『四季報』元編集長・山本氏(左)と『四季報』通読の鬼・渡部氏(右)『四季報』元編集長・山本氏(左)と『四季報』通読の鬼・渡部氏(右)

大人気企画が帰ってきた! 昨年10月に『週刊プレイボーイ』本誌で行なった対談で取り上げた25銘柄は、うち24銘柄が紹介後に値上がり。11銘柄は現時点でも紹介時より高値をつけているのだ!!(ちなみに日経平均はその期間で下落している)

そんな有望株ハンター、『四季報』元編集長・山本隆行(やまもと・たかゆき)氏と『四季報』通読の鬼・渡部清二(わたなべ・せいじ)氏のおふたりに、今年バズる銘柄を聞いてきたぞ~!

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■最も大化け企業を見つけやすい号

昨年12月16日発売の新春号。上場企業の最新情報が特盛り!昨年12月16日発売の新春号。上場企業の最新情報が特盛り!

――まずは『会社四季報 新春号』の読み方を教えてください。

渡部 毎年12月に発売される新春号は、会社四季報の中で最も大化け企業を見つけやすいんです。というのも、上場企業の約7割を占める3月期決算企業は第2四半期決算を10月末から11月半ばに発表します。つまり新春号の制作に入る頃にはこの決算を受け、通期のおおよその着地点が見通せるようになる。

新春号は、そのあたりを踏まえて記者が今期業績予想を修正しています。腕の見せどころとばかりに大胆な上振れや下振れ予想も多いんです。

山本氏の四季報はマーカーや書き込み、付箋がびっしり山本氏の四季報はマーカーや書き込み、付箋がびっしり

――前号予想からの上振れ・下振れはどうやって判断を?

山本 欄外の矢印マークを見ればOKです。加えて、会社公式の業績予想を記者の業績予想が上回る場合はニコちゃんマークがつきますから、大化け株を発掘するならぜひ参考にしてください。

渡部 今号は業績予想を下振れた企業が多かったですね。一方で、来期は売上・営業利益共に大きく回復するという前向きな記者コメントが目立ちました。企業業績回復の追い風を受けて、2023年は強い相場になりそうな気がします。

山本 新春号では、記者コメント欄に担当企業の来期の動向を1行以上書かなきゃいけないルールなんです。企業公式の来期業績予想の発表前に、担当記者がどんなコメントを書くか。これが新春号の見どころのひとつでしょうね。

――記者コメントの生かし方についてコツはありますか?

渡部 私はコメント欄に頻出するキーワードの移り変わりを参考にしてますね。その時々の旬な投資テーマをいち早くキャッチできるんです。前回から登場回数が増えたワードは最重要ですし、初登場のワードにも要注意です。

――では早速、新春号を読んで気になったキーワードや銘柄を見ていきましょう!

業種の前のアルファベットは、P=プライム市場、S=スタンダード市場、G=グロース市場に上場していることを示す業種の前のアルファベットは、P=プライム市場、S=スタンダード市場、G=グロース市場に上場していることを示す

■急増キーワード「パワー半導体」

渡部 まずは【半導体の復活】。半導体には、シリコンサイクルと呼ばれる需給の周期性があります。この数年、半導体不足で家電や自動車が満足に生産できなかったですよね。ところが半導体不足は収束しているという話もあり、サイクルが一段落した可能性がある。

そこで新春号で半導体関連銘柄のコメントを読むと、今年半ばまで業績は下降し、後半には持ち直しそうだと予想できます。そして業績に先行して株価は動きますから、今年前半には半導体関連銘柄の株価は再浮上するとみます。

山本 汎用半導体はそのとおりですが、電流制御に使うパワー半導体関連は別格で、ますます熱気を帯びそうです。SiC(炭化ケイ素)関連銘柄とか。

渡部 そうですね。SiCは新たな半導体素材で従来の素材より省エネ性能が数十倍。EVなどに欠かせないバッテリーの寿命を長くでき、SiCを使ったパワー半導体の需要が世界的に拡大しているんです。

日本にはSiCの開発・製造に強みを持つ企業が多い。「パワー半導体」というキーワードの登場回数が前号比で65%増ということもあり、要注目です。

業種の前のアルファベットは、P=プライム市場、S=スタンダード市場、G=グロース市場に上場していることを示す業種の前のアルファベットは、P=プライム市場、S=スタンダード市場、G=グロース市場に上場していることを示す

