2019年、令和最初の夏が終わりゆく今、東京・お台場で8月2日(金)、3日(土)、4日(日)に行なわれた真夏のアイドルの祭典TOKYO IDOL FESITIVAL2019』(以下、TIF)を振り返ろう!

今年の来場者数は、3日間で過去最高の8万8000人。参加グループ212組、1393人のアイドルたちが最高のパフォーマンスを見せてくれた!

毎年恒例、『週プレNEWS』のTIFレポを、本日から4日連続でお届けします。まずは、指原莉乃チェアマンの開幕宣言で始まった8月2日、1日目の【前編】からドーゾ!

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【8/2】

●佐々木彩夏(ももいろクローバーZ)[SMILE GARDEN]

ギラギラと暑い太陽のもと、スマイルガーデンには黒山(に、まざったピンク)の人だかり。今年のTIFも佐々木彩夏から始まった。

『あーりんoverture』が響き渡ると、「あ~、よっしゃいくぞー! あーりん! あーりん! あーりん! あーりん!」と、あーりんMIXをファンが叫ぶ。

颯爽と登場したあーりん。今年からスマイルガーデンに設置された大画面に彼女の姿が映し出されると、ファンの声がさらに大きくなる。白ベースに細くて赤いリボンをあしらった「ウェディングケーキ」のようなドレスでくるくるまわりながら『だって あーりんなんだもーん☆』からスタート。

さらに曲中の「変わるわよー」と、ピンクのフリフリなアイドル衣装に変身ッ! TIFといえばコレ。あーりんが出てきて前半で脱ぐ! このお約束! 灼熱のスマイルガーデン。そこかしこで咲くピンクのリストバンド。そう、これぞTIFのオープニングだ。

続いて『あーりんはあーりん』『キューティーハニー』『あーりんは反抗期』と、おなじみのコンボが続く。「ママはあーりんのことを子供扱いするけど、あーりんはあーりんなんだからね!」ということを、ここまで全力で歌い続けてくれる佐々木彩夏。彼女こそが本当のアイドルである。

思い返せば10年前。品川のTIFのメインステージで全力で歌っていたももいろクローバーから、彼女はなにも変わらず全力でアイドルだった。
こうして、長い長い3日間。TIF2019が幕を開けたのだった。

●アイドリング!!![SMILE GARDEN]

10年前にアイドリング!!!のプロデューサーである門澤清太氏が立ち上げたTIFが10周年。そして、この記念すべき日に、なんと2015年に「メンバー全員卒業」した彼女たちが、約4年ぶりに1日だけ復活するというのだ。こんな日が来るなんて!

佐々木彩夏のステージが終わると、ピンク色のTシャツのファンと入れ替わりに、ナンバリングTシャツのファンがスマイルガーデンに広がっていく。彼らはこの日のために、押入れの奥にしまっていた「戦闘服」を掘り出してこの場に集まってきたのだ。

突然鳴り響く、TV番組『アイドリング!!!』のオープニング曲。その懐かしい曲にファンたちが歓声をあげる。

そこに登場したのは、なんと新衣装(!)に身を包んだ「あの日、最後まで残っていた卒業メンバー」12人だ。デビュー曲『ガンバレ乙女(笑)』からスタート!

アイドリング!!!が帰ってきた! 横山ルリカがいる! 外岡えりかがいる! 最近よく見る朝日奈央も、アイドリング!!!の顔になっている! みんなあの頃と変わらない。あの日も今日も、光る笑顔がミンナを照らす。

「おひさしぶりで~す! TIF10周年! 2010年から6年間、ホスト役をやらしていただいてた私たちアイドリング!!!が再結成してこのステージに戻ってきましたー!」

朝日奈央のマイクに「おぉぉ~!」とナンバリングTシャツファンが応える。

玉川来夢が「本番前に奈央ちゃん、泣いてたんですよ」と暴露すれば、「もうね、円陣組み始めたら涙が止まらなくてね」と朝日。そんなふうに言う玉川も、すでに涙目だ。

メンバーの自己紹介に続いて披露したのは、アイドリング!!!の最強夏曲『サマーライオン』だ。歌詞の「メラメラ真夏の太陽」に合わせて、スマイルガーデンに集まったファンたちも腕をメラメラと回す。楽しそうに夏の日差しをギラギラと受けながら、4年ぶりの笑顔が燃える。

続く、アイドリング!!!史上最高のセールス曲『MAMOLE!!!』でさらに熱風が吹く。彼女たちの激熱ロウリュがファンの身体を焦がす。うれしそうなファンたちの顔!

