最新作「未来のミライ」を引っ提げ週プレに登場した細田監督

『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』......。

いずれの作品でもアニメ映画界に新風を巻き起こしてきた巨匠・細田 守(ほそだ・まもる)氏の待望の新作、『未来のミライ』がいよいよ封切り!

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『時をかける少女』(06年)や『サマーウォーズ』(09年)で数々の映画賞を受賞し、前作『バケモノの子』(15年)は興行収入約58億円を記録した細田 守監督。もはやその地位を揺るぎないものにした国民的アニメーション作家の新作『未来のミライ』が今月20日ついに公開!

劇場アニメブームが広がるなか、『未来のミライ』は新たな歴史をつくれるのか!? 本作にかける思いを聞いた!

―細田作品といえば家族をテーマにしたものが多いですが、今回はいろんな意味でチャレンジングな作品ですね。

細田 そうですね。まずは4歳の子供を主人公としたことが、最大のチャレンジでした。舞台は中庭のある一軒の家の中で、映画に出てくるメインキャラクターは家族とその一族しか出てきません。起こる出来事も日常のささいなことばかりですからね。

―最近の監督の作品は、実体験からヒントを得て制作に反映しているそうですね。

細田 そうですね。本作も主人公である4歳の少年くんちゃんに、ミライちゃんという妹ができることで、両親の愛を妹に奪われてしまうもどかしさをくんちゃん目線で描いています。それも私の息子に妹が生まれたときに、彼のリアクションを見たことが着想のヒントになりました。

―ということは、くんちゃんが"未来のミライちゃん"に出会うというちょっとファンタジックな展開も......?

細田 それも息子から、成長した妹に夢の中で出会ったという話を聞いたからなんです。

―そういった経緯もあってか、本作はかなりミクロな世界になってますね。

細田 社会性がつく前の4歳児の行動範囲ってすごく限られていて、家の中の世界がすべてなんですよ。それを表現するには、あえて舞台は限定したほうがいいかなと思ったんです。その点は狙いどおりにいったと自負してます。

―個人的な体験を映画にするからこそ、近作はご自身で脚本も担当している?

細田 そう決めているわけではないのですが、例えば『おおかみこどもの雨と雪』(12年)は、僕の母が亡くなったことが制作のきっかけになってますから、ほかの人に書いてもらうのもしっくりこなくて。それでも(『時をかける少女』と『サマーウォーズ』の脚本を担当した)奥寺(佐渡子)さんの手を借りましたが、それ以降は自分の体験は自分で書こうと考えてそうしてます。

―スタッフ陣でいうと、青山浩行氏と秦(はた)綾子氏が作画監督を担当しています。

細田 青山さんは、『時をかける少女』『サマーウォーズ』で作画監督、秦さんは原画で参加してくださっています。このおふたりに作画監督をお願いした理由は、今回の題材に合わせたキャスティングというのもあります。実はこのおふたりはご夫婦で、今回のような家族を舞台にした映画は、東映長編アニメ『龍の子太郎』(79年)の作画監督の小田部(羊一)さんと奥山(玲子)さんご夫婦のように、夫婦の作画監督にしかできない表現があるのではないかと思ったんです。

―なるほど。

細田 さらに、東映動画(現・東映アニメーション)出身の僕は先輩方から「もう一度昔の東映長編アニメのような作品を作れ!」とずっと言われ続けていたので、それを実現する意味でも、(東映動画系スタッフが集まった)テレコム(・アニメーションフィルム)出身の青山さん、秦さんは適役。そして東映での師匠である山下(高明)さんにも画面設計で入ってもらっています。山下さんは『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』で作画監督をやっていただき、今回は3D背景以外のすべてのカットで、レイアウトを描いていただきました。

―現代に東映長編を作るならこういう布陣だろうと?

細田 そうです。こうやって根拠や文脈を持った人たちが集まって一緒に作れたっていうのはアニメーション映画の歴史上、非常に大きな出来事なんですよ。

◆『週刊プレイボーイ』31号(7月14日発売)「アニメ映画ブームが続くなか、最新作『未来のミライ』を引っ提げて週プレに6年ぶりの登場! アニメーション監督 細田 守インタビュー」より

●細田 守(ほそだ・まもる)
1967年生まれ、富山県出身。91年に東映動画に入社し、2005年に独立。フリーとなって監督した『時をかける少女』や『サマーウォーズ』が国内外で話題となる。11年に自身のアニメーション制作会社「スタジオ地図」を設立、『おおかみこどもの雨と雪』や『バケモノの子』を制作し、大ヒットを記録

■『未来のミライ』
4歳の少年、くんちゃんがある日、わが家に妹のミライちゃんを迎え入れることで始まる家族ドラマ。ごく普通の一家が織りなすなんでもない日常と小さな奇跡が細田氏の手によって鮮やかに描かれる。7月20日(金)全国ロードショー公開