
坂本慎太郎
さかもと・しんたろう
坂本慎太郎の記事一覧
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
公式X【@bucomi】
大手ビール4社の一角。ビアホールの「銀座ライオン」、飲料メーカーのポッカサッポロなどを傘下に持つ。不動産事業の収益性が高い
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
アサヒがサイバー攻撃を受け、いまだにシステム障害が続いている。お歳暮や忘年会を控える今、その打撃は甚大。アサヒには心から同情したいけど、それはそれとして、棚ボタで儲かる競合他社はある!?
助手 行きつけの居酒屋に行ったら、スーパードライがメニューから消えてたんです。店長に聞いたら「アサヒさんがサイバー攻撃を受けて、しばらく出荷できないみたいで......」ってことらしくて。
坂本 ああ、9月末のサイバー攻撃でアサヒグループHDの受注・出荷システムが止まって、ビールの供給が滞っているんです。その分、キリンやサントリー、サッポロに注文が回っています。実際、10月のビール販売額はキリンが前年比19%の増加、サッポロが13%増加と、相応の恩恵があったみたいだね。
助手 アサヒ以外の各社はチャンスだったのかぁ。あのとき、ビール会社の株を買えてれば......。
坂本 アサヒの出荷システムは完全には復旧していないということなので、まだ各社に恩恵はあると思うよ。ただ、今回の件は一時的な代替需要に過ぎないから、それだけを理由に投資するなら短期勝負になる。
助手 具体的にどの会社なら?
坂本 「黒ラベル」や「ヱビス」のサッポロHDがいいと思います。ビール業界4位でシェアが小さいから、アサヒの"おこぼれ"が業績に与える影響は相対的に大きくなりそうなんです。まぁ、同社の場合は、不動産事業を起点に長期で期待できる要素もあるんだけど。
助手 飲料会社なのに不動産事業なんてやってるんですか。
坂本 1876年創業で社歴が長いから、工場跡地などをたくさん持ってるんです。例えば「恵比寿ガーデンプレイス」なんて東京の中心にあるけど、もともとはヱビスビールの工場です。ほかにも「開拓使麦酒醸造所」が源流の会社だから、札幌の一等地に商業施設を持っていたりするんですよ。いずれも立地がいいから家賃は高めだし、収入が安定しやすい。結果、売上構成比で5%しかない不動産事業がサッポロ全体の利益の3割を稼ぎ出している状態です。
助手 ん? 不動産以外の事業は、かなり薄利ってことになりません?
坂本 鋭い。売り上げの7割超となる酒類事業の利益率は5%ほどです。
助手 うわっ、全然儲かってないじゃないですか! なんでですか?
坂本 安定の不動産事業に甘えて、酒類事業の高コスト体質を放置してしまった面もある。まぁ、これはアクティビスト、いわゆる"モノ言う株主"が主張してることだけど。
助手 サッポロってアクティビストが株主になってるんですか!
坂本 そう、しかも筆頭株主です。経営効率が悪いと目をつけられやすいからね。そして、アクティビストが経営にプレッシャーをかけたこともあって、ようやく打ち出したのが「不動産事業に外部資本を取り込んで、得たお金を本業の酒類事業に投入する」という中長期成長戦略です。
助手 「不動産事業に外部資本を取り込む」ってどういうことですか?
坂本 例えば外部のファンドなどと組んで物件価値を高めたり、不動産子会社の株を一部売るといったことが考えられる。そうして値上げした賃料や売却代金は、市場拡大が見込める海外での酒類事業や商品開発に振り向けて収益の向上を狙うわけ。規模の小さいサッポロは、これまで商品開発やマーケティングに投資する余力がなかったのも不振の一因でした。だから、今回の施策はテコ入れとして一定の期待を持てます。
助手 とはいえ、先は長そうだなぁ。
坂本 だから基本は代替需要狙いの短期投資で。不動産事業で大きな動きが出たら長期投資でいいと思うよ。
今週の実験結果
アクティビストからのプレッシャーもあって、経営効率が上がってきました