ステージに立っている12人全員が、この日のために仕上げてきていた。まったく色褪せていない。1曲歌うごとに「続けては体力がもたない」とMCをはさみ、そのたびに水を飲む。そしてチームプレイで爆笑をさらう。まったく色褪せていない。

そして4曲目は『やらかいはぁと』。2011年に発売された15枚目のシングルであるこの曲はライブの定番曲だ。サビの「いいじゃんそのままで、全然大丈夫」を聞いた瞬間、鼻の奥がツンとするような感覚。一瞬、やわらかな風が吹く。

そして、落ちサビ。アイドリング!!!ファンにとってはお約束のオレンジ色のサイリウムが高速で振られる。スマイルガーデンの要所要所で必死に舞うサイリウム。ステージに一列に並んで歌う彼女たちは、それをうれしそうに見ていた。

夢のようなステージは、『職業アイドル』でラストを迎える。ラスト1曲と聞いたファンたちが「えぇ~」と悲痛な声を上げると、酒井瞳が「アッという間でしょ? 夢って儚(はかな)いのよ。でもね、その夢をみんなで見届けるべく、ラストも盛り上がれるか!」と煽った。

最後の曲は『職業:アイドル。』。

「走れ私」「刻め歴史」「私たちのこれが仕事」「だって自分で決めた道よ」「職業:アイドル。」

TIFを支え、アイドル戦国時代の地図を、ある意味塗り替えたアイドリング!!!による、すべてのアイドルへのメッセージのように感じた。

途中、アイドリング!!!のアシスタントMCをつとめていた森本さやかアナも駆けつけ、ステージは大団円。最高のTIF、最高の夏が燃え上がったステージだった。

●HKT48[SMILE GARDEN]

今年で6回目の出場となるHKT48は大黒柱の指原莉乃が卒業。そんな中で中心的役割を果たしたのは田中美久&松岡はな&渡部愛加里(あかり)だった。

1曲目の『早送りカレンダー』で田中&渡辺コンビが元気よく飛び出す。続く『最高かよ』ではセンターの松岡が会場のファンを盛り上げる。また、1期生の村重杏奈はTIFのステージに久々の登場。事務所を移籍した勢いそのままに「村重より大きな声出せますか!」とファンを煽る。

『Everyday、カチューシャ』では、同じく1期生の松岡菜摘と本村碧唯(あおい)のキャプテンコンビがメンバーを引っ張る。毎年恒例となっているTIFのフレッシュ新人枠、昨年はドラフト3期生の渡部愛加里が鮮烈デビューを果たしたが、最近は若手が豊作だ。

今回は5期生の石橋 颯(いぶき)、上島 楓、水上凜巳花(りみか)の3人が登場した。その中でも14歳の石橋はラストソングの『メロンジュース』の前にライブの感想を求められるも、ゆったりと水を飲み、いつも劇場でやっている自己紹介を始めるという大物っぷり(?)。新たなキャラクターも登場し、新生HKT48をこの日集まったアイドルファンに見せつけた。

●BEYOOOOONDS[SMILE GARDEN]

この夏、メジャーデビューを果たす、ハロー!プロジェクトの新生グループ・BEYOOOOONDS(びよーんず)。メンバーカラーをあしらったシースルーの夏衣装を着た彼女たちが姿を現すと、会場は一気に緊張感に包まれる。彼女たち初のTIFのステージに、ファンも、メンバー自身も息を飲む。

かろやかなピアノの音色が聴こえ、歓声がドッと沸く中、江口紗耶と岡村美波が「BEYOOOOONDS、『アツイ!』――!」とタイトルコール。ほんの数十秒前の緊張はどこへやら、曲が始まれば一気に「ここはBEYOOOOONDSのもの」という空気になる。

その後は、先輩グループであるJuice=Juiceのラテン調な楽曲『Fiesta! Fiesta!』、モーニング娘。'19のダンスナンバー『泡沫サタデーナイト!』という2曲を披露。自分たちの楽曲にこだわらず、夏のアツさと真っ向勝負するかのような選曲に、このTIFへのギラギラした気合いを感じさせる。

時間を惜しむようにあっさりと自己紹介を済ませたあと、後半戦はトリプルA面のメジャーデビューシングルから『ニッポンノD・N・A!』。中盤、オケ音源が止まってしまうアクシデントが発生しても、それをもろともせずパフォーマンスを続けていく。清野桃々姫(きよの・ももひめ)にいたっては、機転を利かせて得意のヒューマンビートボックスでカバー。デビュー前とは思えない対応力と貫禄を感じさせた。

ラスト1曲も、同じくデビューシングルから『Go Waist』。ウエストエクササイズをテーマにしたこの楽曲でひとつになり、みんなでツイストする会場。前の人も後ろの人も、隣の人もみんなツイスト。晴れやかな野外にふさわしい、健康的でさわやかな景色が広がっていた。

「お疲れ様でした!」と観客をねぎらい、あっという間に初のTIFのステージを終えたBEYOOOOONDS。ほとばしるフレッシュな12人の輝きに、太陽が煽られ、気温もジリジリと上昇していく。うん。BEYOOOOONDS、最高!

