PBRは1倍を割り込んでいるが、株主還元意識が高く、9月には自社株買いを実施した。配当利回りは3%弱と高水準
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
今週の研究対象
衛星ビジネス
(スカパーJSATホールディングス)
宇宙ビジネスは過去に類を見ないほどの盛り上がりを見せており、政府も今後JAXAを通じて年間100億円程度の支援を行なうという。今回は、衛星を使ってビジネスを行なうスカパーJSATを紹介だ!
助手 このところ世界的スポーツイベントがめじろ押しです。放映権を獲得したメディアは大儲けなんでは。先月から開かれていたラグビーW杯はCS放送の「スカパー!」が全試合放送してたんです。スカパーJSATホールディングスの業績に期待できそうですよね。
坂本 どうかな。ラグビーW杯は前回大会ほど盛り上がってるようには思えないし、CS放送はネットコンテンツと視聴者を奪い合って劣勢です。同社で注目すべきは「JSAT」のほうでしょうね。
助手 JSAT?
坂本 同社はCS放送の旧・スカイパーフェクト・コミュニケーションズ社と、衛星運用の旧・JSAT社が設立した持ち株会社なんです。
助手 CS放送は衛星を使って中継するから親和性があるってこと?
坂本 そう。実は累計30機以上の衛星運用実績を持っていて、衛星の運用・管理ノウハウで世界有数の企業なんです。今や売り上げの約半分は衛星関連事業が稼ぎ出しています。
助手 へぇ~! ただ、衛星がどんなビジネスにつながるのか、いまひとつピンときてないです。
坂本 人工衛星の種類は大きく3つあって、機能ごとに異なるビジネスにひもづくからイメージが湧きづらいのかも。情報を伝える通信衛星、位置を測るGPS衛星、対象物を測る地球観測衛星の3つのうち、同社の従来からのビジネスは通信衛星を使った通信回線の提供です。
助手 じゃあ主な顧客は放送関連とか通信関連の企業ですか。
坂本 いや、顧客の裾野はもっと広いよ。衛星通信は地球で災害が起こっても通信が途切れないから、電気やガスなどのインフラ企業や自治体が防災や危機管理用の通信手段として採用しています。航空機とか船舶関連も伸びてますね。
助手 衛星電話を使ってるとか?
坂本 というより、船や航空機内で無線LANを提供する手段として需要が増えているんです。特に航空機向けは短期でコロナ明けの追い風があるし、長期的にも供用機体数の増加が見込まれるから成長のドライバーとして期待できます。
助手 成長の材料がそれだけだと、業績が劇的に伸びる気はしないなぁ。
坂本 いや、これはあくまで通信に限った話ね。実は、最注目なのが地球観測衛星を使ったデータサービス分野。衛星データサービスの市場は、2030年まで世界で毎年20%以上成長するという予想もある。
助手 どうしてそんな急成長を?
坂本 地球観測衛星はレーダーで画像を撮影したり、センサーで地表や海面の温度を測ったりできる。それらをビッグデータの一部に組み入れて分析し、ビジネスに生かそうという機運が高まってるんです。例えば、都市インフラの最適化を目指すスマートシティ構想や、農作物の生育や病害をデータで予測するスマート農業とか。ほかにも、多様な分野への応用に注目が集まってます。
助手 じゃあスカパーJSATの衛星データサービスも順調に拡大を?
坂本 ええ。8月には最小46㎝の地上物をとらえることができる高性能衛星を提携企業と打ち上げたし、カタール政府向けに衛星画像を使ったオイル漏れ検知サービスも6月に開始しました。衛星画像の送信頻度を高めるべく、データを宇宙空間で処理する世界初の"宇宙データセンター"も開発中です。衛星データはまだまだ伸びが期待できます。株価も割安だし投資できますよ。
今週の実験結果
CS放送のイメージが強いと思いますが、稼ぎ頭は衛星関連事業です!
●坂本慎太郎(Shintaro SAKAMOTO)
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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