累計販売台数は215万台以上を誇る〝シン・国民車〟のホンダ「N‐BOX」。しかし、5月の新車販売では大きく順位を落とした。価格は144万8700~225万2800円

6月6日に発表された5月の新車販売総合ランキングで、5ヵ月連続トップに輝いていたホンダの軽自動車「N‐BOX(エヌボックス)」が王座陥落! この大波乱の背景には何が? 自動車専門誌『月刊クルマ選び』の元編集長で、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

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渡辺 日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会が5月の新車販売ランキングを発表しましたが、半導体から塗料まで、ありとあらゆるパーツや材料の供給不足がランキングに影を落としましたね。

――具体的には?

渡辺 5月の新車販売台数のトップはトヨタのヤリスシリーズで、5ヵ月ぶりに返り咲きました。1万2400台を登録しましたね。

――ほおほお。2位は?

渡辺 9424台のトヨタのカローラシリーズで、3位は8670台のスズキスペーシアという結果になりました。

――ん? 先月まで5ヵ月連続トップだったホンダのN‐BOXは?

渡辺 先月、国内販売の1位だったN‐BOXは、首位陥落です。8631台を届け出して4位でした。軽自動車では2位ですけどね。

――なぜ"絶対王者"のN‐BOXは、一気に4位まで順位を下げた?

渡辺 納期の遅延が一番の原因ですね。最近までN‐BOXの納期は約3ヵ月で推移していましたが、現在販売店によると約半年を要しています。そのため、N‐BOXの納車は滞り、5月の届け出台数は前年の61%でした。その結果、首位陥落となりました。

――今後、N‐BOXはどうなっちゃうんスか?

渡辺 N‐BOXが4位に滑り落ちた理由は、納期遅れによるものです。決して人気の低下が原因ではありません。要するに生産が低迷して届け出台数が減っただけ。逆に言えば納車待ちの台数は確実に増えています。今後、材料やパーツの供給不足が解消され、届け出台数が従来以上に急増すれば、2位に大差を付けて首位に返り咲く可能性は十分ありえます。

――ふむふむ。渡辺さん、大波乱の5月の新車販売を分析してください。

渡辺 5月の新車販売台数は、前年同月比18・1%減の26万1433台で低調が続いています。ちなみにこの数字は11ヵ月連続の前年割れです。

――原因は新型コロナウイルスとロシアによるウクライナ侵攻の影響スか?

渡辺 はい、そうです。世界的に半導体を始めとする部品の調達が難しい情勢になっているためですね。これらの状況を受け、国内の自動車メーカーは、工場の停止や生産調整を余儀なくされています。自動車メーカーにとっては苦難が重なり、実に頭の痛い状態です。

――では、ボーナス商戦を迎える6月以降の新車販売はどうなるの?

渡辺 依然として先が見通せない状況が続くと思います。半導体やパーツの供給不足による生産調整は今後も続くでしょうし、ウクライナ情勢による原材料や原油価格の急騰も大きな懸念材料になっています。

――ボーナス商戦どころではないと?

渡辺 そのとおりです。正直、納期遅延の原因が新型コロナウイルスやウクライナ情勢ですから、今後はまったく予想できません。ただし、納期遅れにより、すでに半年先の納車予定まで決まっていることを考えると、納期の遅延が短期間で終息することは考えにくいですね。新車を買うのも大変な時代になりました。


☆渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務める。著書に『運転事故の定石』(講談社)など。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員