●開歌-かいか-[SKY STAGE]

「開歌-かいか-」は、元アイドルネッサンスの百岡古宵(ももおか・こよい)が所属するグループ。今年5月にお披露目デビューをしたばかりだ。

11時50分。真夏の太陽が本気を出してきたド昼。灼熱のスカイステージに静かに入ってきた6人の少女。美しいピアノの旋律が鳴り響き、1曲目『星雲少女』がスタート。

ピアノに乗る少女の凜とした声が、空へと飛んでいく。その強さに夏がたじろぐ。小気味の良い、スキップするような歌い方、渡邉 陽(みなみ)の夏を楽しむような笑顔と声、南雲咲楽(なぐも・さら)の揺れるポニーテールに引き寄せられる。この世界はヤバい。

続く2曲目は『ゆびさきに向日葵』。夏はひるんだままだ。歌唱力も、美少女度もかなりのものだ。スカイステージの初見のアイドルファンが「すげぇ......いいわ」と、つぶやく。思わず首を縦に振ってしまう。

MCをはさみ、「私たちのハーモニーを楽しんでください」と3曲目へ。曲は『歌の咲く島』のアカペラバージョン。6人全員が、歌とハーモニーで交じり合う。優しさと力強さに満ちた声が、さらに空へと飛んでいく。

ユリ、ツツジ、ハナミズキ、藤、菖蒲(あやめ)、菜の花、カキツバタ、鈴蘭、かすみ草、ユキツバキ。美しい花の名前がいくつもいくつも登場する。それはまるで、6人が歌の力で花を開花させているようだ。

昨今、よく使われる言葉で「尊い」というフレーズがある。なんでもかんでも使えばいいというものじゃない。しかし、これはもう「尊い」としか言えない。

ここは本当に、真夏のTIFの太陽の下なのだろうか。我々は、どこに連れてこられたのだろうか。こんな少女たちに泣かされるなんて。

15分間のスカイステージ。そこに夏の存在感はなかった。

バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI[HOT STAGE]

昨年11月、バンド名を「バンドじゃないもん!」から改名した「バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI」。東京五輪を前に、日本語独特のフレンドリーさを含んだ言葉(例:おもてなし)を世界に広めたい――そんな想いから改名に踏み込んだ彼女たちが、1曲目に選んだのは『SUMOU』。

大桃子(おおももこ)サンライズの「本気でかかってこいや! はっけよ――い、のこった!」というシャウト、恋汐(こいしお)りんごの全力四股踏み、ななせぐみの連続張り手。至るところに国技である相撲の要素が散りばめられており、今回の改名に通ずる"日本愛"を感じさせる。

その後はMCを挟みつつ、『キメマスター!』『しゅっとこどっこい』『夏のOh!バイブス』と、転調だらけのカオスな代表曲&新曲を連発。空調が効いたメインステージとはいえ、"演奏"と"楽器を置いてのダンス"をめまぐるしく繰り返す彼女たちが感じる暑さは相当のものだろう。大桃子の「(メイクが落ちて)アイドルじゃなくなっちゃいそう......」というつぶやきには、思わず笑いそうになりつつもうなずいてしまう。

そんな熱とカオスは5曲目『イミ・ナイ・ダンス』でも続く。曲の中盤にさしかかったところで演奏を止め、全員でステージ袖に退場していく彼女たち。「行かないでー!!」と懇願するファンの声が響きわたり、十数秒後に再登場した彼女たちは「イ・ミ・ナイダンス! イ・ミ・ナイダンス!!」と、何事もなかったかのようにパフォーマンスを続ける。

初めて見た人からすると「なにこれ?」と感じる"無意味な間"だろうが、そんなお約束があるからこそ、彼女たちの一挙一動が予想外で面白いのだ。

その後、急にこれまでとうってかわるようなシリアスなハードロック『Q.人生それでいいのかい?』へと続き、ステージは終了。"バンもん"のパフォーマンスは、最後まで予測不能だった。

●R2K[SMILE GARDEN]

アイドルとアニソンの音楽イベント@JAMを盛り上げるために結成された、期間限定ユニットR2K。参加メンバーは転校少女の塩川莉世、26時のマスカレイドの来栖りん、Task have Funの白岡今日花という豪華メンバー。

最初にオリジナルソング『恋するスカート』を、塩川のアコースティックギター演奏とともに披露。3人の揃った美声を会場に響かせた。この日のために練習をしてきた塩川は演奏後、「緊張した――!」とひと言。ふたりは塩川のギター出来を賞賛。

自己紹介では白岡がグループのことを「透明度MAX美少女ユニット」と説明、会場からは「フ―――」と大きな歓声があがる。そして再び『恋するスカート』を通常バージョンで爽やかなダンスとともに披露。それぞれのファンは全力コールで3人の熱演に応えていた。

●わーすた[DOLL FACTORY]

TIF直前、メンバーに対する犯罪予告がSNS上に投稿された、わーすた。7月にも同様の予告があり、出演取り止めとなってもおかしくない状況。しかし、彼女たちはすべての出演ステージを湾岸スタジオ内・DOLL FACTORYに変更し、気丈にパフォーマンスを行なった。

『Overture』とともに登場した彼女たちがまず繰り出したのは、高速テンポな人気曲『最上級ぱらどっくす』と、「好きな男子と焼肉に行きたい」という内容の『大志を抱け!カルビアンビシャス!』。

坂元葉月のマイクに電源が入らないハプニングがあったが、小玉梨々華が踊りながら坂元をマイクフォローをしたり、ほかの3人も坂元のパートを歌ったりと全力カバー。坂元自身がマイクを通さず大声で歌う場面もあり、「どんなことにも屈しない」という彼女たちの精神力の強さがうかがえた。

