
坂本慎太郎さかもと・しんたろう
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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11月10日に決算を発表。今期経常利益予想を2.8倍上方修正した。海運株は一般に景気に左右されやすく、業績にはムラがある
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
ウクライナ戦争の際、海運株が高騰した。物流が混乱した結果、船の運賃が高騰したからだ。では、今回のイスラエル・ハマス戦争はどうか?
助手 イスラム組織・ハマスとイスラエルの戦闘が泥沼化してますね。
坂本 中東全域まで巻き込むようなことがなければいいんですが。物流の停滞が心配です。ペルシャ湾はもちろん、スエズ運河のある紅海、東地中海など通商上重要な海上交通路に位置する地域ですからね。
助手 ウクライナ紛争でも似たような話があったような。
坂本 ああ、黒海をロシアが一時封鎖してウクライナ産の穀物の輸出が危ぶまれたんです。結局、陸上輸送後に近隣国から出荷したんですが、物流が大混乱に陥りました。コロナ明けの経済活動再開で、船は空いてないし港も大混雑だったから。船舶のリソースが逼迫したせいで海上運賃が高騰して、海運会社は大儲けだったんですけどね。
助手 なら、今回も同じなんじゃ?
坂本 それはどうかな。海上運賃が高騰しやすいのは、世界景気が良くて貿易が活発になったときなんです。この点、ウクライナの開戦当時は、経済再開と各国の中央銀行がばらまいた緩和マネーが相まって景気が良かった。今は米欧では金利が大幅に引き上げられて景気の先行きを不安視する声があるし、中国も不動産市場を中心に雲行きが怪しい。
助手 景気が悪くて船が余り気味になりそうだから運賃も上がらないと。
坂本 そう。すでに海運各社の業績はひと頃の勢いを失っています。ただ、乾汽船はちょっと面白いかな。不動産事業で儲かっていて、浮き沈みの激しい海運事業をカバーしてる。
助手 海運会社なのに不動産?
坂本 海運業と不動産業は相性がいいんですよ。運んでもらった荷物をどこかで保管しておきたいという顧客もいるでしょ。なら、港の近くに倉庫を持っていれば保管料ももらえて一石二鳥じゃないですか。
助手 じゃあその倉庫が好調なんですね。ECの増加で倉庫の需要が拡大してるって聞いたことがあります。
坂本 いや。倉庫自体は、売り上げの約1割で利益率も3%程度。扱っているのも文書とか紙製品の保管です。会社も中期経営計画の中で「厳しい未来に直面」と認めている。
助手 全然ダメじゃないですか。いったい何で儲かってるんですか?
坂本 倉庫跡地に建てたオフィスビルやマンションの賃料が安定収益になってるんです。
助手 港近くの倉庫街にあるビルやマンションかぁ。賃料安そうですね。
坂本 いやいや、同社物件の所在地は、タワマンが並ぶ勝どきエリアですよ。隅田川や築地が近いから昔は物流拠点として機能してたけど、開発が進んで湾岸の高級住宅地という位置づけになり価値が跳ね上がったわけ。最近では対岸の築地市場跡の再開発も始まったから、勝どき周辺の価値もますます高まるはずです。
助手 ずいぶん運がいいですね。
坂本 運だけじゃなく、経営手腕もなかなかのものです。物件のひとつに、いろんな企業の社員が入居する「シェア型の社員寮」がある。実はワンルームマンションの新設には厳しい規制があるんだけど、社員寮なら規制の対象外なんですね。この事業で多数の企業と接点を持つことで新しい顧客や事業の糸口が見つかるかもしれません。
助手 うまいですね。投資しても?
坂本 いいと思います。海運は景気次第で爆発的な利益を生み出します。景気が微妙でも、乾汽船は不動産がカバーしてくれる。値下がりしたときに投資して、配当をもらいつつ次の好景気を待つのもアリです。
今週の実験結果
利益にムラのある海運業と安定している不動産業を持つ抜かりのない会社です
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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