『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、経団連が打ち出した就活ルール廃止のデメリットについて語る。

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経団連が打ち出した就活ルール廃止が波紋を広げている。

中西宏明会長は2021年卒からの廃止を表明していたのだが、混乱を心配する政府から「待った」の声がかかり、22年卒以降も当面、就活ルールが維持される見通しとなったのだ。

ただ、企業側のルール廃止要望は根強い。政府も将来的には企業に新卒一括採用の見直しや通念の中途採用拡大を促す方針なので、いずれは(4年制大学の)3年生の3月に説明会、6月に選考面接スタート、10月以降に内定という現行の就活スケジュールはなくなるだろう。

しかし、就活ルール廃止は企業、学生双方に大きなデメリットをもたらす可能性がある。

就活ルールがなくなれば、企業の採用活動はどんどん前倒しされ、通年採用へと様変わりするだろう。学生の就職活動開始も当然前倒しになる。

企業間の就職協定が廃止になった97年から04年までの7年間は就活ルールがなかったが、このときも多くの企業が早期の囲い込みに走ったため、就活スタートは大学2年生の冬休みにまで早まった。

就活ルール廃止となれば、優秀な学生には1年生のときに内定が出るが、そうでない一般の学生は、「採用直結型」と称するインターンに参加し、長期間「採用のための労働」で競争させられるということが起きる可能性が高い。

立場の弱い学生ほど人手不足業界でこき使われるということだ。その結果、多くの学生は長期間就活に忙殺されて勉強ができず、日本の大学はますます劣化することだろう。

企業も大変だ。早期に内定を出しても、その後も学生を引き留めないといけない。魅力に乏しい企業は内定辞退者を出すまいと、何年間もあの手この手の囲い込み策を講じることになる。それが意味するのは企業、学生双方の果てしない消耗戦だ。

もともと、経団連が就活ルールの廃止にこだわるのは、一番優秀な層の学生を採用できなくなっていることへのいら立ちがあるからだ。

外資系や新興IT系の企業など、経団連の非会員企業は就活ルールを守る義務がない。そのため、早期に採用活動をスタートし、優秀な学生を内定者として囲い込む。経団連のお偉方は、人材獲得のグローバル競争に勝てない理由が現行の就活ルールだと思い込んでいるようだが、これは、相当的外れな被害者意識だと思う。

そもそも、就活ルールを廃止しても、経団連企業が優秀な人材を確保できるとは限らない。日本の大企業は生産性が低く、初任給も安い。欧米だけでなく、最近は中韓やシンガポールなど、アジアでも初任給50万円という企業がゴロゴロある。

引く手あまたの優秀な学生にしてみれば、日本企業の条件はまったく魅力的ではなくなっているのだ。早めにリクルートされても、今のままでは、彼らが外資から日本企業に戻ってくるわけではない。

本当に優秀な人材が欲しいなら、経団連企業は、まず賃金を上げたり、やりがいのあるポストを用意すべきだ。そのためには、経営者の首をすげ替えて、儲ける能力がある社長を連れてくることが先ではないだろうか。

仮に就活ルールを廃止するなら、インターンの時期を春休み、夏休みに限定するなど、最低限のルールは設けたほうがよい。学生と企業の消耗戦を回避すべきことに異論はないだろう。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。近著は『国家の共謀』(角川新書)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

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