MCでは、この日、20歳の誕生日を迎えた松田美里(みり)をファンとともに祝福したのち、リーダーの廣川奈々聖(ななせ)が「今回の件で皆さんのことを心配させてしまって、本当にすみません。集まってくれてありがとうございます」とコメント。会場にいた全員が心の底から「メンバーが謝ることじゃない!」と思っただろう。観客はその想いを大きな拍手に乗せてステージに送る。

不安だけではなく、ありとあらゆる感情が入り混じったであろう小玉が涙を流す。三品瑠香は彼女を鼓舞するように「こんなことに負けず、私たちと最高に盛り上がって。大きい声をぶつけてきてください」と静かに煽り、大声で『PLATNIC GIRL』をタイトルコール。彼女たちは、トレードマークの猫耳が吹っ飛ぶほどの鬼気迫るパフォーマンスを魅せ、最後は笑顔で『プリティー☆チャンネル』を歌い、ステージをあとにした。

わーすたが無事に全ステージを終えたとはいえ、今回の予告は決して許されない犯罪行為だ。一刻も早く、彼女たちが安心してパフォーマンスできるときが訪れてほしい。

●つばきファクトリー[HOT STAGE]

現在、腰の不調により活動休止中の浅倉樹々(きき)を欠き、8人でステージにやってきたつばきファクトリー。色とりどりのペンライトが彼女たちを迎える。

クランプが鳴り響き、それを追うベースライン。『表面張力~Surface Tension~』からスタートだ。

腕を上げる。ジャンプする。会場を煽るようにクランプ。夏がスタートする。

続く『三回目のデート神話』でさらにダンスはヒートアップ。勢いがある。「三回目~♪」と3本指を上げるファンたち。会場の熱がぐわわっと上がる。

MCを挟んで3曲目に待っていたのは2017年、彼女たちのデビューシングルである『初恋サンライズ』。サビで飛び出すサンライズジャンプがスローモーションになる。「きっと......これが恋」「本当は、私の全てを見せたいの」と、感情の乗った曲間のセリフに「ひゅおぉぉぉぉ!」と酔いしれるファンの声。間髪入れずに4曲目の『ナインティーンの蜃気楼』をブチ込む。

まさに"戦闘集団"。最強だ。さらに本来ならばここに、あの浅倉樹々が入るのだ。強い。強すぎる!

そしてラスト2曲はハッピーな背中押しソング『ハッピークラッカー』と、『今夜だけ浮かれたかった』。2016年から4年連続でTIFに戦いを挑み続けている彼女たち。最強のパフォーマンスで夏を圧倒してくれた。来年も楽しみだ。

●BLACKNAZARENE[DOLL FACTORY]

新世代の注目グループが出場するTIFの目玉企画「メインステージ争奪LIVE」にも出場していたBLACKNAZARENE(ブラック・ナザレ)。2019年注目の5人組だ。ちなみに、グループ名は、黒いキリスト像を用いてパレードを行なうフィリピンの宗教行事「ブラック・ナザレ祭」が由来だそうだ。

賛美歌チックなBGMが流れる中、全身黒色の衣装で登場した彼女たちは、『officialfake』『叛逆starmine』というロックテイストの2曲を続けて披露。メインボーカル・南向(なさき)いずみが歯切れのいい声で歌う低音と、冬野あゐく&戸田ころねが歌う高音パートのハモリが心地いい。"崇拝者"と呼ばれる彼女たちのファンも、重いドラムに合わせて首を振り回す。

MCでは、全員笑顔で自己紹介や告知をキッチリ行ない、「もっとBLACKNAZARENEに大きな声聞かせてくれますか?」と丁寧にファンを煽る。コンセプトや曲調だけを知るとダークな印象を受けるが、おそらく5人とも、非常に"真面目な"性格だ。

そんなギャップも楽しめる彼女たちがラストに選んだのは、「もがきながら見つけたあの色は 何の迷いもない綺麗な黒だった」というフレーズが印象的な『BLACK SUPERNOVA』。もともと別のグループで活動していた彼女たちが、同じ色をまとった今、アイドル界でどんな存在になっていくのか。想像が膨らむばかりだ。

●めろん畑a go go[DOLL FACTORY]

イベンターやライブハウス関係者、アイドル好きの著名人などの"レコメンダー"が、注目グループを選考&選出する企画「アザーレコメンド」。そこで吉田豪氏、電撃ネットワーク・ギュウゾウ氏らのプッシュを受けて今年のひと組に選ばれたのが、このめろん畑a go goだ。

パンクから派生したジャンル"サイコビリー"な1曲目『灼けたらマッハ』のイントロが流れる中、『ミュータント・タートルズ』のような"目元だけのマスク"を被って姿を現した彼女たち。「15分間盛り上がっていきましょう!」という言葉を証明するかのごとく、間奏からサビまで欠かすことなく「オイ! オイ!」と煽り続け、隙さえあれば奇声を上げながら頭を振り回す。「1秒たりとも休ませない」という気迫が伝わってくる。

