昨年末、ダイハツ、スズキ、ホンダが相次いで軽のニューモデルを投入、その理由は、なんといっても年初からの初売りに万全の態勢で臨むためだ。

新年といえば「初売り」だが、クルマ業界にも初売りはある。「わざわざ新年早々に、クルマを買う人なんているの?」と思うかもしれないが、意外にも今は自動車販売店でも「初売り」は常識。そして近年、なかでも特にアツい初売り商戦を繰り広げているのが、軽自動車だ。

その証拠に、軽メーカーは、初売りに合わせて年末ギリギリに新型車をデビューさせるのが通例となっている。昨年末も、ダイハツが新型ムーヴを12月12日に発売。その直後の22日には、スズキの新型アルトとホンダのN-BOXスラッシュが同時発売となった。

そもそも、軽が年末ギリギリを狙って発売されるのはなぜだろう。新車の販売事情に詳しい自動車ジャーナリストの遠藤徹(とおる)氏が教えてくれた。

「キッカケはダイハツでした。2006年末に当時のミラをフルチェンジしたのが最初です。その後も09年のタントエグゼ、10年に5代目(先代)ムーヴを年末にデビューさせてきました。ダイハツには、年末年始のセールを活用して新年の軽自動車販売を盛り上げて、トップシェアの座を死守したい願いがあったんです。

ダイハツが仕掛ければ、宿敵のスズキも当然これに呼応して追撃します。ホンダやNMKV(日産・三菱)も、このビッグ2がつくった流れに素直に便乗するのが得策と読んだのでしょう」

某軽メーカーの担当氏は初売りが定着した理由を次のように語ってくれた。

「以前の自動車販売店は、お正月は休業するのが普通でした。しかし、ただ休むのはもったいないので〝無人展示会〟と称して、敷地内にクルマを並べて〝気になるおクルマがありましたらカードに記入してポストに入れておいてください。営業開始と同時にご連絡します〟といった売り方をしてみたんですよ。

すると、世の中の人もお正月はヒマなのか、意外にカードが集まったんです。〝お正月にクルマを買う人がこれだけいるのなら店を開けよう〟というのが全国的に広まりました」

年始買いなら下取りが3~5万円高くなる?

クルマ販売が一年で最も盛り上がるのは、言うまでもなく毎年3月だ。この時期はクルマを新たに購入しようという新生活ニーズが多い。同時に販売店にとっては一年の業績を決める勝負の年度末。猛烈なセールス合戦が繰り広げられる。

「結局、自動車販売店は年間を通して常に販売促進キャンペーンを行なっていますよ(笑)。1月の初売りセールから始まって、2月から3月は年度末&決算セール、6月から7月は夏季ボーナスセール、9月は中間決算セール、年末は冬のボーナスセール…と。

一社が実施すると他社が追随するといったパターンで、いつしかほぼそろって全国規模で開催するようになりました。初売りもその一例でしょう。

でも初売りには年初にあたって販促に弾みをつけて、3月の年度末&決算セールに向けてのスタートダッシュ…という意味合いもあります。何せ、3月は通常の2ヵ月分の台数をひと月で売ってしまうくらいですから。

また、1月にクルマを購入すると、その直前の年末より、年式が1年新しくなりますよね。そのクルマに数年乗った後で手放すなら、下取り価格が3万~5万円程度高くなる可能性があります。そういう意味では、あえて年初に新車を買うメリットはあります」(前出・遠藤氏)

そのメリットについて、発売中の『週刊プレイボーイ』5号では、念頭の値引き合戦のお買い得情報、“未使用中古車”とよばれるワケあり新古車のセール活用法など詳細に紹介しているので参考にしてもらいたい。

(取材/佐野弘宗)

■週刊プレイボーイ5号(1月19日発売)「軽自動車“初売り商戦バトル”の勝者は?」より