MotoGPアラゴンGP決勝レース1周目にマルク・マルケス選手と接触し、リタイアとなったヤマハのファビオ・クアルタラロ。「2年連続チャンピオンに向け、日本GPは落とせない。テクニカルコースでヤマハのマシンが優勢」と青木氏
9月25日、3年ぶりの開催となる世界最高峰のオートバイレース「MotoGP」の日本グランプリ(栃木県・モビリティリゾートもてぎ)決勝が行なわれる。長年、取材を続けるモーターサイクルジャーナリストの青木タカオ氏がその見所を解説する。

青木 ついに3年ぶりの日本開催です!

――世界最高峰のオートバイレース「MotoGP」のことですね?

青木 そのとおり。最高峰であるMotoGPクラスのマシンが積むエンジンの排気量は1000ccで、最高時速は350キロを超える超ハイスピードレースに。コーナリング時には車体が直立した状態から最大66度も寝かし込まれ、なんと地面からスレスレの24度しかない状態で曲がります。だから、ライダーのイン側の膝が路面を擦るのは当たり前で、最近では肘も路面に擦りつけながら旋回していく姿が見られ、その中でのバトルは迫力満点、度肝を抜かされますよ!

――ほほぉー。

青木 2022年シーズンは世界17カ国、全21戦が行われますが、ついに今月23日(決勝は25日)、栃木県にある「モビリティリゾートもてぎ」で第16戦日本グランプリが開催されます!!

――これまで、新型コロナの影響で開催が見送られてきたそうですね?

青木 えぇ、ですから、ファン待望の開催だと思いますね。

――ズバリ、見所は?

青木 残り5戦を残し、熾烈になってきたチャンピオン争い。2021年シーズン王者に輝いたファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)が今年もランキングトップですが、前のレース、第15戦アラゴンGP(9月19日スペイン)の決勝で転倒リタイアし、2位フランチェスコ・バニャイア(ドゥカティ)に10ポイント差、3位アレイシ・エスパルガロ(アプリリア)に迫られています。クアルタラロは海外メディアに「加速とブレーキを繰り返すもてぎは好都合」とコメント。ノーポイントで終わった前戦の雪辱を果たすか、トップ集団のバトルから目が離せません。

週プレNEWSでも開幕前に直撃インタビューの様子を伝えた、侍ライダーの中上貴晶選手。そのとき、「サーキットでレース中もファンの声援は届いている」と教えてくれたので、会場のファンは熱い声を飛ばすべし
――日本人ライダーは?

青木 最高峰MotoGPクラスにフル参戦する唯一の日本人が中上貴晶選手です。今月13日に、ホンダ・レーシング(HRC)と来季以降の契約に合意したばかり。中上は2007年に125㏄(現モト3)クラスからグランプリデビューし、モト2では2勝をマーク。18年に最高峰クラスのモトGPに昇格し、今季は決勝最上位が7位。ランキング16位にいます。

――中上選手の意気込みは?

青木 中上は「日本GPは3年ぶりに開催されます。日本のファンの皆さまの前で走れることがとても楽しみです」とコメントしています。地元ニッポンで一矢報いてほしいところですが、コンディションが万全か......正直不安が残りますね。

――というのは?

青木 アラゴンGPで転倒を喫した際に負傷し、右手薬指と小指の腱の手術を受けたことが明らかになっていますので......。

長島哲太選手は2021年からはHRCのテストライダーを務めている。今年の鈴鹿8耐の予選ではコースレコードを更新する2分4秒934でポールポジションをゲットするなど大活躍。ホンダを8年ぶり通算28回目の優勝に導いた立役者だ
――元気な姿で走ってくれることを祈るばかりですが、ほかにも注目選手が目白押しとか?

青木 今年8月の鈴鹿8時間耐久レース(鈴鹿サーキット)で初優勝を飾った長島哲太選手がホンダから、全日本ロードレース選手権スーパーバイクレース参戦中の津田拓也選手がスズキからワイルドカードでスポット参戦します。

――ワイルドカードとは?

青木 世界各国でおこなわれるMotoGPでは、シーズンにフル参戦する選手に加え、開催国のライダーによる特別参戦枠があり、それがワイルドカードと呼ばれます。

――チャンスを手に入れたと?

青木 はい。長島哲太選手はMoto2に通算8シーズン参戦した経験があり、2020年の開幕戦カタールGPで初優勝も飾っています。

私の直撃に「子供の頃から憧れてきた夢の舞台がMotoGPです。ワイルドカードで1戦だけですが、いけるところまでいこうと思っています。もちろん、チャンスをくれたHRCにも結果で応えたいですね」とコメント。

一方、スズキの津田拓也選手はMotoGPマシンの開発テストを担当しており、こちらは「これまで自分が取り組んできたことの集大成。全力で走りますので、熱い応援をよろしくお願いします」とコメントしています。

最高峰クラスにスポット参戦で挑むふたりの侍ライダーが、いきなり表彰台、優勝なんてこともあるのではないかと私は見ています。

2022年のセパンテストに参加した#85津田選手(スズキ)。今季限りでMotoGP撤退を表明しているスズキにとっては、最後の日本グランプリとなる。バイクファンはその勇姿を目に焼きつけよう
――モト2クラスでも注目の選手が?

青木 21歳の小椋藍ですね。2021年から「出光ホンダチームアジア」のライダーとしてモト2にフル参戦すると八面六臂の大活躍。1年目で初の表彰台に。今シーズンはここまで2勝をあげています。年間ポイントランキングもトップと7ポイント差。若き侍ライダー・小椋藍は要チェックですね。

――青木さん、当日は?

青木 現地で取材予定です。時速350キロのマシンに乗って争う生身のライダーのギリギリのバトルは、いずれのクラスも最後の最後まで目が離せませんよ!!

青木タカオ
モーターサイクルジャーナリスト。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み[第4版]』(秀和システム)など。『ウィズハーレー』(内外出版社)編集長。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』を運営