バキュームカーの排気口を確認する記者

バキュームカーによる、し尿回収は僕らが快適に暮らすため必要なお仕事。でも普段はちょっと嫌われがち…。

「我々が行くと、窓は閉められ、洗濯物ににおいが付くとクレームが入ることもしばしばですね」(し尿回収業者)

そんな中、「バキュームカーの悪臭がチョコの香りになる」というビックリな商品が発表された。手がけたのはシキボウ、山本香料、凸版印刷、東邦車両の共同開発チーム。

「今まで糞便のにおいをバラやレモンの香りで消そうとしたのですが無理で、思いついたのが某有名メーカーの香水。糞便の香りがアクセントに入ってるんです。それと同様に、ある香りを作って、その中に糞便のにおいを取り込む。それが今回の『デオマジック』の仕組みです」(シキボウ・辻本開発技術部長)

ではその技術をどうやってバキュームカーに?

「まず排気口のフィルターに香料を使ったんですが、糞便臭が強烈でダメ。協力してもらった会社からも『ほら見てみぃ。今まで消臭剤いろいろ試したけど、効くもんなかったんや』と。『何くそ!』と思いましたね」(辻本氏)

そこで考えたアイデアが…。

「バキュームカーの真空ポンプで使う潤滑油に香料を混ぜてみた。悪臭が見事に良い香りに変わったんです!」(東邦車両・辻社長)

実際に潤滑油のにおいを嗅ぐと、チョコというより、濃厚なキャラメルに近いかも。

「花の香りも試したんですが、糞便臭に勝てず。たまたまこの甘くて香ばしい香りがマッチしました。狙ったのでなく、試した結果です」(辻本氏)

では気になる排出後のにおいはどうか? バキュームカーの排気口をクンクン。全然臭くない! ほのかに甘いキャラメルの香りがします!

「においがないので、作業に気付かれなかったです。目の前で洗濯物を干す人まで!」(使ってみた、し尿回収業者)

大変な環境で働く彼らに、うれしい商品の誕生だ!

(取材・文/関根弘康)