レクサス「LF-30 Electrified」。「2030年のEV試作車」は昨年の東京モーターショーに登場。新型コロナウイルスで中止となったジュネーブモーターショーにも出展予定だった

昨年、創業30周年を迎えたレクサス。世界販売も絶好調で、過去最高を記録し、話題を呼んだ。では、最強プレミアムブランドであるドイツ勢にはいつ勝てるのか? 自動車ジャーナリストの小沢コージがズバリ解説する!

■最強ドイツ勢に勝つには超濃厚な個性を放て!

プレミアム自動車ブランド日本代表、レクサスが世界の大舞台で奮闘中だ。創立30周年たる昨年の世界販売は過去最高の76万5000台! 前年比10%増の2桁増だ。地盤たる日本市場も13%増だし、世界二大自動車マーケットの北米は32万台強で過去最多。中国では実に25%増の20万台強を記録している!

そもそも北米中心のビジネスだったレクサスが本気でグローバル展開したのは2005年だから今年で実質15年目だ。「われわれは新参モノですから」と関係者も言う歴史の割には頑張っている。

だが、オザワはあえて言いたい。まだまだである!と。確かに東京モーターショー2019で超アグレッシブデザインのインホイールモーター式EVコンセプト「LF-30エレクトリファイド」を発表したし、同じく昨年の中国・広州モーターショーではレクサス初の市販EV「UX300e」もお披露目したが、正直言って全然物足りない!

レクサス「UX300e」レクサス初となる市販EVは昨年11月に中国で初披露。年内に中国、欧州の順で発売予定
ちなみに世界販売トップはご存じメルセデス・ベンツでビックリ仰天の233万9000台で、4年連続記録更新中。2位はBMWで216万8000台、3位はアウディの184万5000台。ちなみにベンツは10年前、116万台強の規模で、どこも伸びまくっている。

確かにレクサスも頑張ってはいるが、メルセデスと比較すると3分の1程度なのが現実だ。要するにドイツ勢の壁は高く厚い。それが証拠に昨年の中国マーケットは米中貿易摩擦の影響もあって販売が落ちた。

しかし、プレミアムブランドだけは別だった。メルセデス、BMW、アウディは軒並み販売台数は増加。それどころかアウディは中国で絶好調。69万台強を売り過去最高を記録した。つまり、レクサスのほぼ全世界分を中国市場のみで達成したわけだ。

トヨタグループが売る世界販売1000万台のうち、レクサスの割合はわずか7%強にすぎない。だが、その利益はトヨタグループ全体の3割近くを占めるという。要するにプレミアムを制するものが世界を制するわけで、レクサスが頑張らないとトヨタはもちろんのこと、日本の景気にも影響しかねないのだ。

さて現状のレクサスの実力分析だがもちろん頑張ってはいる。特に12年頃から始まったブランド改革が功を奏している。静粛性や乗り心地は世界最高峰だった。しかしフロントの顔が薄いという指摘から、ブランドスローガンに「アメージング」を掲げ、スピンドルグリルをブッ込んだ。コイツが強烈な印象に!

17年に出したラグジュアリークーペ「LC」は、今までにない和のセクシーさで、"走る米倉涼子"と呼びたいくらいだし、同年発売されたフラッグシップ「LS」がまた超アグレッシブ。

スピンドルグリルの凹凸を全体に投影したようなフォルムで、かつてメルセデスを優しくしたようなおとなしい印象だった初代LSと比べると隔世の感アリだが、乗り心地も攻めすぎたせいで、かつてのLSほどの大ヒットを記録していない。

あとは物量作戦の差だ。メルセデスやBMWのココ10年の絨毯(じゅうたん)爆撃ぶりはすさまじく、売れ筋の強化具合がハンパない。例えばBMWは主力のミディアム系に3シリーズセダン、ワゴンに加え、グランツーリスモ、ほぼ同サイズの4シリーズクーペ、カブリオレ、グランクーペと6車種も取りそろえる。伸び盛りのSUVにしろX1からX7まで全7車種を用意する。

比べると98年にBMWX5より早くプレミアムSUVの初代RXを出したレクサスは、現状フラッグシップSUVのLXを皮切りにRX、NXと18年やっと出したコンパクトのUXを加えた4車種のみ。本来なら倍のラインナップが出ていてもおかしくない。

さらにプレミアムで重要なのは技術や機能以上に大切なのは伝説であり、インパクトだ。お金持ちほど新しいものが好き。それは世界共通の事実だが、レクサスはまだトヨタの延長線上の印象。自動運転レベル3でも4でもいい。レクサスは独自の尖(とが)った商品であり、ハイテク性能をもっともっと出すべきだと思う。

レクサス「LM 300h」中国では2月24日より正式に発売開始。気になる価格は、最上級車が約2290万円。日本導入は未定

レクサスで可能性を感じるのは昨年、上海モーターショーで発表した初のプレミアムミニバン、レクサスLMだ。ミニバン高級車こそ日本が生んだカルチャーだが、現状はアジア専売で、正直、中身がアルファードなのが残念! 本来ならレクサス専用プラットフォームで巨大なスーパーアルファードを造るべきだ。

レクサスは最強すぎるドイツ勢にいつ勝てるか? 答えは簡単だ。欧米ブランドにはない突き抜けたサムライコンセプトを生み出すしかない。トヨタ車にはないスーパーラグジュアリーハイブリッドを搭載する。最大のキーは個性であり濃さだ。レクサスよ、もっとインパクトを!