坂本慎太郎さかもと・しんたろう
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
公式X【@bucomi】
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
熊本県にTSMCの工場ができたことを受け、熊本地盤の企業の株価が軒並み上昇した。さて、今北海道ではラピダスによる次世代半導体工場の建設が進められている。では、恩恵を受ける北海道銘柄は?
助手 台湾の半導体メーカー・TSMCの熊本工場建設で地元企業が大儲けって報道を見ました。ひとつの工場でそんなに変わるものですか?
坂本 半導体産業は自動車産業と同じように関連企業の裾野が広い。TSMCの工場ができれば同社と取引する多数の会社が工場を造る。そこで働く従業員が集まれば周辺の小売りや外食、サービス業も儲かる。地域経済に与える恩恵は大きいんです。
助手 なるほど。北海道の千歳市でも国産半導体メーカーのラピダスが工場を建設しているとか。北海道にも半導体工場建設需要で儲かりそうな企業ってないんですか?
坂本 住宅メーカーや不動産開発子会社を持つ土屋ホールディングスなんて面白いかもしれない。ラピダスの工場で働く人は約1000人と見込まれている。加えて、関連産業の工場で働く人も集まってくるから、当然、住宅需要は高まるはずです。
助手 既存のマンションや借家を借りる人も多いんでは?
坂本 もちろんいるだろうけど、物件が不足してるんですよ。千歳市の人口は現状で10万人以下です。急に1000人以上も増えたら借りられる物件なんてないよ。しかも同市の賃貸用物件はJR千歳駅周辺に集中しているから、工場に通勤するのに便利とはいえない。であれば、戸建てを新築しようという判断になる人もいるはずです。
助手 なるほど。でも、大手住宅メーカーなんかもたくさんある中で、なんで土屋ホールディングス?
坂本 同社が、北海道の住宅メーカーで最大手だからです。厳しい気候の土地に家を建てる場合、その風土を熟知している地元の住宅メーカーや工務店が安心っていう人が多いんです。例えば、北国の住宅は寒さに対応するために高気密・高断熱である必要がある。大手メーカーでも対応はできるだろうけど「この地域は毎年このくらい冷え込むから、この箇所にこの性能の断熱材を入れたほうがいい」みたいな知見は、地元密着企業のほうが的確そうでしょ。
助手 確かに。
坂本 さらに本州地盤の大手住宅メーカーよりも、地域に支店がたくさんある。住宅は長く住むから、支店からすぐにアフターサービスに来てくれるっていう安心感でも有利です。
助手 なるほど。ラピダスの工場建設も順調みたいだし、業績はさぞかし好調なんでしょうね。足元の業績は......赤字じゃないですか!
坂本 そうなんですよ。同社は、だいたい第3四半期までは毎年のように赤字です。これにはカラクリがあって、同社の売り上げの約7割は北海道と東北からのものなので、寒さが厳しい期間は工事の進捗が悪いんです。で、暖かくなる第4四半期に完成して売り上げが立つ。
助手 業績がさえないのかと、危うく投資の対象外にするところでした。
坂本 業績に季節性がある企業はけっこう存在してるよ。業績が悪いのがわかっている時期に買って、業績がいい時期で株価が跳ね上がったら売るなど、季節性に気づけば有利に立ち回れます。投資検討するときには、四半期ごとの業績推移も数年分は見ておくといいね。
助手 いいことを聞きました。土屋ホールディングスもまさに今投資しておいたほうがいいですか?
坂本 そうだね。通期決算が出る前の今のほうが、投資のタイミングとしてはいいかもね。PERは安くはないけど、ラピダス特需を考えれば十分投資できる水準です。
今週の実験結果
業績に季節性のある会社は、ある期の決算だけ見て投資判断をしないように!
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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