほかのスバル車と同じく、四輪が大地をしっかりつかむ安心感がありましたからね。

積載量はスバルのフォレスター級を誇る。ちなみにラゲッジスペースにはゴルフバッグ4個は搭載できるという

――ちなみに欧州を席巻している韓国EV、ヒョンデのアイオニック5が、bZ4Xとソルテラより優れているという声が専門家から出ています。

山本 私もアイオニック5を試乗しています。確かに韓国メーカーとはいえ、欧州の人が造っているので、基本性能が高いレベルなのは間違いありません。ただし、「それがヒョンデの味なのか?」と問われると、私は首をかしげざるをえません。

そういう意味ではbZ4Xとソルテラにはトヨタの味、スバルの味がある。では、アイオニック5はどうか? いいクルマですが、良くも悪くも"天然水" のような存在なんですよね。

●山本シンヤ 
自動車研究家。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』

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