第1位 ホンダ「N‐BOX」価格:144万8700~225万2800円、納期:1.5~2ヵ月、値引き目標額:10万円、リセールバリュー:Aランク。昨年度、国内で最も売れたクルマはホンダの軽自動車N‐BOXだった。販売台数は19万1534台。首位に輝いたのは2019年以来の2年ぶりである

新車が深刻な品薄状態で納車1年待ちもザラ。そんななかで、早く買えて、しかもお得なクルマはないものか? そこで、自動車専門誌の元編集長で、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が足で稼いだ情報を一挙大放出!

■半導体以外のパーツも全然ない

――4月は新生活がスタートするため、毎年、クルマの購入を検討する人が増える季節です。しかし、新型コロナの影響で新車の納期が延びています。やっぱし原因は半導体不足なんスかね?

渡辺 複数の国産自動車メーカーの開発者に聞きましたが、実はそんな単純な話ではありません。半導体以外にも電気信号を伝えたりする役目のワイヤーハーネスや、複数のパーツを組み合わせたユニットなど、さまざまなパーツの供給が滞っているようです。

しかも、新型コロナの影響で、「不意にパーツの納入が遅れるため、生産計画が立てにくい状況が続いている」と。

――えっと、ワイヤーハーネスってなんスか?

渡辺 ワイヤーハーネスというのは、クルマに搭載される機器を結ぶ電線の束ですね。人間でいうと、血管みたいなものです。これがないと、どんなに高性能な機器も能力をフルに発揮できません。

――半導体以外にもクルマにとって重要なパーツの供給が滞っていると。

渡辺 生産に必要な材料や部品が手に入らず、自動車メーカーによっては代替品の活用を始めています。逆に言えば代替品を活用できるクルマの納期は早くなりますよね。

――ふむふむ。現在、納期が長いクルマは?

渡辺 トヨタの販売店に聞いたら、ランクル、RAV4、プリウス、カローラなど、約15車種の生産が滞っており、受注の中止も起きているそうです。通常時の納期は1、2ヵ月ですが、現在は2ヵ月なら短いほうで、4ヵ月以上の車種も多い。関係者は「部品調達の関係で納期の変動が激しい」とこぼしていました。

――ほかに納期が長いのは? 

渡辺 昨年フルモデルチェンジしたホンダのヴェゼルですね。発売直後から納期が遅れ、主力モデルのe:HEV Zの納期は約1年で、PLaYは受注を中止しています。フィットの納期も4~6ヵ月と長い。それからダイハツのドル箱であるロッキーの納車も約6ヵ月です。しかも、ハイブリッドモデルになると納期はさらに延びるそうです。

■新車の納期を短くする方法

――新車の納期が長いため、中古車が人気を集めています。

渡辺 新車の納期が長引いている関係で、下取り車が入荷せず、中古車の流通量は減っています。ロシアへの経済制裁の関係で、中古車輸出が減少したというニュースもありますが、中古車業界の関係者は、「国内の中古車不足は解消されていません。

実際、中古車需要が流通台数を上回り、中古車オークションでは、平均成約価格がコロナ前よりも20%以上高まっていますよ」とのこと。価格高騰は続きそうです。

――では今買うなら、新車と中古車どっちがよい?

渡辺 新車と中古車の選択で大切になるのは損得勘定です。中古車の価格が安いのは当然ですが、複数の業者を経て流通しています。つまり、複数の業者の利益が中古車価格には上乗せされています。

――リセール面は?

渡辺 仮に製造されて5年を経過した中古車を購入し、3年間使用した場合、当たり前ですが、売却時には8年落ちになってしまう。中古車市場における人気が際立って高い車種を除けば、中古車のリセールは期待できません。

もちろん、全部の中古車に当てはまるわけではありませんが、事故歴の有無、整備面、保証面を考慮すると、私は中古車を推せませんね。

――でも、新車は納期が長いんスよね?

