振り返れば、ドラマはSFかコメディしか見てきてない

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、オススメしたいアメリカのコメディドラマについて語ってくれた。

* * *

私にとって、アメリカのドラマといえばコメディ。そこで、日本版のNetflixでも見られる最近のオススメの作品をご紹介したいと思います。

まずは『グッド・プレイス』。事故死した主人公が、善人だけが住める死後の世界"いいところ"に送られるというファンタジーコメディです。主人公は性格が最悪なアラサー女子で、それがバレないように必死に頑張るんですが......。

シーズン1の最終話で、大どんでん返しが起きます。こんなに脚本に感心したのは久しぶりでしたね。ネット上には腐るほどネタバレが書かれているので、絶対にそれらの情報に触れずに見てほしいです。

2本目は『クレイジー・エックス・ガールフレンド』。タイトルから「重くて面倒くさい女が出てきそうだなぁ」と敬遠していたんですが、実際にそのとおりでした(笑)。ただ、ユーモアの質が高く、程よいダークさもあって、予想していたような作品とは違いましたね。

内容は、マンハッタンで弁護士としてバリバリ働いていた主人公が、初恋の相手が住む街に引っ越し、ストーカーと化してハッキングや不法侵入までしちゃう恋愛コメディミュージカルです。コメディを通じて、うつ病やパーソナリティ障害をリアルに描いている、意義深い作品だと思います。

急にミュージカル調のシーンが始まったりするんですが、曲もパフォーマンスも完成度が高すぎて思わず笑っちゃいます。主演のレイチェル・ブルームは、この作品でゴールデングローブ賞の主演女優賞を獲(と)ったんですが、実は脚本や作曲まで手がけているんです。年齢は私と同じなんですが、才能の塊を見ているようで圧倒されてしまいます。

最後に紹介するのは『アンブレイカブル・キミー・シュミット』。中学生のときにカルト教団によって監禁され、15年後に出てきた女性が、都会でさまざまな騒動を起こしながら成長するドタバタコメディです。

体は大人なのに中身は中学生のままで止まっている主人公や、売れない役者のルームメイト、さまざまな犯罪に手を染めている大家さんなど、個性が強すぎる登場人物たちが軽快な会話を繰り広げます。

このドラマは、Netflixで最も成功したコメディといわれており、私も大好きなんですが......。オススメしづらい理由は、その面白さが翻訳でまったく伝わっていないから!

以前、「字幕問題」という回でお話しした登場人物の名前の読み方が間違っている作品も、実はこのドラマです。アメリカでの生活が長い人にしかわからないジョークもたくさん入っているんですが、もうちょっとなんとかならないでしょうか?

さて、今回ご紹介した3本は、コメディでアラサー女性が主人公というほかに、もうひとつ共通点があります。それは、すべてシーズン4で完結するということ。しかも打ち切りではなく、制作陣の意思で終わっています。

英語には"Quit while you're ahead.(うまくいっている間にやめる)"という言い回しがありますが、だらだらとシーズン10とかまでやっちゃう作品が多いなか、クオリティが高いまま潔く終えるのは、本当のファンサービスなのかもしれません。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21時~)などにレギュラー出演中。『アンブレイカブル...』には、自分がアメリカに住んでいた頃のネタが頻出するので、懐かしさも感じる

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!