トヨタ86 マイナーチェンジではエンジンとボディを改良。馬力は207に強化。アクセルレスポンスが向上。リア回りを中心にボディ骨格を強化し、サスペンションダンパーも一新された!

ともに世界中にファンを持つ国産スポーツカーでありながらも、「大衆とプレミアム」「遅咲きと早咲き」「ローテクとハイテク」という正反対の特徴を持つ日産「GT-R」とトヨタ「86(ハチロク)」。そんな2台が今、マイナーチェンジして注目を集めている。

そこで『週刊プレイボーイ』34・35合併号では、86の開発者であるトヨタの多田哲哉氏と、GT-Rの開発者であり、現在は台湾系メーカー華創日本(ハイテックジャパン)の代表取締役COO水野和敏氏に開発秘話を伺うインタビューを敢行。今も男たちを熱狂させるスポーツカー「新生プロジェクト」の仕掛け人が語り尽くした。

スポーツカーとしては珍しい世界累計20万台を販売する86。80年代に「カローラレビン」や「スプリンタートレノ」といった「AE86シリーズ」に乗っていた年配のオーナーだけでなく、最近では30代どころか20代の販売も増えていると多田氏は言う。

「確かに最初に買っていただいた多くの方は、AE86時代にスポーツカーが欲しくても買えなかった世代の男性でした。でも、最近はノア、ヴォクシーとかプリウスからの買い替えも多い。買った理由を聞くと、走りよりも見た目の新鮮さですね。ミニバン全盛ですから、背の高い車の中で低い86は逆に新鮮だと。

それと今、SNSやフェイスブック中にいろんな86ファンクラブがあるんです。面白かったのは大阪の女のコで、自分の86をカスタマイズして、同時に自分もドレスアップ。それで写真集を作っちゃうという」(多田氏)

そんな86の開発コンセプトのヒントになったのは、「身の丈に合ったスポーツカーが欲しい」というモーターファンの声だったという。その結果、“大衆的なスポーツカー”として、ノアやヴォクシーからの買い替え需要につながったのだ。

スポーツカーの常識を打ち破ったGT-R

一方のGT-Rは、開発段階からスポーツカーの常識を打ち破ることで新たな世代のファンを取り込んできた。

「GT-Rでやったことは簡単でね。新カテゴリーカーを造ったのよ。GT-Rの一番の特徴って知ってる? 『スーパーカーのデザインを捨てたスーパーカー』なの。NSXもそうだし、LFAもそうだけど、日本版フェラーリ造ってもイミテーションでしかない。

みんなルーブル美術館行ってモナリザの絵を見て感動しているでしょ。モナリザに近い絵を描いたとしても誰が感動するんだって話で」(水野氏)

R35日産 GT-R 07年、車名から「スカイライン」が消えて「日産GT-R」となる。歴代のGT-RのDNAを継ぐ証として丸目のリアランプを採用。トランスミッションは2ペダルMTのデュアルクラッチのみ

86はドライバーが自分好みに仕上げることができる等身大の魅力が長く愛される理由になっているのに対し、「ニュルブルクリンクのラップタイムでポルシェ911ターボを超えた」という伝説からもわかるように、想像を超えた驚きを提供する芸術品がGT-Rなのだ。

『週刊プレイボーイ』34・35合併号では、多田氏、水野氏の開発秘話インタビュー全文を掲載。日本が誇る、対照的なふたりのカリスマエンジニアの思いにぜひ触れてほしい。

(取材・文/小沢コージ)

■週刊プレイボーイ34・35合併号「86、GT-R開発秘話」より