渡辺 すべての新車の納期が遅延しているわけではありません。契約から即納車できる車種はあまりありませんが、納期を短くする手はあります。

例えばディーラーオプションのカーナビの生産が遅れているなら、未装着の状態で納車し、カーナビが入荷した段階で取りつければいい。

――なるほど。

渡辺 また、大量に売られている軽自動車やコンパクトカーなら、数は多くありませんが在庫車も存在する。グレードやボディカラーで妥協できるなら、在庫車を選ぶ方法もあります。在庫車の納期は3週間前後と短く、ある程度の値引きも期待できます。

――なぜ在庫車は値引きが期待できるんスか?

渡辺 在庫車の保管にはコストがかかります。そのため販売会社は、「なるべく早く在庫車は売却してしまいたい」というのが本音です。

■納期が早い"絶対王者"

――今回は、そんななかで、渡辺さんが販売店を回って決定した激推しの新車を挙げてもらいました。

渡辺 はい。機能や装備の割に価格が安く、車両価格の上限も200万円程度で納期の短い5車種をご紹介します。

――1位は"絶対王者"のホンダ・N‐BOX!

渡辺 21年度はトヨタのヤリスシリーズを抜き、国内販売トップの座を奪還。今年3月はなんと2万5529台(!)を売り、3ヵ月連続で国内の新車販売トップに輝きました。

昨年末のマイチェンで商品力を高めていますし、納期も短い。販売店からは、「今なら在庫車も選べます」なんて声も。もちろん、リセールは文句ナシのAランク。買って損ナシの軽自動車です。

――どんどんお願いします!

渡辺 2位は日産のノート。e-POWER専用車のため値は張りますが、Sグレードを狙えばディーラーオプションのカーナビを装着しても、220万円程度で手に入る。

第2位 日産「ノート」価格:202万9500~288万7500円、納期:2~3ヵ月、値引き目標額:14万円、リセールバリュー:Aランク。パワートレインはe-POWERのみ。先代モデルよりもe-POWERは洗練され、静粛性、パワーも向上させている。上質感の高い乗り味が魅力

――続く3位は?

渡辺 スズキのアルトで決まりです。立体駐車場が使える全高に抑えた低価格の軽自動車ですが、後席は意外に広い。身長170㎝の大人4名が乗車しても、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシふたつ半の余裕がある。ファミリーカーとしてもフツーに使える超絶お買い得なクルマです。

第3位 スズキ「アルト」価格:94万3800~137万9400円、納期:2~3ヵ月、値引き目標額:4万円、リセールバリュー:Bランク。初代は1979年に誕生。累計は526万台を誇るアルト。9代目となる新型は昨年12月にデビュー。ベースモデルの価格は圧巻の94万3800円!

――4位もスズキ!

渡辺 元祖国民車のワゴンRを推したいですね。全高が1600㎜を超える軽自動車なので車内は広く、後席を畳むと広い荷室になる。とにかく実用性に優れています。

第4位 スズキ「ワゴンR」価格:109万8900~177万6500円、納期:2~3ヵ月、値引き目標額:11万円、リセールバリュー:Bランク。初代は1993年にデビュー。以来、軽自動車の定番ハイトワゴンとして高い人気を誇る。装備、燃費、走りも文句ナシ。もちろん、リセールも安定している

――そして5位は?

渡辺 マツダのマツダ2です。特にXDプロアクティブは、国産コンパクトカーで唯一のクリーンディーゼルターボを搭載しており、実用回転域の駆動力が高く、燃料代はハイブリッド並みに安い。内装は上質で走行安定性も優れています。リセールはCランクとやや劣りますが、長く乗るならコスパ最強の一台です。

第5位 マツダ「マツダ2」価格:145万9150~271万1500円、納期:2~3ヵ月、値引き目標額:17万円、リセールバリュー:Cランク。2019年のマイチェンでデミオからマツダ2へ車名を変更。骨格はデミオ時代と同じだが、マイチェンで内外装の質感を高めた。ディーゼルモデルも魅力