今や接待はオンラインで行なわれている!?今や接待はオンラインで行なわれている!?

新型コロナウイルスは旧態依然と続いていた文化をいくつも終わらせて、会社員の生活をガラリと変えた。社内の飲み会はもちろん、社外での接待も減り、若手社員は私生活が順風満帆!! と思いきや、意外なところにそのしわ寄せが! 今や接待は、オンラインで行なわれている!?

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■接待の現場はオンラインに

会社員の生活が変わってきている。コロナ禍で社内外の飲み会が減り、ゴルフ場などで取引先を接待する機会もほとんどなくなっているのだ。しかし、〝接待〟そのものは形を変えてオンライン上で生き延び続けているという。令和時代に入社した若手社員はこう話す。

「普段から『Apex Legends(エーペックスレジエンズ』(以下、『Apex』)などのFPSゲームが好きで、同じ趣味の先輩社員とも何度か一緒にプレイしていました。

あるとき、その先輩がお得意先とプレイしているところに誘ってもらって、3人でプレイすることに。普段、友人とプレイするときは、ミスを指摘し合って反省して次に生かしますが、お得意先のミスは指摘しづらかったので『今の敵、チーターっすよ』ってヨイショしていました(笑)。

そのときの、堅実に高順位を狙うプレイが好印象だったのか、その後も良好な関係が続いています」(SE・23歳男性)

FPSとは「ファースト・パーソン・シューター」の略称で、操作するキャラクターの視点でゲーム内を移動し、銃などで戦闘するゲームのこと。特に、オンラインで対人戦をするものが爆発的に流行中だ。そして、若手社員の間では、それがゴルフ場や居酒屋に取って代わって接待の現場となっているらしいのだ。

「他社の人と『Apex』をプレイしようとしたら、自分のランクのほうが高く、敵プレイヤーがそれに合わせて強かったために、その人は太刀打ちできなくて。結局、僕が新しくアカウントを作って、その人のランク帯でプレイしました」(玩具メーカー・25歳男性)

「取引先の方と話していたらお互い『タルコフ(Escape from Tarkov)』というFPSゲームが好きだと意気投合し早速一緒にプレイ。価値の高い物資が発生する場所を教えながら、集めた物資も基本的にすべてあげていました。

戦闘よりもアイテムや物資を収集する時間のほうが長いので、その間も積極的に話を回して......って、今思うと完全に接待でした」(IT・24歳男性)

相手のレベルに合わせたり、会話を広げたり。上手な接待に欠かせない作法や所作に大きな変化はないようだ。

■気を使うゲームは全然楽しくない

しかし、やはり〝接待する側〟はどの時代も多少の不満を抱えるもの。

「親会社の人と『VALORANT(ヴァロラント)』というゲームをプレイしていて、その人の持ち金じゃ高くていい武器が買えなさそうだったので、相手の武器を代わりに購入して『俺、こっちのほうがしっくりくるんで!』ってシェリフ(安価なハンドガン)だけで戦い続けたことがあります。

ひとりでエコ(出費を抑えて戦うこと)し続けるむなしさはハンパなかったです......」(音楽レーベル・26歳男性)

「得意先と『Apex』のランクが同じプラチナ帯だったのでランクマッチに挑んだら、相手が先に死んじゃって、リスポーン(復活)も間に合わず......。

でもランクマッチでやり直すワケにもいかなかったので、相手はプレイしていないのに、ひとりでしばらくプレイする時間が生まれました。あれはさすがに気まずかったです」(前出・SE)

価値の高いアイテムを譲るのはデキる接待のひとつ。ほかにも、相手の武器構成に合わせて自分の構成を変えるのも好印象だ!価値の高いアイテムを譲るのはデキる接待のひとつ。ほかにも、相手の武器構成に合わせて自分の構成を変えるのも好印象だ!

接待プレイをする対象は他社の人だけではない。若手は会社の上司とプレイする際も、気を使わなければならないのだ。

「FPSではないんですけど、先輩社員に『スプラトゥーン』に誘われて。チームの構成を考慮して、先輩が長射程ブキを選んだら短射程ブキを使って、先輩が短射程ブキを選んだら自分は長射程ブキに持ち替えて、と、別のことに頭を使う必要もあったので、全力で楽しめたかというと微妙......。

『ゲームなら若手も楽しめるだろう』と思って誘ってくれている手前、断りづらいというのもツラいです」(映画宣伝・26歳男性)

「コロナ禍になってから、社内に『FPSサークル』なるものができて、自分もゲームが好きだったので入ったのが運の尽きでした。和気あいあいとやるのかなって思ったら、ガチな先輩はガチでプレイしたがるのでついていけず、あまりゲームが得意ではない自分は途中で離脱しちゃいました。

参加する女性社員たちはヘタでもヨイショ係に徹すればいい、みたいな雰囲気も肌に合わなくて。結局接待ゴルフみたいな文化の再生産をしているように感じます」(映像制作・25歳女性)

■ゴルフや麻雀が逆にはやっている!?

FPSゲームが好きだっただけなのに、取引先や上司とプレイし始めて疲弊してしまった若手社員の間で、とある現象が起きている。

「先輩社員ふたりと『チャンピオン(1位)になるまでやめられない』という縛りで『Apex』をプレイし始めたら、ふたりともあまりうまくなくて......。自分がクレーバー(強力なスナイパーライフル)を駆使してなんとか勝った頃には夜中の3時。

オンラインゲームだと自宅で遊べてしまう分、時間の制約がなく、次の日の予定にも影響が出てきちゃうので、それならいっそゴルフとかに誘ってほしい。早朝に集合するのはキツいけど、深夜よりも幾分かマシです」(前出・玩具メーカー)

実際に、オンラインのFPSから、オフラインの遊びに移行する例も。

「ゲームのアカウントにログインをすると、先輩にバレて誘われてしまうので、なるべくログインしないようにしていたら、ゲーム自体プレイしなくなっちゃいました。その代わり、最近はもっぱら大学時代の友人と集まって、家や雀荘で麻雀をするようになりました」(前出・IT)

中には、こんな信念を持った人もいた。

「仕事仲間とプレイしても友達以上に楽しめないのは目に見えているので、誘われても『友達以外とはゲームしないんで』と断り続けています。嫌われても、正直そうするしかありません」(家電量販店・26歳男性)

4月にはまた新入社員が続々入社してくる。先輩社員は良かれと思って誘いすぎず、後輩社員は深く考えずにアカウントを教えないよう注意しよう!