その後はマスクを外して『IDOL FROM PLAN9』『NIGHTMARE BEFORE VAMPIRE』と続いていく。

緑髪のルカタマが「ねぇ、DOLL FACTORYのお兄さん♡」と誘惑するように呼びかければ、ツインテールの崎村ゆふぃが「TIF初出場、最高!」と叫ぶ。三つ編みの中村ソゼが女子小学生のような屈託のない笑顔を浮かべれば、逆に琉陀瓶(るたかめ)ルンはクールに表情を変えずに歌い続ける。

その一挙一動すべてに歓声が上がっていたことから、会場にいたアイドルファンのほとんどが彼女たちのとりこになっていたことがわかる。

最後は4人で肩を組みながら、『めろん畑a go go』でフィニッシュ。今秋にはTIFのメインステージにもなっているZepp DiverCityTokyoでワンマンライブを行なうそうだが、たしかに、この夏見ておくべきグループだったかもしれない。

●lyrical school[HOT STAGE]

大幅なメンバーチェンジから2年が経ち、今年9月には二度目のメジャーデビューが決まっている"リリスク"。旧体制よりも本格化したヒップホップトラックに乗せ、決まったフォーメーションや振り付けナシで、自由にパフォーマンスを行なうのが現体制の彼女たちの特徴だ。

メンバーカラーのサングラスをかけて登場した5人は、『Enough is school』『YOUNG LOVE』『ドゥワチャライク』といった3曲を立て続けに披露。リズムの取り方やポジショニングだけでなく、水を飲むタイミングやサングラスを外すタイミングまで、そのすべてが自由気ままな今のリリスク。ひとりだけ黒人ラッパーのような動きで、ファンを煽りまくるrisanoに目が吸い寄せられる。

中盤は、彼女たちのお家芸ともいえる"夏曲"ラッシュ。『秒で終わる夏』ではファンを一旦座らせたあとに勢いよくジャンプさせ、『FRESH!!!』ではファンとともに「うっあっ♪ うっうっあっ♪」とアイドルらしくシンガロング。『夏休みのBABY』でも「夏最高! 夏最高!」と叫びながら連続ジャンプ! ニカーっと笑顔を浮かべながら、膝を折りたたんで飛び跳ねるhinakoを筆頭に、前半とはうってかわって彼女たちのアイドル性で会場を盛り上げていく。

その後は、『LOVE TOGETHER RAP』『LAST DANCE』といった、90年代に活躍したバンドや、数々の名作映画が元ネタとなっている2曲を歌って、ステージを締めくくる。ヒップホップの魅力、アイドルパフォーマンスの楽しさを両立させた彼女たちは、今年のTIFでも堂々の存在感を示していた。

●眉村ちあき[HOT STAGE]

昨年のTIFには、残念ながら出場することできなかった眉村ちあき。この1年、『ゴッドタン』(テレビ東京系)をはじめとした多くのテレビ出演、そしてそこで披露した即興ソングの数々で大ブレイク。なんと初出場でホットステージに立つという、見事なリベンジを果たした。

広いホットステージに真っ赤な衣装で登場した彼女は、トラックメーカーとしての才能を見せつける。1曲目は『ヘチマで体を洗ってる』から。へちまで体を洗っている、というただそれだけのことを歌い、「オ~オ~オ~オ~、セイッ!!」とコール&レスポンス。まずは会場と軽く挨拶程度にタッチ。

「みんな、こんなに暑いのに、こんな時間まで遊んで、とっても偉いね~。とっても偉い人、手あげて~」と言えば、会場は「は~い」と手を挙げる。

「この量でさ、おじさんたちが手あげてると本当に気持ち悪いね~! 気持ち悪い人、手あげて~」「は~い!!」「楽しい人~!」「は~い!!」「猫ちゃんの人~!」「は~い!!」「犬の人~!」「は~い!!」「偉すぎ~! ほめられて~る♪」「フッフ~!!」「ほめられてるよ~!」「フッフ~!!」と、会場と会話をしながら『ほめられてる!』へ。「偉いね~。明日も明後日もTIF楽しもうね~」と、ウッキウキで歌う。

続く『宇宙に行った副作用』、そして「私は歯医者にひとりで行けた」と、自分のダメな部分をあけすけに吐露した『Teeth of peace』。

さらに『ゴッドタン』で即興で歌い「超名曲!」と絶賛された『大丈夫』を披露。やはり名曲! ラストソングの『奇跡・神の子・天才犬』では、吉田豪、マネジャー、物販担当の3人が作る騎馬に乗り大団円へ。こんなにメチャクチャなステージなのに、こんなに感動させられるなんて。「これが眉村ちあきなのか......!」と、初見を驚愕させ、彼女のリベンジTIFは始まったのだった。

●NMB48[SMILE GARDEN]

昨年からTIFに参戦を始めたNMB48。姉妹グループがTIFスペシャル選抜を組むのに対して、NMBは既存のチームBⅡが単独参戦。

5期生のキャプテン小嶋花梨を筆頭にまだ若いチームだが、13人中8人が最近シングル『母校へ帰れ!』の選抜メンバーという最強チーム。山本彩加、梅山恋和(ここな)、上西 怜、山本望叶(みかな)に塩月希依音(しおつき・けいと)といった、人気メンバーが勢揃いしている。

