“KING OF POP”江口寿史先生の新作『街(マチ)で恋する5秒前!』も掲載! 美女画の匠が切り取るリアル・ストリート・ファッションスケッチは必見だ

「ふんわりジャンプ」――なんともゆるく、可愛らしい名前を持つ新しいWEBコミックサイトが本日オープンする。

とはいえ、あの週刊少年ジャンプの“ジャンプ”の名を冠に掲げる以上、世間がイメージする「友情・努力・勝利」といった、“ふんわり”とは対極のテーマを持つ熱いマンガが勢揃いなのでは…?

一体、何が “ふんわり”なのか? なぜ“ふんわり”なのか? そして、どのように“ふんわり”なのか?

今までのジャンプとはどこか違う空気が漂うこの新サイトーー。そこで、その実態に迫るべく、編集責任者である集英社第4編集部企画室室長・清宮徹氏に直撃インタビュー!

* * *

―新しく誕生するWEBコミックサイト「ふんわりジャンプ」は、どんなコンセプトのサイトなのですか?

清宮 グルメ・ペット・仕事などをテーマにした、いわゆる“日常系のマンガ“を集めたサイトです。実体験をもとにしたエッセイ風のマンガなど、読者の人が共感しやすい等身大の作品をたくさん集めて掲載していきます。

―日常、共感、等身大…どれもジャンプらしくないテーマばかりですね。

清宮 サイト名には「ジャンプ」とつきますが、編集方針は明確に違いますね(笑)。

ジャンプというと、主人公とライバルの間の熱いバトルや、劇的な大事件が勃発することによってストーリーが展開していく“熱い”マンガが多いのですが「ふんわりジャンプ」では、バトルも目立った事件も全く起きません! なので、いわゆる「友情・努力・勝利」感は薄めな、ふんわりした内容に仕上がっています。

―なぜ、このようなサイトを作ろうと思ったのですか?

清宮 せっかく面白い日常系のマンガが増えているのに、それを中心に据えられるマンガ雑誌が集英社にはあまりなかったからです。例えば、看板雑誌のひとつである週刊ヤングジャンプでは、特殊な手術を受けた人間と異常に進化したゴキブリが火星で戦う『テラフォーマーズ』や、人を喰らう怪人”喰種(グール)”が暴れまわる『東京喰種トーキョーグール:re.』のような“日常感ゼロ”のフィクション性が高い作品が大人気です。そんなマンガが並ぶ中に、日常系のゆるいマンガを掲載しても残念ながら目立ちづらいです。

なので、紙の雑誌とは全く別に、ネット上で人気になりそうな日常系マンガに絞ったWEBコミックサイトとして立ち上げました。ネットにはまだ読者が気付けていない面白い投稿マンガがたくさんあるはずなので、それを編集部の目で選び、「ふんわりジャンプ」というプラットフォーム上で手軽に無料で読める環境を作っていこうと思っています。

編集責任者である清宮氏

石田衣良先生がスナックに!?

―では、ネットで人気のWEB投稿漫画家さんの作品を中心に掲載されるんですか?

清宮 いいえ、それだけではありません! WEBコミックサイトでも珍しいのですが、プロの漫画家さんとWEB投稿の漫画家さんの作品を同列に並べて掲載します。

―プロアマ混在なんですね!

清宮 そうなんです。WEB投稿の漫画家さんには、例外はありますが毎週または週に2回のペースで、ご自身の体験や日常をベースにしたマンガを自由に描いてもらいます。

一方、実績のあるプロの漫画家さんには、あえてこれまでとは違う日常系のテーマで隔週を基本として描いてもらいます。例えば、『みこすり半劇場』のようなエロギャグ作品を得意する岩谷テンホー先生には、先生が育った五島列島を回想するノスタルジックマンガ『とんびの島から』を描いていただいています。

―他にはどんなテーマ設定の作品があるのでしょうか?

