トヨタ初となる量産EV「bZ4X」は5月12日発売。国内の個人向けは定額制サービス「キント」で提供。法人向けはリースで販売する
トヨタは5月12日から新型EV「bZ4X」を発売すると発表した。法人はリース、個人はサブスクを通じて提供するという。法人はともかく、なぜ個人利用はサブスのみ? 開発初期から粘っこく取材を続ける自動車研究家の山本シンヤ氏に聞いた。

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山本 トヨタは4月12日、国内で新型EV「bZ4X」を5月12日(木)に発売すると発表しました。

ーーついに発売ですか! ディーラーには予約殺到?

山本 法人向けはリース、個人向けはトヨタのサブス「KINTO(キント)」での提供です。

ーーえっ、なんで購入できないんスか?

山本 理由はふたつあります。ひとつは電池の劣化への危惧です。電池をトヨタが管理し、再利用やリサイクルに取り組みやすくしようと。ディーラーで売り切ると使用済みの電池を回収しにくくなるためです。

ーーもうひとつは?

山本 残価の低下による顧客の不安の解消です。要するに乗り換えの際にEVは下取り価格が「値崩れ」する恐れがあると。サブスクなら利用期間が終わればクルマを返却するので、「下取り価格への不安は存在しない」というのがトヨタの考えです。

――ちなみにリースの価格は?

山本 リース販売はFWDが600万円、4WDが650万円です。5月12日から3000台分の受注を始め、初年度は5000台の生産、販売を予定しています。キントの月額は5月2日(月)に発表予定ですね。

ーーbZ4Xを購入できない、この点を山本さんはどうご覧になっています?

山本 僕は断固反対です。トヨタが「EVの普及を目指す!」と言い切って開発したモデル、それがbZ4Xです。その仕上がりの高さは僕も評価しています。さらに「トヨタの安心・安全なEVだから買おう」というお客さんも多いはず。だからこそ、キントのみの販売は残念でなりませんね。

ーーちなみにトヨタと共同開発したスバルのEV「ソルテラ」もサブスク販売なんスか?

山本 5月12日に注文の受付を開始します。つまり、フツーにディーラーで買えます。価格は594万~682万円で、初年度は月販150台を予定しています。

ーースバルのソルテラは買えるんだ!

山本 そうです。bZ4Xとソルテラは兄弟車なのにおかしいと思いませんか? トヨタは「キント販売はわれわれの挑戦のひとつ」と言っていますが、僕にしてみれば相当な「守り」ですよ。だだ、勘違いしてほしくないのは、キントがダメという話ではなくて、「個人向けがキントのみ」というのがダメ。

――山本さん、厳しいスね。

山本 もう少し言うと、トヨタ初の量産EVの買い方には、「選択肢」がほしかったなと。これまでEVの普及に向けてさまざまな要因......特にバッテリーに関する問題をトヨタはひとつひとつ丁寧に潰してきた。開発の初期段階から取材しているので、僕はその姿を見てきた。せめて、「トヨタのEVはバッテリーの劣化の心配はありません。安心して買ってださい」と言ってほしかった。それが僕の本音ですよ。

★山本シンヤ(やまもと・しんや)

自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営