オープニングは山本がセンターの『床の間正座娘』、続くは『法定速度と優越感』と劇場公演と同じ流れ。そして『青春のラップタイム』でギアを上げる。

MCでは小嶋が「NMB48のなかで私たちチームBⅡがいっちばんフレッシュで、誰より全力パフォーマンスができるぞというメンバーが集まっておりますので、最後まで楽しんで帰ってください!」とアピール。

そして『母校へ帰れ!』を全員でしっとり歌い上げる。『ドリアン少年』は上西がセンターでキュートな姿を披露。ラストは再び山本のセンターによる『ワロタピーポー』。山本彩が卒業してもうすぐ1年だが、NMB48は着実に若手世代が育っている。

●Berryz工房大好きスッペシャル[SMILE GARDEN]

2015年から無期限活動停止中のBerryz工房。そんな"ベリーズ"をリスペクトしてやまないアイドルたちが、このTIFで大集結。ベリーズの夏焼 雅(なつやき・みやび)とともに"スッペシャル"なステージを繰り広げた。

初めにパフォーマンスを行なったのは、夏焼が現在活動しているグループ・PINK CRES.。青いスパンコールと大きな星マークがドーンと輝くロンパースに、「BABY」のロゴが光るネックレス、そしてニーハイブーツを合わせる、大胆な衣装で登場した夏焼。「さすが雅ちゃん」のひと言に尽きる出で立ちの彼女を中心に、3人で新曲『トウキョウ・コンフュージョン』を披露した。

芸人・上々軍団のMCを挟み、ステージは夏焼の後輩にあたるハロプロの新グループ・BEYOOOOONDSとのコラボへ。『ライバル』『本気ボンバー!!』というベリーズの2曲をのびのびと踊る後輩たちと、誰よりも軽やかに歌う夏焼。実に特別な瞬間だ。

その後は"アプガ軍団"や寺嶋由芙(ゆふ)、我妻桃実(ハコイリ♡ムスメ)をはじめとした、BEYOOOOONDS以外の"ベリーズリスペクトアイドル"たちも登場。総勢35名を2班に分け、夏焼とともに『付き合ってるのに片想い』『一丁目ロック』を披露していく。

そしてもちろん最後は全員で、このステージにも名前にもなった『スッペシャルジェネレ~ション』! 会場全体で「スッ! ペッ! スッペッシャッルッ! ジェネレーション!」と熱唱し、豪華なステージの幕を降ろした。

ステージ終了後も熱を冷ますことなく、「ベリーズ最高!」というコールを送り続けるファン。舞台袖でたくさんのアイドルに囲まれて写真撮影に応じていた夏焼。アイドルの儚さ、尊さが身に沁みる。いつか、Berryz工房としてもこの場所に――そんな願いも抱いてしまう、あっという間の30分間だった。

●AKB48 Team8[HOT STAGE]

4回目の参加となるTeam8。1曲目からいきなり最強の愛されソング『47の素敵な街へ』。ファンの「言いたいことがあるんだよ~」から始まる口上で、会場のボルテージが一気にぶち上がる。MCでは倉野尾成美(くらのお・なるみ)が「今日はチーム8曲オンパレードということで、皆さん盛り上がって行きましょう!」と叫び『へなちょこサポート』『挨拶から始めよう』と続く。

永野芹佳が「ここからは今日一番の盛り上がりになると思うので、一緒に盛り上がっていきましょう!」と、さらにファンを煽って、『夢へのルート』『思春期のアドレナリン』とテンションが上がる曲の連発。ファンは「ファイボーワイパー!」「ウリャオイ」と全力コールで応援。

そして最新のキラーチューン『蜂の巣ダンス』。ダンス番長の横山結衣のセンター曲だが、この日は舞台で休演。代わりにセンターに立ったのは下尾みう。横山に負けないダンスでその大役に応えた。

そして最新曲の『好きだ好きだ好きだ』でステージは終了。ラストにTIF初登場の感想を求められた川原美咲は「TIFに出演するのが夢だったので、夢が叶ったーって感じです」と笑顔で答えていた。

●ゆるめるモ![SMILE GARDEN]

積極的に楽曲リリースを続け、海外でも精力的にライブを行なう、ゆるめるモ!。昨年リリースしたシングル『ネバネバ酔拳』のチャイナ風衣装をまとって登場した彼女たちは、しふぉんの「今楽しければよくない? 踊っていこーぜ、TIF!」という威勢のいい言葉からステージを始めていく。

1、2曲目は『ミュージック 3、4分で終わっちまうよね』『WOW WOW WAR~スカ・チャンポン斉唱戦線~』。どちらも「無(ない)無無(なない)無無無無(ないないなない)♪」や「WOW WOW♪」といった誰でも口ずさみたくなるフレーズがあるこの2曲。

