鈴鹿サーキットで最速ラップタイムを更新したホンダの新型シビックタイプRの試作車。最速バトルを制すべく、すでにドイツのニュルに乗り込んでいるという
今夏登場予定の新型シビックタイプRは、11代目シビックをベースとするホンダが誇る超ハイパフォーマンスモデルだ。今年4月には鈴鹿サーキットでFF最速タイムを叩き出している。この速さは本物なの? 自動車研究家の山本シンヤ氏が特濃解説する。

山本 今夏、正式発表されるとウワサのホンダの新型シビックタイプRのプロトタイプが、鈴鹿サーキット国際レーシングコースで2分23秒120のレコードを叩き出し、FFの市販車では最速となるタイムを叩き出しました。

――ほお!

山本 そして、すでにタイムアタックの聖地と呼ばれるドイツのサーキット「ニュルブルクリンク」へプロトタイプを持ち込んでいます。実はニュルのFF最速バトルは超激アツなんですよ!

――具体的には?

山本 実はホンダとルノーのニュルFF最速「因縁の対決」は10年近く続いています。この間にフォードやフォルクスワーゲン、セアトなども参入し、戦いはさらに白熱、記録が次々と塗り替えられています。直近では2014年にルノーのメガーヌR.S.トロフィーR(先代)がトップに立つと、2016年にはフォルクスワーゲンのゴルフⅦ GTIクラブスポーツSが記録を抜き、2017年にホンダのシビックタイプR(現行)が王座に。

ーーふむふむ。

山本 しかし、2019年にメガーヌR.S.トロフィーR(現行)が7分40秒1というレコードタイムを叩き出し、現在もFF最速市販車のキングとして君臨しています。

――なるほど。ちなみに新型シビックタイプRのスペックを予想すると?

山本 基本的には現行モデルの進化版といった感じです。2リッター直噴VTECターボに6速MT、3本出しのテールパイプも継承しています。当然、昨今の厳しい規制にもしっかり対応しているのは言うまでもありません。

――シャシーはどうでしょう?

山本 こちらも現行のグローバルプラットフォームの進化版ですが、今回はここがポイントとなります。

ーーどういうこと?

山本 これまでホンダは「過去を振り返らない」という仕事が多く、武器を100%使いこなせたかどうかを検証せずに刷新する......という繰り返しでした。しかし、今回は違います。新型は〝自分自身を超える〟が目標ですので、相当磨き込まれているでしょう。

ちなみに、開発責任者である柿沼秀樹氏はスーパー耐久シリーズに自己啓発活動「Honda R&D challenge」として参戦し、ここで得た知見やノウハウも新型に注ぎ込まれているはずです。

――ズバリ、ニュルFF最速奪還はある?

山本 これはYESです。以前、柿沼氏に取材した際に、「昨年の暮れにドイツ・ニュルブルクリンクでテストを行なった」と聞きました。そのときの印象を聞くと、「走らせてみて、ニヤニヤしました」と胸を張っていました。つまり、タイム更新への感触を得たのでしょう。新型シビックタイプRの登場で、久々に熱いホンダが見られるのではないかと思っています。

――そんな新型シビックタイプRのお値段を予想してください。

山本 現行モデルに対して微増、うーん、恐らく500万円前後じゃないかと。


山本シンヤ
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』を運営