山本 半導体つながりで、もうひとつ。世界最大の半導体ファウンドリ(半導体の製造のみに特化した企業)・TSMCが、2024年末に熊本で工場を稼働予定ですよね。同社の直接投資額だけで約1兆円。

さらに、TSMCと取引関係にある企業も周辺に事業拠点を構えるだろうから、経済波及効果は大きい。今年は【熊本県】関連の企業に注目ですよ。

渡部 確かに。半導体関連企業が集まって、熊本が〝日本のシリコンバレー〟になる可能性は大いにありますね。さらに、円安や地政学リスクで製造業の国内回帰が進んでいることも追い風。TSMCの新工場をきっかけに、半導体はもちろん、製造業全般が集まる拠点になることもありそうです。

そうなれば熊本に住み、働く人も増える。半導体や製造業に直接関係ない業種、例えば熊本地盤の住宅メーカー・Lib Work(リブワーク)などにも出番があるかもしれません。

山本 私は、熊本が本社の生産設備エンジニアリング会社・平田機工がイチ押しですね。今期は半導体業界以外に米国の新興EVメーカーから大口案件を獲得しています。リピート受注でもあり、今後もしばらく好調が続くでしょう。

渡部 前号比で登場回数が3倍になった「訪日」も外せませんね。昨年10月に訪日外国人旅行客の受け入れは再開していますが、コロナ前の水準には戻っていません。中国がゼロコロナ政策を大幅に見直した今、【インバウンド】関連銘柄は見直したいところです。

昨年の東京五輪による宣伝効果で、コロナ前の2倍の訪日客が来てもおかしくないと考えています。

山本 とはいえ、今から投資するなら、ホテルや航空会社とか直球のインバウンド銘柄はうまみが少ないかも。私は少しひねって、空港の再整備で儲かる企業を推します。世界の空港の手荷物チェックイン機や搬送システムを提供しているダイフクに注目しています。

■ワタミは高齢者向けのビジネスへ転換!?

業種の前のアルファベットは、P=プライム市場、S=スタンダード市場、G=グロース市場に上場していることを示す業種の前のアルファベットは、P=プライム市場、S=スタンダード市場、G=グロース市場に上場していることを示す

山本 昨年からの流れで、引き続きリユース関連の【生活防衛】銘柄は見逃せないですね。

渡部 昨年はウクライナ侵攻による資源高や円安で物価が高騰し、リユース品に注目が集まりました。いずれも解決の目が見えない以上、今年も関連企業は好調でしょう。

山本 四季報独自予想で業績が再増額されているリユース関連企業は多いですよ。注目はゲオホールディングス。同社はレンタルビデオ店からリユース店「2nd Street」へ見事に業態を転換。まだまだ転換できるビデオ店は残っており、成長余地があります。

で、この「業態転換」も、注目すべきキーワードだと思うんですよ。この数年、コロナで苦境に陥った企業が【ひそかな業態転換】を遂げ、生き残りを図るケースが多くなった。

例えばワタミ。コロナで居酒屋が苦しくなって、店舗の多くを「焼肉の和民」に転換。それも期待どおりには伸びなかったのですが、今や「ワタミの宅食」がドル箱事業となっています。

さらには、宅配ついでに独居老人の安否確認をするサービスも打ち出した。これからは飲食を超えた企業に変化するような予感がします。

渡部 今年の干支(えと)は卯(うさぎ)ですが、私が独自に集計したデータによると、卯年は年末の日経平均が年初より高い傾向にあります。過去144年間で勝率は実に8割超。今年はウサギのように株価が跳ねることを期待しましょう!

業種の前のアルファベットは、P=プライム市場、S=スタンダード市場、G=グロース市場に上場していることを示す業種の前のアルファベットは、P=プライム市場、S=スタンダード市場、G=グロース市場に上場していることを示す

●山本隆行(やまもと・たかゆき) 
1959年生まれ。早稲田大学法学部卒。東洋経済新報社で『オール投資』『会社四季報』『四季報オンライン』編集長を歴任。著書『伝説の編集長が教える 会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい』(東洋経済新報社)が好評発売中 

●渡部清二(わたなべ・せいじ) 
野村證券在籍時から25年以上『会社四季報』を通読している"四季報の鬼"。著書は『四季報を100冊読んでわかった投資の極意』(ビジネス社)など多数。YouTubeチャンネル『四季報名人の気づきのその先』でも四季報から得たエッセンスを発信中。四季報分析ワークショップなどを行なう投資スクール「複眼経済塾」を運営