直後のMCでは「DD(誰でも大好きの意)大歓迎です!!」と叫んでいたが、初見の観客のことも意識した選曲だ。

続く後半戦では、『サマーボカン』『なつ おん ぶるー』というおなじみの夏曲で攻めていく。「面倒くさい やりたくないことなんて後回し」。いきなり猛暑日を迎えた初日の夕方。やっと心地良い風が吹き始めたこの時間帯に、彼女たちと一緒にゆる~く身体を揺らす。熱さとゆるさを兼ね備えたステージによって、日中の疲れがとれていくような気がした。

●tip Toe.[SKY STAGE]

夏の夕暮れはゆっくりと訪れる。それは、祭りの始まりに向かって、ボルテージがゆっくり上がっていく様に似ている。もうすぐ夜がやってくる。そんなスカイステージに赤紫のワンピースで現れたのは、「みんなで青春しませんか?」がキャッチコピーの6人組、tip Toe.だ。

ピアノでゆっくりと奏でる『ハートビート』がオープニングで流れる中、ゆっくりとお辞儀した6人。次の瞬間、走るピアノの旋律、それを追うドラム。『The Curtain Rises』へ。踊る。歌う。必死で。

ときどきメンバーが空を見上げている。その空を目で追うと、この落ちていく空がどうも切なく感じてしまう。「才能なんてなくったって、ここに立って歌うよ」。そう、彼女たちの強さと覚悟はこれだ。

学校一の美少女じゃない。もしかしたら誰からも気づかれないかもしれない。そんなクラスのはしっこにいる彼女たちが、同じ制服の同じ思いを持った仲間と、等身大の戦いを挑んでいる。それがtip Toe.なのだ。

続く、『茜』では、「リアルで、どこにでもある片思い」を輪郭くっきりに歌い、さらに彼女たちの等身大さが際立つ。好きな人になにも言えず、とぼとぼと夕暮れの中を帰る歌の中の少女が、夕暮れ時の彼女たちと重なる。

そして最後は、『特別じゃない私たちの物語』。

楽しそうに、でもしっかりと青春を開いていく。走り回る笑顔。動き回るから声がブレる。でもそんなことは関係ない。いつの間にか、夏のボルテージがゆっくりと上りきっていた。

背伸びをして見上げる青い空。メンバーが横一列に並び、仲間たちとの記念写真のようにピースをして笑う。青春の1ページのストップモーション。胸の奥から、涙とともに眠っていた青春が呼び起こされる。

ラストは、ふたりずつ順番に演劇部の少女のごとく、スカートを持ち上げての挨拶。夕暮れの青とオレンジが、まるで降りていく幕のようだった。

●東京女子流[SMILE GARDEN]

いろいろあった東京女子流も、TIFに連続参戦。多くのアイドルファンも、尊い彼女たちの来訪を楽しみにしている。夜のスマイルガーデンは超満員。6年前にリリースされた『ちいさな奇跡』からスタートする。

濃い紫とえんじ色をあしらった『光るよ』の衣装でニコニコ歌う。そう、このニコニコこそが女子流なのだ。じっとりとした汗も引いていく。

続いては、もちろん2月にリリースされた『光るよ』。この曲は、曲中に衣装を早替えする。その瞬間「フォオオーーーー!」と客席がお約束の歓喜! 楽しい!

3曲目は『Never ever』。前の2曲が「楽しい女子流」ならば、この曲は「かっこいい女子流」だ。ダンスも歌詞も楽曲も攻めた構成だ。

「スカイルガーデン踊れ――!!」

庄司芽生が挑発するような表情で叫ぶ。さっきまであんなにニコニコしてたのに! そう、このカッコよさも女子流なのだ。

そしてラストソング。真っ暗なスマイルガーデンに心臓の鼓動が鳴り出す。その音に「うおおぉぉおおお!!!!」と叫び出す観客たち。そう、初期女子流の象徴ともいえる『鼓動の秘密』だ。

2010年1月1日に結成された東京女子流。「アイドル戦国時代」の年に生まれ、TIFとともに走ってきた10年。途中、形やスタイルを変え、ときにはTIFから離れ、それでも彼女たちであろうとした10年は、強くならなくては走れない長い道だったろう。

10年走ってきた彼女たちは、またTIFで『鼓動の秘密』を歌ってくれている。それは、強くて、でも変わらない。東京女子流の『鼓動の秘密』だった。

10年。TIFと、女子流と過ごしたからこそ味わえる、最高の瞬間だった。

●乃木坂46 4期生[SMILE GARDEN]

スマイルガーデンの初日のトリを務めたのは乃木坂46の4期生。2年前に先輩である3期生が。そして、乃木坂46の超選抜メンバーがサプライズ登場したことが思い出される。今回は北川悠理がお休みで10人での参戦だ。

「一曲目は何でくる?」、期待で胸を膨らませていると、なんとしょっぱなから『ガールズルール』。爆発したような大歓声! センターで歌う賀喜遥香(かき・はるか)を筆頭に楽しそうに歌い踊る4期生たち。

続いて「乃木坂史上最強ダンス」と呼ばれる『インフルエンサー』を見事に踊りきり観客のド肝を抜くと、続いて『制服のマネキン』という初期のヒットソングをぶちこむ。

『インフルエンサー』でセンターを務めた遠藤さくらは自己紹介で「今日は右目が腫れてしまって、眼帯にテンション上げるために桜を描いてきました」とアピール。双眼鏡で見ると、しっかりと可愛い桜が描かれていた。

