2010年9月に九代目林家正蔵師匠に弟子入りし、2015年11月に二ツ目昇進した女性落語家・林家つる子

長寿番組『笑点』が50周年を迎え、イケメン落語家たちの人気ぶりがTVや雑誌で特集されるなど落語ブームが再燃している。8月に放送された『24時間テレビ39 愛は地球を救う』では林家たい平師匠が「24時間マラソン」を成し遂げたのも記憶に新しい。

そんな落語界で着々と知名度を上げている女性落語家が林家つる子だ。2010年9月に九代目林家正蔵師匠に弟子入りし、2015年11月に二ツ目昇進。落語家でありながらアイドルオーディション「ミスiD2016」では特別賞を受賞するという美貌の持ち主だ。

そんな落語界で知名度上昇中の彼女を直撃したインタビュー前編に続き、その「ミスiD 2016」挑戦の話から「落語界の下ネタ事情!?」まで聞いちゃいました!

―二ツ目になった頃、「ミスiD 2016」で特別賞を受賞。落語家さんがアイドルオーディションを受けるなんて、なぜ!

つる子 挑戦的なことしたなぁと、自分でも思います(笑)。師匠から「二ツ目になったら、いろんなことに挑戦しなさいよ」と言われていたんです。寄席(よせ)はもちろん大事にするんですけど、周りに発信できるような人も育てたいという考えで。私自身も若い人や落語を知らない人に向けて、発信したいという思いはありましたし。

―「ミスiD」に応募したきかっけは?

つる子 二ツ目になることが決まった頃、落研(落語研究会)時代の友達から教えてもらったんです。「ミスiD」は知らなかったんですけど、過去の受賞者を見てもいろんなジャンルのコが出ていたので、やってみようかなと。まだ前座の頃だったんですけど…実は、最初は師匠に相談せずに応募したんです。

―相談しなくて大丈夫!?

つる子 ダメもとだったので、まさか受かると思ってなくて。そしたら電話がきて「二次審査に来てください」って…。そこで初めて師匠にご相談させていただいて。やめなさいと言われたらすっぱりやめるつもりでしたが、師匠の粋(いき)な計らいというか、「審査期間明け頃には二ツ目になってるから、やってみたら?」と言っていただけました。

―応募者4千人の中からファイナリストですよ。しかも特別賞!

つる子 ビックリしました! 「セミファイナルいっただけでもよかったよね」って友達と言ってたら、まさかのファイナリスト! たぶん、物珍しかったからだと思うんですけど(笑)。

―アイドルの仲間入り?

つる子 いやいや、周りがそういうコたちだってだけで。「ミスiD」のイベントで集まると、どうしたって最年長なんですよ。年下の可愛い女のコたちに「姉さん姉さん」って呼ばれて、落語やってる時と変わんないなぁーって(笑)! でもたまにミスiD関連のイベントに参加させていただいたりっていうのはすごく刺激的で。女のコ同士でどんどん輪も広がってます(笑)。

寄席の着替えは男性と一緒の部屋です

―では本格的にアイドル活動もってことではないんですね…。でも最近は女性の落語家さんも増えましたよね?

つる子 増えてはいますけど、まだ全体の1割にも満たないと思います。落語家で女性は話題になりづらいというか、受け入れてもらうのが難しいですよね。

―最近のイケメン落語家ブームはどう思います?

つる子 すごいですよね。正直羨ましいです! 謎の対抗心を燃やしています(笑)。

―イケメン落語家さんは若い女性に騒がれてますが、女性落語家さんってどんなファンが多いんですか?

つる子 熱心なおじさまたちです! 若いお客さんは比較的少ないですね…楽屋から客席が見えるので、若い人が来ると珍しくて「あの人、若いよ」って話になるんです(笑)。

―ところで、寄席の着替えって女性専用の部屋とかあるんですか?

つる子 男性と一緒の部屋ですよ。見せてもいいようなインナーを着てるので、こそこそ着替えてます。トイレで着替える人もいますし、水泳のラップタオルみたいなもので隠して着替える人もいますし。

―さすがに人前でブラジャーになる人とか、いないですよね!?

つる子 いないです(笑)。寄席は周りの皆さんは慣れてるからいいんですけど、ホールで落語をやる時はスタッフさんが慌てますね。「師匠とお部屋が一緒で大丈夫なんですか!?」って(笑)。

―ちなみに下ネタとか抵抗あります? 噺(はなし)の中に下ネタを入れる人もいるので、普段から言われることも多いんでは…。

つる子 直接的に言われなくても楽屋にいる時、そういう話をマジメに聞いてなきゃいけないことがありますね(笑)。

―例えば、どんな?

つる子 女性のことを隠語で“タレ”と言ってたり…。ここまでいいって良いかどうかわかりませんが、いわゆるそういう行為を隠語で「かく」って言うんですけど、昨日かいたのどうのみたいなお話を…(苦笑)。

―週プレ編集部と環境が似てますね(笑)。普段から風俗とか行った話を堂々としてることがあるので、その流れでこちらもプライベートをツッコまれるんですよ。上手い返し方教えてください!

つる子 難しいですよね(笑)。年配の師匠が「はぁ?」ってため息ついてるから「どうしたんですか?」って聞くと、「いやぁ、つる子をかきてぇなぁと思って」なんて冗談を言われて。どう返していいかわからないから「ありがとうございます!」って言ってます(笑)。

師匠たちの下ネタなんて可愛いもんです

―セクハラだとか思わない? 大丈夫!?

つる子 案外、大丈夫というか…ここだけの話、そういうことを言ってくるのは、実はご年配の師匠方なんです。何歳になっても、そういうお気持ちを持ってらっしゃる…という、むしろ尊敬の念を抱きます(笑)。

―若手の人たちは下ネタを言わない?

