レクサス RX 今年6月1日に初公開されて大きな話題を呼んだ5代目となる、レクサス自慢のSUV「RX」。新型は4種類のパワーユニットを用意しているレクサス RX 今年6月1日に初公開されて大きな話題を呼んだ5代目となる、レクサス自慢のSUV「RX」。新型は4種類のパワーユニットを用意している

7年ぶりのフルチェンで話題を集めているレクサスのRX。新型の実力はどんなものか? アメリカで開催された国際試乗会に参加し、徹底取材してきた自動車研究家の山本シンヤ氏が濃厚解説する。

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■豊田社長が告げた「RXを壊してくれ」

右が初代RX、左が5代目となる新型のRX。今回、山本氏(中央)は初代と5代目を徹底比較したという右が初代RX、左が5代目となる新型のRX。今回、山本氏(中央)は初代と5代目を徹底比較したという

――アメリカでレクサスの新型を試乗したそうですね!

山本 ええ。7年ぶりのフルチェンで、5代目に進化した新型RXを試乗しました。

――RXってどんなクルマ?

山本 1998年にデビューしたプレミアムクロスオーバーSUVで、日本では初代と2代目はハリアーとして発売されていました。

――なぜ日本ではハリアーとして発売?

山本 当時、日本ではレクサスが開業前だったためです。その後、2005年にレクサスの国内展開がスタートし、2009年に登場した3代目からはレクサスRXとして発売されるようになりました。

――現在、プレミアムクロスオーバーSUVはあらゆるメーカーから発売されています。

山本 これまで見向きもしなかったブランドも参入するチョー激戦区ですが、実はその元祖がRXなんです。当時の開発コンセプトは〝高級セダンの快適性を兼ね備えたSUV〟でしたね。

――RXはレクサスのなかでどんなポジション?

山本 実はレクサスの最量販モデルです。弟分のNXと共にビジネスを牽引(けんいん)する重要な一台で、まさに〝絶対的エース〟ですね。

――今回の新型の見どころは?

山本 チーフエンジニアの大野貴明氏を直撃しましたが、5代目の開発がスタートするタイミングで、豊田章男社長から「RXを壊してくれ」と告げられたそうです。

――豊田社長の言葉を大野氏はどう受け止めたんですか。

山本 RXは約95の国と地域で350万台を販売し、レクサスの屋台骨を支えています。この手の人気車種のフルチェンは守りに入りがちですが、逆に大野氏は「新型には挑戦が必要だ」と考えた。

――なるほど。そんな新型の率直な感想は?

山本 デザイン、走り、あらゆる部分を次世代のレクサスとして色濃く体現してきたなと。その部分をアメリカ・サンタバーバラで行なわれた国際試乗会でじっくりチェックしてきました。

――実際に乗るとどうです?

山本 まず操作に対して正確なステアリング、滑らかで自然なコーナリングの一連のクルマの動き、常にバネ上をフラットに保つボディコントロールなど、基本性能の高さは新型NXを超えています。

――なぜ超えられた?

山本 これらはリアの骨格の刷新や、リアマルチリンクサスをはじめとした新世代プラットフォームの採用などが効いていますね。私は新型から、〝レクサスらしい走り〟の実現を目指しているなと。

――レクサスらしさとは?

山本 ゆとり、重厚さ、そして優しい走りだと考えています。これらの要素は歴代RXも目指していましたが、基本性能がダメダメで......。

――新型RXは?

山本 基本性能を大きく引き上げたことで、レクサスらしさを表現できるようになっています。その結果、速度を上げて飛ばさなくても、いいクルマだなと感じられる。

中央には14インチのタッチ式ディスプレイが鎮座。メーターパネルは走行モードによりグラフィックが切り替わる中央には14インチのタッチ式ディスプレイが鎮座。メーターパネルは走行モードによりグラフィックが切り替わる

――インテリアの評価は?

山本 インテリアは物理的なスイッチを減らし、タッチパネルとステアリングスイッチに多くを集約させた操作系を採用。また、メーターフードからドアトリムまで連続的につながる造形、水平方向の伸びやかさと奥行きを感じるデザインに仕上がっています。

――操作性に関しては?

山本 大型のタッチディスプレイの操作性は悪くないですが、表示の安っぽさや直感操作がしにくい部分など要改善だなと思いました。このあたりは開発陣にも伝えたので、今後のアップデートに期待したいですね。

パワートレインは2タイプのハイブリッド、プラグインハイブリッド、ガソリンターボと全4種類を用意しているパワートレインは2タイプのハイブリッド、プラグインハイブリッド、ガソリンターボと全4種類を用意している

RXのトップモデルであるRX500h Fスポーツパフォーマンスのパワートレインは、「別格」と山本氏。ぜひ乗ってみたいRXのトップモデルであるRX500h Fスポーツパフォーマンスのパワートレインは、「別格」と山本氏。ぜひ乗ってみたい

――注目のエンジンは?

山本 トップモデルのRX500h Fスポーツパフォーマンスの2.4リットル直列4気筒ガソリンターボ+DIRECT4という新開発のハイブリッドシステムです。

――トヨタ/レクサスでは定番のハイブリッドですが、具体的には何が違う?

山本 このシステムはフロントに2.4リットル直列4気筒ガソリンターボ+1モーターパラレルハイブリッド+クラッチ機構付き6速AT、リアに高出力モーターを搭載。前後のパワートレインを協調させて4輪の駆動力を緻密に制御することで、旋回性能と安定性、そして乗り心地を高いレベルで両立させることを実現。

荷室は5名乗車時で9.5インチのゴルフバッグを4つ収納可能。3分割式の後席を倒せば、あらゆるアレンジが可能に荷室は5名乗車時で9.5インチのゴルフバッグを4つ収納可能。3分割式の後席を倒せば、あらゆるアレンジが可能に

――なるほど。

山本 ほかのパワートレインのモデルも非常に高いレベルに仕上がっていますが、コイツはもう別格ですね。ハイブリッドはモーターアシストというより電動スーパーチャージャーのようなイメージで、小気味良さ、伸びの良さ、そしてダイレクト感を備えた実に気持ちのいいハイブリッドです。

つけ加えると、SUVというより、ヘタなスポーツセダン顔負けの意のままのコーナリングも可能です。

――日本導入はいつ頃?

山本 現時点では未定ですが、取材した感触だと、そう遠くないと思います。もう間もなく公式アナウンスがあるんじゃないですかね。

●山本シンヤ 
自動車研究家。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ワールド・カー・アワード選考委員。YouTubeチャンネル『自動車研究家 山本シンヤの「現地現物」』

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