MCに続き披露したのは、4期生のオリジナルソング『4番目の光』。そして「みんなにキスの手裏剣、投げちゃいますよ~」という可愛すぎる煽りを入れてからの『キスの手裏剣』。

そしてそこからは、乃木坂の象徴である『君の名は希望』、『ジコチューで行こう!』へ。ラストの『裸足でSummer』では、「ヘイ!」の掛け声でアイドルファンが色とりどりのアイドルタオルを掲げる。なんとピースフルな空間だろうか。

それぞれの曲を、賀喜、遠藤、柴田柚菜(ゆな)、筒井あやめ、清宮レイ、掛橋沙耶香と、センターをどんどん変えていく。「4期生はこれだけ人材がいる」という乃木坂の自信が見えた気がした。悔しい。たしかにみんな逸材だ!

●まねきケチャ[DREAM STAGE]

オープニングは松下玲緒菜(れおな)の「みんな回れますか!」の煽りとともに『冗談じゃないね』。ファンは「ウリャオイ、ウリャオイ」と叫び、ボルテージはいきなり最高潮。

2曲目は『モンスターとケチャ』。これも会場は大興奮で客席にサークルが出現。曲に合わせて走り回るファンたち、相変わらずファンがめちゃくちゃ熱い!

ラストは『きみわずらい』。今まで圧倒的な歌唱力でファンを魅了していた藤川千愛が卒業してしまったが、代わりに松下がしっとり歌い上げ、初日ドリームステージのラストを締めくくった。アグレッシブなファンたち。なんとも言えず夏、なステージだった。

●アンジュルム[HOT STAGE]

TIF一日目のラスト。ホットステージ。

彼女たちが初めてTIFにやってきたのは2014年。まだ「スマイレージ」時代だ。当時は、和田彩花、福田花音のオリジナルメンバーふたりと、2期生の4人という6人体制。TIF一日目のオープニングアクトを飾ったのだ。

今のアンジュルムには、和田彩花も福田花音もいない。6月に卒業したリーダー和田の後を継いだ竹内朱莉のもと、新しく強いアンジュルムを見せることはできるのだろうか。

光と歓声の中、ステージが始まる。一曲目はなんと、キラーナンバー『大器晩成』から! 思わず会場がどよめく。

人気や動員も下り目で、メンバー本人が「どん底だった」と語る時代。そんな期間を経て、アンジュルムとして生まれ変わった一発目の曲。それが『大器晩成』だ。まさに彼女たちの大器晩成っぷりを表すように、この一曲ですべてがひっくり返った。

そんな曲を、新体制の一発目で持ってきた。それは彼女たちの覚悟だ。このステージは、彼女たちの覚悟の結晶になる。そんな予感がした。

予感は的中した。

続く、『次々続々』を歌い終わると、MCで竹内が言う。

「TOKYO IDOL FESITIVALが10周年ということで、おめでとうございます。私たちは(改名前の)2014年のとき、名前がスマイレージ時代に出させていただいたんですけど、そのときのメンバーとは全然違ってしまっているんですけども。今回はTIFにふさわしいセットリストを用意しましたので、みなさん最後まで楽しんでいただきたいと思います!」(竹内)

そんなMCの後にかかったのは、なんと『夢見る15歳(フィフティーン)』! スマイレージとしてのメジャーデビューシングル。この爆弾に会場は大騒ぎ。野太い声のカラフルTシャツが「ヴぉい! ヴぉい!」「イヤホンでぇ!」と叫ぶ叫ぶ。まさか、スマイレージ曲を持ってくるとは!

そう、思ったのもつかの間。次の曲のイントロが流れた瞬間、今度は女性ファンの「きゃ――!」という叫び声。同じくスマイレージ時代の名曲『有頂天LOVE』だ。オリジナルメンバーである4人としての最後のシングル曲である。

この2曲がリリースされた当時、今ステージに立っているメンバーは誰もいなかった。しかし、きっとこのホットステージにいるファンたちにとっては、とてもとても大切な時代である。そこの部分をしっかりと持ってきてくれたのだ。

続く、『夏将軍』ではタオルがぐるぐるとうねり、ラストの『46億年LOVE』では会場中が燃えるように盛り上がる。最後は「今」のアンジュルムの姿を見せつける。

新リーダーの竹内はあらたな船の舵を取り、室田瑞希は波動砲かと思うほどにエネルギーを歌声として発射する。船木 結(むすぶ)は、声帯の手術の影響で歌唱には参加しなかったが、ダンスと溢れる表情で観客の目を奪う。

そして佐々木莉佳子は、センターに立てばそのオーラで会場を御(ぎょ)し、時には、とびっきりのはじけた笑顔で「みんなが大好きだったあの頃の莉佳子」を見せてくれた。

アンジュルムの新時代。「今が最強時代」と言わせるための準備は整っていた。

◆【中編】⇒世界最大のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESITIVAL 2019」レポ アイドルのみなさん、愛してま~す!