
坂本慎太郎さかもと・しんたろう
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
公式X【@bucomi】
08年に伊勢丹と三越の経営統合に伴い設立。百貨店業界1位で、伊勢丹新宿店は売上高で国内首位。配当利回りは2.7%とそこそこ
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
円安も相まって、インバウンドは引き続き増加中。すでにホテル関連の銘柄は物色が進んでいるが、まだ出遅れている業界はないか? 百貨店業界を精査した!
助手 今年も訪日観光客が順調に増えてるみたいですね。3月には史上最速で累計1000万人超えを達成したとか。
坂本 どの国からのインバウンドもおしなべて増えていますが、中でも中国人観光客の戻りが大きいんです。2024年の同月と比較すると46.2%も増えています。
助手 ものすごい増え方ですね。
坂本 中国の正月・春節の祝日の並びが良かった影響もあるらしいけど、要因のひとつには不動産不況の懸念が和らいだこともあるでしょう。
助手 去年に比べて円高に振れているから、今年のインバウンドは少なくなると思ってました。
坂本 1ドル160円台を記録した去年に比べれば多少は円高になったけど、まだ145円台だから十分円安と言えるよ。自分の立場に置き換えて考えてみてほしいんだけど、絶対に行きたい国があるときに、為替が10%変動したからって理由で旅行を中止したりしないでしょ?
助手 言われてみれば。
坂本 それに、日本は他国に比べてこれまでインフレがマイルドだったから、外国人から見れば、為替抜きにしてもそもそもの物価が安いんです。だから多少円高になったとしても、まだインバウンドは途切れないと思います。
助手 訪日観光客のおかげで儲かるのってホテル関連ですかね?
坂本 ホテルも悪くはないけど、デパートかなぁ。今なら三越伊勢丹HDが1番手だね。
助手 え、デパートですか? デパート業界の月次売り上げって、ここ最近下がり基調でしたよね。全国のデパート業界の月別売上高の前年同月比は去年7月から伸びが鈍化し始めて、3月には97.2%と、すでに前年を割り込んでいます。インバウンドが増加している中でこの売り上げ推移はマズくないですか?
坂本 売り上げが暴落した理由は中国人観光客の爆買いがいったん終わったからです。中国は不動産不況の危機的な状況を回避できただけで、依然として景気は悪い。これまでみたいな爆買いは期待薄なんですよ。
助手 なら、インバウンド増加で素直に客室単価が上がりそうなホテルに投資したほうがよくないですか?
坂本 みんなそう考えるから、ホテル関連は割高な銘柄が多いんです。一方、デパート関連は月次の落ち込みもあってひと頃より値を下げています。その押し目(上昇基調中に一時的に下がる瞬間)を狙いたい。
助手 押し目というからには戻る見込みもあるってことですか?
坂本 ええ。中国人以外の訪日観光客も増えているから、彼らを取り込むことで売り上げの現状維持はできる。併せて国内顧客のテコ入れを図る。これがデパート銘柄復活の道筋です。そして、これで勝ち目がありそうなのが三越伊勢丹HDです。
助手 同社に勝ち目があるのは?
坂本 同社は伊勢丹を筆頭に業界でも高級路線。優良顧客が多いからテコ入れの効果も大きいはず。グループ会社の活用がうまいのも注目です。宣伝や物流などをグループ内で受発注してコストを削減する「守り」が抜群にうまいんだけど、グループ会社で提供する旅行や金融サービスに顧客を誘導したり、デパート流の社員教育をグループ会社を通じて外販する「攻め」の活用も始めています。デパートは今後増えないだろうから、生き残れば残存者利益を期待できる。配当も充実しているし、長期投資で一考の余地アリだね。
今週の実験結果
百貨店は今後増えないだろうから、生き残れば残存者利益を一手に引き受けられるのも魅力です
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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