清宮 例えば、石田衣良先生がスナックに行って恋愛相談に乗る『石田衣良のスナック恋愛相談勝負』という作品があります。

―石田衣良先生がスナック!? どちらかいうと、オシャレなバーにいそうなイメージですよね。

清宮 そうなんです。石田先生はスタリッシュなイメージなので、女性誌やファッション誌でオシャレな感じの恋愛相談企画に数多く参加されてきました。そこで、あえて場末感のあふれるスナックに行ってもらい、ママやマスターとからみながら、そこで出会った女性客のカゲキで本音な恋愛相談に乗っていただく様子を漫画化しようと。

―他にチャレンジしている企画ではどんなものが?

清宮 圧倒的な画力で有名なペインターの鬼・寺田克也先生に空腹を癒(い)やす食べ物イラストを描いていただく『東京空腹画(トーキョーハラヘリーガ)』という連載は“動画”を取り入れています。サイトには寺田先生が実際に作品を描いているペンさばきを見ることのできる「製作実況動画」がイラストと一緒に掲載されているので、是非観ていただきたいです!

―あの寺田先生の画力を製作中から体感できるなんて…全絵描き必見ですね!

清宮 他にも“KING OF POP”江口寿史先生の描く街行く女のコのスケッチ、『孤独のグルメ』の久住昌之先生が原作を担当する音楽&グルメマンガ、女性に人気の高い南Q太さんが描く同居モノマンガなど、プロ作家陣はかなり豪華なメンバーが揃ったと自負しています。

ふんわりジャンプは「BS・CS」です

―一方、WEB投稿漫画家さんはどんな作品を?

清宮 学園コメディ、警備員体験、うさぎ飼育、OLの恋愛事情、育児など本当に幅広いテーマで描いてもらっていますね。読者の方にはメジャー誌には載らないけど、面白いマンガを見つけてもらえると思います。あと、日常系のマンガといえばペット、特に“猫モノ”が数多くありますが、ふんわりジャンプにも猫モノが3作品あります。

―え! 猫モノが3つもあって大丈夫なんですか?

清宮 実は、猫モノも奥が深いんです! 安堂維子里(あんどう・いこり)先生の『水槽は経費に入りませんか?』は、魚がたくさんいる水槽のある部屋で猫を飼う漫画家の話なのですが、魚好きのはずの猫が全く魚を襲わない奇妙な共同生活を描いています。

逆に、ねこ先生の『ねこ中。』は、猫サラリーマンを主人公にして“猫あるある”を大量に盛り込んだ作品です。是非、読み比べてみてください。

―ここまで話を聞いていると、「ふんわりジャンプ」はどうやらこれまでのジャンプと比べて、異色のものになりそうですね!

清宮 イメージとしては、少年ジャンプやヤングジャンプがTVの「地上波」だとすると、ふんわりジャンプは「BS・CS」ですね。

地上波は作り込まれたプロ感の強い番組ばかりですが、BSやCSには、ただ風景や大自然を写しているだけの番組があったりしますよね。そういった番組は編集していない、ありのままの感じとか、地上波とは違う魅力があると思うんです。「ふんわりジャンプ」が目指すのは、そういったついつい見てしまう、リアルさを持ったコンテンツですね。

―では最後に、今後の展開について教えてください。

清宮 まず、サイトを盛り上げていきたいですね。もしかしたら、プロ作家さんより投稿作家さんの方が人気を集めるなんて可能性もあるのではと思っていますし。

今後、サイトで人気が出た作品は続々と書籍化する予定です。これまでの集英社のコミックスではジャンプコミックスのようなある程度決まったフォーマットで作ることが多かったのですが、単行本でも作品の世界観にあった装丁や判型を選び、書籍っぽいこだわりの作りを目指します。ネットで読んでいた読者にも改めて手にとってもらえるようにしたいですね。

「ふんわりジャンプ」から“今”を反映した作品”を生み出せるように頑張っていこうと思います!

(取材・文/関口マリブ (C)江口寿史・集英社)

■ふんわりWEBコミックサイト「ふんわりジャンプ」は本日6月23日オープン!