つる子 あまり言われたことがないですね。もっと大変かと覚悟してたんですけど、落研時代のほうがひどかったので…。部室の大掃除に遅刻しちゃって、ドアを開けたら全員全裸で待ってたとか(笑)。人前に出て一発ギャグやらされたり、「何かエロいこと言え!」とかね(笑)。あの頃と比べたら、師匠方の下ネタはとても可愛く思えます(笑)。

―なるほど。二ツ目になってからは自分の時間ができたと思いますが、恋愛は?

つる子 してないです(笑)。落語家の世界は狭いので出会いも少ないですし、“カッコいい生き方だなぁ”と思う師匠はいますけど、ちょっと恋愛とは違いますし…。

―修行が終わって、よし恋愛するぞ!みたいな気持ちには?

つる子 そうなると思ってたんですけど、案外そうならなくて。韓流アイドルが好きなので、このままではアブないなぁと…(笑)。

―K-POP!? 誰が好きなんですか?

つる子 やっと日本デビューしたEXO(エクソ)ってグループ、知ってます? 二つ目になって、やっとライブに行けるようになったんです! 大学の頃に東方神起にもの凄くハマってたんですけど、解体してしまってロスになっているところに現れて。東方神起の後輩なんですよ。

―K-POPアイドルのどんなところがハマるんでしょう?

つる子 完璧なところが好きです。 歌もダンスも完璧で、体を鍛えるところから全部完璧なんです!

―それは自分も完璧な落語家を目指してるってことですか?

つる子 確かに、そういうところはありますね。新しいことにもいろいろ挑戦しますが、基礎というか、古典落語が軸で、その軸は振れずにしっかりしたものにしたいと思っていますし。正直、K-POPのコたちを見てると、修行してる時の自分とシンクロしちゃうんですよね。それで、より好きになった、というのもありますね(笑)。

―彼らも下積みがありますもんね。みんなで同居して。

つる子 そうなんですよ! 練習生というシステムがあるんですけど、それを5年とか6年やってるコもいて…。彼らの頑張りを見て、私も頑張らないと、と思えるんです。

―見習い時代みたいですもんね。

つる子 そうです、そうです! なんて、同じにしちゃいけないかもしれませんが(笑)。そういう時期も乗り越えて、彼らの意識の高いところが好きですね!

面白いことがあれば、お願いします!

―じゃあ、K-POPの話は置いといて、もし落語家で付き合うなら、どの師匠と付き合いたい?

つる子 師匠ですか!? うわ?、どうしよう(笑)。ステキな師匠はいっぱいいますけど、お名前を挙げるとなると難しいですね…。

―読者にはピンとこないかもしれないですけど、頭に浮かぶ方を言ってください!

つる子 …本邦初公開ですが(笑)、五街道雲助(ごかいどうくもすけ)師匠。ご自身で本を出されてるんですけど、お考え方とかが素晴らしくて。もし前座で一緒にいたら、気になっちゃっただろうなぁ、なんて(笑)。

カッコいい!と思うのは、五明樓玉の輔(ごめいろうたまのすけ)師匠。50代に見えないくらいお若くて、オシャレなんです! …ただ、それこそいつもお話すると下ネタが飛び出してくるのですが(笑)。

―正蔵師匠の名前が出てないですけど?

つる子 あ! 師匠のお名前も出してよかったんですか(笑)!? 出しちゃいけないものかと(笑)!

―そういえば、師匠に顔がちょっと似てきてません?

つる子 えー!! 落語は師匠に似てきたとは言われますけど、顔は初めて言われました! だんだん似るんですかね(笑)。やっぱり一番よく見ていますからね!

―二ツ目になると、当然、次の目標は真打ちですよね?

つる子 今は漠然とですね。二ツ目になったばかりで、まだまだ道のりが長すぎて!

―今後、やりたいことは?

つる子 根本としてあるのは、古典落語を自分の中に叩き込んで、女性がやってるのを感じさせないような、女がやる落語という意識を取っ払って、純粋に“おもしろい”と思われるような古典落語がひとつでもできれば…と思います。根本にあるのがそれで、挑戦として新作、そして古典を女性目線に作り替えた改作もやってみたいと思っています。

―最終的には、完璧な古典落語を目指してますもんね!

つる子 そうですね! 女性の落語家だからって聞きにきたでもいいんですけど、“つる子の噺”として聞きにきていただける方が増えると嬉しいですね。そのためにも今できることは、なんでもしたいと思っています!

―つる子さんも正蔵師匠のように、TVに出たい気持ちは?

つる子 機会があれば、挑戦したいです! 落語を知ってもらうきかっけを作りたいですし、どんな経験も落語に活かせるんじゃないかと思うので。お酒の噺だって、飲んだことのある人のほうが表現できると思いますし、経験できることは経験しておきたいなと思います。何か面白いことがあれば、よろしくお願いします!

―ではグラビアにも挑戦してもらいましょうかね(笑)。このインタビューを読んで、リクエストが殺到したら是非!

(取材・文/釣本知子[つる子] 撮影/武田敏将)

■林家つる子(はやしや・つるこ)1987年6月5日生まれ。群馬県出身。◯本名=須藤みなみ。2010年九代目林家正蔵の元に弟子入りし、2015年に二ツ目昇進。10/14(金)に新宿・無何有にて「噺の翼(第2回)“空たかく舞うつる”」、12/18(日)に横浜にぎわい座B2のげシャーレにて「林家つる子の第三回“つるの恩返し”」などに出演予定!詳細は公式ブログをチェック!http://ameblo.jp/hayashiyatsuruko/