「インスタグラビア」の伝道師、似鳥沙也加が週プレのグラビアに登場!

SNSの発達は、世界を劇的に変えた。それは、グラビアの世界も例外ではない。

24万8000――。『週刊プレイボーイ』30号(7月9日発売)でセンターグラビア8ページに抜擢(ばってき)された、似鳥(にとり)沙也加のインスタグラムのフォロワー数である。

大手芸能事務所の後ろ盾があるわけではない。いち地方都市在住の、フリーモデル。コアなファンを多数抱える有名コスプレイヤーたちとも違う。普段、『週刊プレイボーイ』に出ているタレントたちを「プロ」と称するなら、「ほぼシロウト」と言ってしまっていいだろう。

だからこそ、そのフォロワー数は際立つ。例えば現在、青年マンガ誌などの表紙を席巻するグラビアアイドルの忍野さらが約17万。昨年、彗星(すいせい)のごとく現れた小倉優香が23万。似鳥自身が「憧れ」と語り、かつてAKB48の全盛期に孤軍奮闘した"レジェンド"吉木りさでも、20万には届かない。

フォロワーの数がそのまま人気のバロメーターというわけではないが、こうして一線で活躍するグラドルの数字を並べてみると、似鳥沙也加がいかに異質な存在かがわかる。

インスタグラムに日々自身の自撮り画像をアップする「インスタグラビア」――。形だけ見れば、「グラドル自画撮り部」を立ち上げツイッター戦略にグラドルの未来を見いだそうとした倉持由香に重なる。だが決定的に違うのは、「それがなければ彼女が世間とつながることはなかった」ということである。

「10歳のときに博多の小学校に転校してから、教室に行けなくなって。新しい環境で全然知らない人たちと話すのが怖くなってしまった」

似鳥にはいわゆる一般的な学校生活の思い出がほとんどない。転校を機に保健室登校を繰り返すようになり、中学校に進学してからも、通常クラスには行くことのできない生徒たちが集う特別教室で多くの時間を過ごした。

「中学ではテニス部に入っていて、運動は好きだったから部活には顔を出したこともあったけど『あいつ、授業には来ないのになんで部活にはいるんだよ』っていう周りの目がやっぱりあるから、すぐにそれもなくなりました」

蚊の鳴くような小さな声で、伏し目がちにインタビューに応じる似鳥を見ていると、彼女は本当に人と話すことに慣れていないのだと実感する。

「体育祭だけは出てみたかった。その日も学校には行ったんですけど、校舎の上の教室からずっとみんなのいる校庭を見ていただけでした」

進学した高校もすぐに中退し、家とアルバイト先を往復する日々が続いた。

「親に対する負い目があったから、お金をためて早く自分の力で暮らせるようにならなきゃ、という一心でした」

ファミレスのキッチン、アイスクリーム工場のライン、マッサージ......いろいろなバイトをかけ持ちして、18歳になった年に博多でひとり暮らしを始めた。

「やっぱり、ひきこもりでしたけど。家にいるか、バイトしているか。行動範囲も狭くて......だから私、やったことがないことばっかりで」

グラビアの大先輩・吉木りさのDVDを見てポーズや表情の研究をしているというまじめな一面も

最近まで、ラーメンを食べたことがなかった。去年初めてカルピスを飲んだ。海を見た。今は、「お祭りに行って、花火を見てみたい」という。

「浴衣も着たことがないんです。でもこうしてグラビアのお仕事をしていれば、そのうち着られるかな」

他人と接することなく生きてきた彼女は、決して人間が嫌いなわけではない。ただ、人と触れ合うのが不得手だったのだ。

「好きなバンドのことについて話せる友達が欲しくてインスタを始めました。もともとグラビアを見るのが好きだったから、見よう見まねで自分でも撮ってみて、私は"おフェロ"って呼んでいるんですけど、女性目線でも『いいな』って思えるような自撮りの画像を自分なりに考えてアップするようになったら、急にフォロワー数が増え始めて」

最近は、さまざまな媒体からひっきりなしにダイレクトメールで仕事の依頼が届く。今年2月に週プレに初登場すると、編集部宛てにも芸能関係者からいくつもの問い合わせが来た。撮影で東京に来る回数も増えた。

これまで数多くの大女優、有名モデルの写真集を手がけ、今回の撮影を担当した橋本雅司カメラマンはこう彼女を評する。

「今っぽいビジュアルなんだけどどこか浮世離れしている雰囲気もあって、面白いコが出てきたな、と。トレーナーをつけてジムに通うくらい体づくりにも本気だし、グラビアが本当に好きなんだなっていうのは感じるね」

最後に、彼女に「自分が変わってきている手応えはあるか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「まだ、全然。やっぱり人と話すのは苦手だし、緊張するし。でもこのところいろいろな人とお会いする機会が増えて、それが自分の知らなかった世界とつながっていることを実感することも多くて。そういうの、やっぱり大事なことだと思うから、『頑張ろう』って、そう思います」

ひきこもり女子がインスタを介して手にした「世界」―。それはそのまま、グラビアの未来にもつながっている。

●似鳥沙也加(にとり・さやか)
2016年12月に自身のインスタグラムを開設。もともとのグラビア好きが高じて自撮り画像をアップし始めると、あれよあれよという間にフォロワーが増え、現在24万8000を突破